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契約中

この話は婚約破棄が有りますが、第三者視点です。第三者が主役で、婚約破棄騒動の2人は脇役です。

「この、性悪女っ!」


おおっ。ソレ言っちゃう? 言っちゃう? そのまま自分に返ってもおかしくないよ?


「性悪、ねぇ……」


罵って来た相手を冷めた目で見下してやる。性悪女、と罵った私に見下されていると知って、怒りに震えているらしい。カッとなったんだろうなぁ。持っていたシャンパンを私のドレスにかけてきた。あからさまに掛けたのに、もしや手が滑った、なんて言うつもりないだろうな。


「あら、ごめんなさい。手が滑ってしまいましたわ」


えっ、本気? これだけの衆人環視の中で、ソレ言っちゃうの? いやぁ、どれほど頭の中がお花畑なんだ、この人。まぁ良いけどさぁ。それにしても……、このドレス。借り物なんだよなぁ。買い取りになったとしたら、いくらするんだろう? ヤダなぁ。報酬から差っ引かれちゃうのかなぁ。


「性悪なあなたなんて、これくらいがお似合いよね」


オホホ。なんて笑い声を上げてから、その女性……マーディラ様は私の傍らに居る男性を見た。私のエスコートをしていたアレイド様が凄い固い表情で、マーディラ様を見ている。


「婚約破棄をしてもらうわよ」


その一言を聞いたアレイド様が、顔を俯かせて身体を震わせる。マーディラ様が「今更後悔しても遅いわよ」とか言ってるけど、私は知っている。彼が後悔していない事を。


「やっと、だ。やっと言い返せる!」


アレイド様が目を輝かせて、喜びを露わにマーディラ様を見据えた。怯むマーディラ様に対して、アレイド様は私をチラリと見た。ハイハイ。出せば良いんでしょ、出せば。私の胸の谷間……ではなく、下着に隠しポケットを付けていて、そこから小さな宝石を取り出した。


それをポイっと床に投げれば、そこからこの広間の天井に映像が映し出される。……この宝石は、他国で開発された録画・録音機で。それに映し出されたのは、婚約者であるアレイド様以外の男性と親しげに腕を組むマーディラ様の姿がある。ちなみに、父や兄や弟では無い事は調査済み。イトコ? それも無い。


「な、な、何よ、コレ⁉︎」


宝石が光って、その先を見たマーディラ様が怒りで顔を赤くする。


「何って見た通りですよ」


私は肩を竦めた。


「な、こんなの、いつ……」


「それを録画した日ですか? 1年と2ヶ月前ですかねぇ」


私が端的に答える。それにギョッとしたのは、マーディラ様だけじゃない。この広間にいる多くの貴族のご令息・ご令嬢様達も、だ。


そりゃあそうだろう。何しろ、マーディラ様は、私に性悪女呼ばわりをするまで、散々、半年前からの私とアレイド様の不義を罵っていたのだから。それなのに、自分はそれよりも8ヶ月前に家族や婚約者でも無い男と親しげに腕を組んでいるのだ。不義を働いたのは、どちらだ? という話である。


「こ、こんな映像、嘘よ! 作ったわね⁉︎ だって、この映像は彼の国だわ! 私は1年2ヶ月前は、隣国なんて行ってないもの!」


マーディラ様が、高らかに宣言して勝ち誇る表情を浮かべるが、墓穴を掘った事、気づいてないらしい。そう。彼女が言う通り、1年2ヶ月前の映像では無い。隣国の有名なデート場所を知っている事が既に語るに落ちたわけだが。この映像は、およそ2年前の映像なので作り物では無い事も確かだ。


「それは、俺が隣国に行って直接録画して来た映像だ。作り物なわけが無い」


アレイド様が冷たい声でマーディラ様に告げた。マーディラ様が愕然とした表情を見せる。


「う、嘘」


「嘘なものか。君が爵位が下の俺との婚約が嫌だった事は知っていた。だけど、貴族は政略結婚なんだ。結婚してから愛し合う、とか、愛情が無くても、信頼関係くらいは築けると、俺は思っていた。

それなのに、婚約期間である今でさえ、君は俺に歩み寄る気が無い。それどころか、隣国の看板役者なんかに入れあげている、なんて知った時は、衝撃だったよ! 俺は容姿も平凡だしな。だから君の不貞を元に婚約解消を願っていたのに、君の父上から反対された。それはそうだろうさ。

この婚約による利益は、我が家より君の家の方が多いからね! おまけに我が家は爵位が下。逆らえなかった。だからずっと待っていたんだ、君から婚約破棄を言って来るのを」


吐き捨てるアレイド様を見ると、どうやら相当ストレスを抱えていたらしい。アレイド様は自身を平凡な容姿と言っていたが、良くみれば整った顔立ちをしている。ただ、雨が降り出しそうな曇り空のような髪とそれよりはやや明るい目が、地味に見えるのだろう。それは人の好みなので仕方ないのだが。


「嘘よ、アンタが隣国に居たなんて信じられないわ!」


叫ぶマーディラ様。いや、本当なんだな、コレが。アレイド様は、その地味な容姿が力を発揮した……と言っては失礼かもしれないが……その容姿を最大限に活かした。群衆に埋没していた。私も実は姿を変えてその現場に居た。ついでに、完璧な第三者も連れて行った。


マーディラ様のご実家とアレイド様のご実家とは何の関係も無い、国王陛下直々の手の者なので、証人としてはこれ以上無い程信頼出来るだろう。


まぁそんな事を大々的に言うのも何なので、後でマーディラ様は聞かされるに違いない。取り敢えずは、学院の卒業パーティーの予定を潰したマーディラ様とアレイド様と私は、国王陛下名代として来賓で来ていた王太子殿下の護衛達に、摘み出される事になった。


いやぁ、卒業パーティー、台無しにしてごめんね? それは素直に謝るよ。まぁ1番謝らないといけないのは、マーディラ様だけど、ね? 大体、婚約者であるアレイド様がエスコートしますよ。って言ったのに、それを断って自分の弟にエスコートを頼んだのは自分の癖に、なんで「エスコートもしない婚約者なんて要らないわ!」とか、言い出せるんだろうね。


それを止める暇も無く、騒ぎが大きくなったのは、マーディラ様の所為だと思うよ、私。

次話も引き続き主人公視点です。マーディラもアレイドも脇役です。

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