設定資料①
本作の(現時点で公開できる範囲の)各種設定。
読まなくても大丈夫ではありますが、こういうのがお好きな方はどうぞ。
◎貨幣
単位は『シル』。
1シル≒10円くらいを想定。
◎奴隷について
エメの買取値3万シルは日本円にしておよそ30万円ほど。魔族の奴隷としてはとても高いが奴隷としては異様に安い。
これは、魔族の奴隷が基本的に『廃棄/リサイクル前提の消耗品』として売られているため。広場で庶民向けのオークションが行われていたのもそのせい。
他種族の奴隷の場合、この10〜20倍(500万円前後)が相場となり、奴隷商館へ直接赴かなければ買い付けできない。また奴隷を扱うに相応しいかの審査なども必要になる。
◎度量衡
メートル法にて記載。
漢字表記にしつつ、架空世界っぽく多少語感を変えてあります。
(km→粁→キロル、cm→糎→センチル、といった具合)
小難しい単位計算などが必要なシーンの予定は今のところないので、雰囲気として。
◎魔術
魔力をエネルギー源として様々な現象を起こす技術。
魔力の質や扱える量、得意分野が種族によってまちまちなため、種族ごとに魔術体系が異なる。
たとえば魔族は「あまり理論だっておらず、膨大なエネルギーを直感的に利用している」。
対してエルフは「回復、毒物、結界などの特殊で繊細なものが得意」で、只人族は「自然現象を再現した魔術に長ける」、ドワーフは「金属への干渉が得意」……といったような感じ。
◎魔術と生活インフラ
魔術は種族ごとに得手不得手の差が大きいため、ファンタジー作品によくある「生活魔法」的なものはほとんど存在しない。炊事には薪を使うし洗濯も手洗い。
例外のひとつとしては夜間の灯りがある。魔力は密度を上げて可視化すると光を発するので、個人レベルで暗がりを照らすくらいのことは種族を問わずほとんどの人にできる。
(ただし、規模としては提灯やテーブルライト程度)
とはいえ、只人族は着火の際に火打石が不要、エルフの家庭に包帯や薬はほとんど常備されていない、ドワーフに刃物を手入れする道具は必要ない……など『人類種』全体で見ればやれることが多く、旅をする際は雑多な種族でパーティーを構成すると荷物が格段に減る。
◎魔道具
特定魔術のプロセスを回路化して物質に固定、対象に魔力を流すことで種族を問わず誰にでも使用できるようにするもの。
作中で言及された奴隷の首輪(逃亡防止機能などが内蔵されている)や転移魔術陣がそれにあたる。
作成技術が国やギルドなどによって秘匿されており、非常に高価なためインフラとして普及しているものはほとんどない。ニンフが作成を得意としていたが、彼らは既に(ほぼ)滅びており、それに伴い失われてしまった技術も多い。
◎祝福
人類種においてごく稀に発生する、先天的な特異体質。
平たく言えば「幾つかのパラメータの数値がぶっ飛んでいる状態」。
なんらかの分野において種の限界を上回る能力を発揮できるが、あくまで既存の能力の延長線上にあるもの。『肺活量や水圧耐性がブーストされることで水に長く潜れる』ギフトはあり得るが、『えら呼吸を獲得して水中生活ができる』ようなギフトは存在しない。
たとえばサータシャのギフトは『超高精度な魔術を複数並列展開できる』というもので、作中のエメの古傷を消すやつはこの結果。しかもそれをふわっとなんとなくやっている。
(ただしあくまで「エルフの魔術」の範疇を出ないため、攻撃魔術に応用することができない)
複数展開されているひとつひとつを見れば基本的にはエルフの汎用的な魔術であるが、複数を同時にすごい精度でやってしまえるというのがポイントで、仮に同じことをサータシャ以外がやろうと思ったら数人がかりでじっくり日数をかけなければならない。しかも完全には痕は消えない。
なおギフトの名前は自分でつけたり周囲の人が勝手につけたり。
