#101
アミノが片っ端からテストチルドレンに詳しそうな人間に訊き回っていると、ある共通の話が出てきたそうだ。
それは自然からのエネルギー技術を用いた永久発電機関を使い、人工生命を造ろうとしていた科学者がいるという噂だった。
そこで、以前に人体実験についての論文を発表した知り合いに訊ねてみたところ――。
どうやらその科学者とは、アイスランディック·グレイのことらしい。
「アイスランディック·グレイ? 誰ですかそれ?」
《ミックスくんったら……先生の授業をちゃんと聞いていたんですか?》
アイスランディック·グレイとは、バイオニクス共和国の自然エネルギー、再生可能エネルギーの権威であり、共和国内すべての電力を賄っている太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電装置の開発者である。
ミックスは知らなかったのか忘れたのかわからないが、アイスランディックを知らない人間は、この共和国ではほとんどいないほどの人物だ。
「まだこの国に来て日が浅いあたしでも知ってるわよ……」
怪訝な顔をしていうジャズに続き、自分も知っているといいたそうに呆れて鳴くニコもいた。
ミックスはそんな周囲の冷たい視線を感じ、乾いた笑みを浮かべて誤魔化そうとしている。
それから話題をアミノの話に戻し。
アイスランディック·グレイはすでに高齢のために研究現場を退き、表舞台からは姿を消していることを聞く。
「それだとアイスランディック·グレイは個人的に研究を続けていたってこと?」
「ちょっと飛躍しすぎだけど。あのお爺さんなら十分あり得そうね」
ジャズに訊かれてエヌエーが答えた。
それからエヌエーがいうにドクターアイスランディックを含むグレイファミリーは、バイオニクス共和国が建立されたときに、その発展にかなりの貢献をしたそうだが、ファミリーの素性は謎に包まれているらしい。
だが、監視員のエヌエー、ブラッドもそうだが。
バイオニクス共和国の前身である反帝国組織バイオナンバーのメンバーの多くが、姓がない天涯孤独だった者で構成されていたため(ほぼ全員が創立者であるバイオの義理の子どもになっている)、あまり問題にはなっていない。
しかし、その中でもグレイファミリーは秘密主義を貫いているようで、彼らのことを詳しく知る者はほとんどいないようだ。
「あたしも会ったことあるけど、自分の研究以外は興味ないって感じの人だったなぁ」
「じゃあ、やっぱりアイスランディック·グレイがッ!」
「ちょっと落ち着いてよ。現段階ではお爺さんがテストチルドレンの研究を続けているかもしれないってだけなんだから」
ジャズはエヌエーにはそう言われたが、もうアイスランディック·グレイがサービスと関わっていると思い込んでいた。
それは彼女なりに頭の中にあるパズルを組み上げていった結果でもあった。
――リーディンがサービスを化け物――人間じゃないといっていたこと。
――アイスランディック·グレイが人工生命の権威だということ。
――そして、購入者しか操作できないはずのドローンを操れる権力を持っていそうなこと。
他にも該当者はいるかもしれないが、今ある情報の中では一番怪しい人物であることは間違いない。
(なんなによこの国は……。そんな危ない奴が権力を持っているなんて、おかしいにもほどがある……)
ジャズは、腕の中で眠っているサービスを見つめながら、誰が何をしようがこの幼女は自分が守ると決意を固めるのだった。




