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3分読み切り短編集

勇者の戦い

作者: 庵アルス

 魔王の封印が解かれ、世界にモンスターが出現するようになった。

 モンスターは人々を襲う。モンスターから人々を守るには、再び魔王を封印しなければならない。

 その為に立ち上がった勇者は、魔王の元へ旅立つ。

 だがその旅は決して順風満帆ではない。これまで何人もの勇者が挑み、消息を絶った。

 第一に、数々のモンスターが、行く手を阻んでいるからだ。魔王とてそう易々と二度目の封印をされるつもりはない。自らに近づく者には、強力なモンスターを宛てて屠ろうとする。

 けれど、モンスターが強いだけなら、まだよかっただろう。

『勇者であろうと倒せない“モンスター”』――――そう噂される存在の正体を知った、今となっては。

 目の前に“それ”が立ち塞がっている。数は四。こちらは三人だが、完全に囲まれてしまっている。

 自分たちが有利なのを悟ると、“それ”は口々に嗤った。

「勇者様〜お仲間少ないんですね〜?」

「そんなんで世界を救えるとか本気で思ってるんですか〜?」

 完全におちょくっている。

「⋯⋯悪いが道を空けてくれないか」

 事を荒立てたくないので、なるべく穏便に話しかけた。

 本当のモンスターが相手なら、こんなことはしない。問答無用で斬り殺している。

 だが、それができないのは。そうしないのは⋯⋯“それ”が、人間だったから。

 それは、甲冑姿に長剣を帯びた、人々を守る兵士の格好をしていた。

「⋯⋯あなた達はこんなところでなにをしている?」

 問いかける。嘲笑だけが返ってきた。

「何故こちらの邪魔をする? 我々は魔王封印を目指す旅の身、市井の人々を守るというなれば、志は同じではないのか?」

「そんな気全然ねぇよ!」

 兵士のひとりが叫んだ。

「こっちはよう、雑魚モンスター倒して、人々に感謝されて、食い扶持稼いでるのさ」

「モンスターの戦利品(ドロップ)を金に変えれば贅沢ができる!」

 ⋯⋯彼らはなにが言いたいのだろう?

 底知れぬ寒さを感じた。彼らから発せられるのは、憎悪にも似た、ねちっこい悪意だ。とても人々を守る聖職者と思えぬ、ドス黒い感情だ。

「⋯⋯なにが言いたい?」

「つまりよう!」

 兵士のひとりが剣を振り上げる。それを皮切りに、残りの三人も剣を抜いた。

「魔王封印されてモンスターがいなくなれば、俺らは職を失うのさ!」

「楽もできなくなるしな!」

「だから、魔王封印なんて掲げる馬鹿な勇者どもは、俺たちが退治してやるぜ!」

『勇者であろうと倒せない“モンスター”』――――それは、勇者を殺そうとする人間。

 絶望とは、この気付きのことを云うのだろう。

 目の前が暗くなった気がした。勇者が守りたいのは人々。けれど、その“人”が勇者を殺そうとする。

 その“人”までも守らねばならないのだろうか、勇者というのは。

 いや違う、こんなのはモンスターだ。

 だけど、人の形をしている。だから、倒したりはできない。

 向こうは殺そうとしているのに?

 人間だから反撃もできないのか?

 人々の為に魔王封印を目指す勇者が、魔王の肩を持つ人に殺される?

 そんなのは間違っている⋯⋯。

 武器を抜いた。

 しかしその瞬間、後ろから光が放たれた。

 襲いかかろうとしていた兵士たちは、バタリと地面に倒れた。

「もう、勇者様、ぼーっとしすぎです」

 仲間の魔法使いが言った。

「今のは⋯⋯?」

「眠らせただけなので、大丈夫、死んではいません」

 もうひとりの仲間が、兵士たちを手早く縛っている。この不届き者たちを、さっさと突き出そうというのだ。

 そんな仲間たちの姿に、安堵がどっとやってきて、力が抜けてへたりこんだ。

『勇者であろうと倒せない“モンスター”』に、こうして勝つことができた。

2020/11/16

FFよりDQの方をよくやっていました。

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