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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
101/948

#99

――リーディンの話を聞いたジャズは、自分がその戦場(せんじょう)にいたことを(つた)えた。


そして、永遠なる破滅(エターナル ルーイン)降伏(こうふく)していれば、誰も死なずにすんだと弱々(よわよわ)しく言葉を続ける。


「それじゃあなたは武装(ぶそう)してやって来た侵略者(しんりゃくしゃ)に何もせずに(したが)うわけね。だったら今すぐあの化け物をこちらに(わた)しなさい」


「どうしてなのッ!? サービスがどうして化け物なのよッ!? あの子はただの子どもだよッ!」


ジャズは両手(りょうて)をあげたまま(さけ)び返した。


そんな彼女を見たリーディンは眉間(みけん)(しわ)()せる。


降参(こうさん)したいって言ったくせに、ずいぶん反抗的(はんこうてき)じゃないの? もしこれがあのときのワタシたちの態度(たいど)だったら、きっと()(ころ)されているでしょうね」


「あのときとは(ちが)うわッ! だって、サービスにはなんの(つみ)はないもの」


「はッ!? 罪がない? それはあなたがあの化け物の正体(しょうたい)を知らないからよ」


「正体なんか関係(かんけい)ないよッ! それよりも聞いてほしいことがあるのッ! あの、戦闘用(せんとうよう)ドローンに乗っていたパイロットは……」


ジャズが言い切る前に、突如(とつじょ)監視員(バックミンスター)(あらわ)れた。


アミューズメント施設(しせつ)警報器(けいほうき)か、それとも誰かが連絡(れんらく)を入れたのだろう。


現れた監視員(バックミンスター)隊員(たいいん)が、両手をあげているジャズではなく、トレンチコート姿(すがた)のリーディンのほうを警備(けいび)ドローンで包囲(ほうい)し始めた。


(かこ)まれたリーディンは、トレンチコートから(ふたた)びトランプカードを出してジャズを(にら)みつける。


ジャズは、(だま)しやがってとでもいいたそうな彼女の表情(ひょうじょう)を見て、誤解(ごかい)()こうと声をかけた。


だが、リーディンは――。


「ふん、あなた、(たい)した役者(やくしゃ)っぷりじゃないの。まさか時間(かせ)ぎのために昔話(むかしばなし)をさせるだなんてね」


「ちがうッ! あたしはあんたと話し合おうと思って……」


「うるさいッ! この状況(じょうきょう)でまだそんなことをいうのかッ!」


訊く耳を持たないリーディンに、ジャズはそれ以上かける言葉がなかったが。


ジャズには、どうしても彼女に伝えなければいけないことがあった。


「聞いてリーディンッ! あんたの仲間、ライティングは……」


「その名前を気安(きやす)く呼ぶなぁぁぁッ!」


激昂(げきこう)したリーディンは、トランプカードを警備ドローンに投げつけ破壊(はかい)すると、()いた包囲網(ほういもう)から逃げ出して行く。


ジャズはそんなリーディンの背中(せなか)に声をかけ続けたが、彼女は振り向くことなく咆哮(ほうこう)した。


「あの化け物は(かなら)ず殺す! そして次はあなただからねッ! (おぼ)えてなさいッ!」


「待ってリーディンッ! 彼はライティングはまだ帝国(ていこく)でッ!」


ジャズの声は(とど)くことなく。


リーディンはアミューズメント施設から姿を消した。


それから監視員(バックミンスター)の隊員が声をかけいてきたが、ジャズは(ちからから)なくその場で両膝(りょうひざ)をついた。


地面に(うつむ)くジャズへ隊員は声をかけ続けていたが、反応(はんのう)がない彼女を見てすぐに救護班(きゅうごはん)を呼ぶよう連絡(れんらく)している。


ジャズは思う。


リーディンがああなってしまったのは自分たちのせいなのか。


彼女は世界のことを強烈(きょうれつ)(にく)んでいる。


それはあのときに、ストリング帝国が永遠なる破滅(エターナル ルーイン)鎮圧(ちんあつ)したからなのかと。


「だったらどうすればよかったのよ……。あたしたちが止めなかったらもっと多くの人が死ぬじゃない……。今だって……彼女を止めなかったらサービスが……」


何をどうすればよかったのか。


彼女の(あたま)の中ではその言葉だけが(まわ)り始め、ぐちゃぐちゃになってしまっていた。


リーディンはあの戦争の犠牲者(ぎせいしゃ)だ。


そんな彼女と戦いたくない。


だが、抵抗(ていこう)しなければサービスが殺されてしまう。


どうすれば、どうすれば――。


回っていた言葉が変化し、彼女の脳内(のうない)()()くす。


「ジャズ、大丈夫?」


聞き()れた声がする。


今いるバイオニクス共和国(きょうわこく)に来てからずっと聞いてきた声だ。


ジャズは自分でも気が付いていなかったが、その声を聞き、バラバラに(こわ)れそうだった(こころ)が落ち着いていった。


「ミックス……」


「ごめん、(おそ)くなっちゃった」


「バカッ! バカバカバカッ! あんたはなんでいつもそうなのよッ!」


やり場のない気持ちをミックスへとぶつけるジャズ。


ミックスには、ジャズに何があったかはわからなかったが、何もいうことなく彼女の(そば)にいた。


いくら罵倒(ばとう)されようと文句(もんく)一つ言わず、(いや)な顔も見せず、ただ(わめ)いている彼女のことを受け入れている。


(おそ)いのよッ! もう少しでサービスが(あぶ)なかったんだからッ!」


ミックスの(むね)の中で喚くジャズの傍に、いつの()にか立っていたサービスとニコ。


ニコは喚くジャズを見て(かな)しそうに()いている。


するとサービスのほうは、そんなジャズの姿を見ていると突然(とつぜん)泣き出してしまった。


「うわぁぁぁん! じゃずがじゃずがぁぁぁっ! うわぁぁぁん!」


横にいたニコは、そんな彼女を(なぐさ)めようと、精一杯(せいいっぱい)抱きしめてその頭を()でるのであった。

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