ほとんどの場合、幾つもの能力や才能が絡みあった上でひとつのギフトが形作られるので、個人によって千差万別となり体系化することができないため。
特定の年代にありがちな心理状態の人に名付けられるとちょっとアレなことになる。
◎種族差
寿命、繁殖力、個体能力などが種族によってまちまちであるが、たとえば長寿命(平均200年)のエルフは繁殖力が低い(生理周期が三ヶ月ほどで妊娠期間は約二年)など、すべてに秀でた種族というのはおらず、明確な優劣はない。
オーソドックスな人類種である只人族と比較すると、魔族は「寿命は同じで繁殖力は低く個体能力が高い」種と言える。
実は『種族全体(個体数などを含める)で見た戦闘能力』には極端な優劣はなく、魔族が大陸を支配できたのは本文中にある通り、魔王の『祝福』によるところが大きい。
本来であれば、魔族だけで他の全種族に戦争を挑んでも支配は不可能だった。
◎停滞病
魔族の奴隷が例外なく罹患する病。
魔力の制御器官である角の破壊と、排出器官である魔力翼根の封印が原因。魔力の体内循環機能が支障をきたし、健康を損なう。
平均的な魔族の場合、奴隷としての処置(片角の破壊と背中の封印)からおよそ十〜十五年で死に至る。
エメは生来の魔力量が多かったため、たった三年でだいぶひどいことになっていた。
ちなみにクライズが処置をしなければおよそ五年、つまりあと二年でダメになっていた。よかったねほんと。
◎種族間交配
基本的に種族間交配では妊娠できない。
が、
・ごくごく稀に子が成せる
・生まれた場合、二種族間の遺伝形質が混じり合うことで、特異な体質となる。特異体質は得てして『祝福』によく似ている。
……という事実が(あまり公になっていないが)判明している。
クライズは魔族と人間のハーフ。
なお、作品世界内においては誰も知らない事実だが、ハーフが生まれるのは両親に特定の遺伝子異常があった場合。
つまり理論上、ハーフは作ろうと思えば確実に作り出せる。
作品世界内で発見されていないのは、そもそもDNAという概念が知られていないため。
◎魔物
魔力の影響で変異した動植物の総称。動物を『魔獣』、植物を『魔草』『魔樹』ともいう。
通常の獣より強くてでかくて変な能力も持っててやばい。生殖能力はないが、通常の獣がいきなり変異することで発生するためなかなか数が減らない。
また、魔力を任意の対象に流し込んで強制的に変異させることもできる。かつて魔王麾下の魔族たちは魔物を使役していた。
◎七英雄
神託により魔王を討ち倒す使命を与えられた、七人の英傑たち。
メンバーは以下。
・『偉大なる勇者』ハイト
・『慈愛溢るる聖女』サータシャ
・『深淵を掬う賢者』ヴ・ト
・『蛮勇無双たる戦士』グィネス
・『帰らざる聖騎士』ジュリエ
・『沈黙した吟遊詩人』ソライ
・『鷹眼にて番える射手』ルルゥ
それぞれの誉名は魔王討伐後に与えられた号である。
彼らの存在は今後の物語に関わってくる。
◎神託
王権の元、『深淵を掬う賢者』ヴ・トが行った。
なお、この世界に神は存在しない。
(ただし宗教は数多存在し、神の存在も信じられている)
【第二章予告】
七年の時を経て再会し、ともに歩み始めたクライズとエメ。
エメを奴隷の身分から解放するという目標はあれど、その道筋は果てしなく遠い。
今のふたりにまず必要なのは安定と平穏、つまり「当たり前の日常」だった。
だがある日、街に出たふたりはとある貴族と出会う。
そいつの名はドルトデルタ伯爵——エメの前の主人であり、彼女の身体に傷を刻んだ張本人だった。
聖女サータシャの治癒により傷痕を消したエメの姿は、あまりに美しくあまりに可憐だった。
ドルトデルタは欲望を露わにし、貴族の特権を使って彼女を再び自分のものにしようと画策する。
かつてエメを害した者、そして今また害そうとする者に対して、クライズは——。
遅くなりましたが『ざまぁ展開あり』の作品タグを回収します。




