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企画参加作品(ホラー抜き)

モグラの春

作者: keikato

 畑の雪がとけ始めました。

 雪の下の土の中。

 そこには一匹のモグラが住んでいました。

 グゥーグゥー、スゥースゥー。

 モグラはトンネルのような家の一番おくで眠っていました。冬の間はどこへも行かず、こうしてじっと眠っています。

 ある日のこと。

 モグラは冷たい風に目をさましました。

――どこがこわれたんだろう?

 寝ぼけまなこをこすり、しぶしぶ起き上がると、さっそく家の中を調べはじめます。

 すると……。

 トンネルのまん中あたり、天井に丸い穴があいていました。

――いったい、だれがこわしたんだろう?

 穴からのぞいてみますと、大根がずいぶん大きくなっており、葉っぱが風にふるえています。

――うっ、さむっ! 春はまだだな。

 モグラは風が吹きこむ穴に土をつめ、ふたたびぐっすりと眠りにつきました。


 何日かすぎた日のことです。

 モグラの寝ていた部屋が、大きな地ひびきとともにグラグラとゆれました。

 モグラはびっくりして目をさましました。

 壁がくずれ落ち、そこからまぶしい光がさしこんでいます。

――わあー、どうしたんだろう?

 あわてて外をのぞきますと……。

 おばあさんのうしろ姿が見え、その両手には白い大根がありました。

――なあんだ、そういうことだったのか。

 モグラのヒゲをくすぐるように、地上ではあたたかな春の風が吹いていました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] モグラに起きたある事件を、さらっとした文体で小さくまとめた、まるで箱詰めされた高級チョコレートみたいなお話でした。 正統派の童話らしい作風がとても好みです。 他にも似た雰囲気の作品があるな…
[一言] ほんわか可愛い物語にほっこり。 土の中で暮らすもぐらくんにも、春の兆しが伝わりましたね。絵本で読んでみたい素敵なお話です。読みながら、思わず亡き父方の祖母と住み着いていたもぐらを思い出しまし…
[良い点] 「笑顔でいこう企画」から来ました。 モグラさんの春の訪れの感じ方がなんとも素敵ですね。 とてもほんわかとさせていただきましたした。 ありがとうございます!
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