ギルドは今日も大変だ ダンジョンから来た異世界人に家を貸し出す
夜が明けた。アイラは異世界人達を起こす為に会議室に入った
「イールさんまで。皆さん起きなさい!」
アイラの気合の入った挨拶に、次々とがばりと起きはじめる
「おはよーです」
「おはよーであります」
異世界人達は、ビミョーな発音で挨拶してくる
クレイグさんが見せてくれた日記に言葉も少しは覚えはじめた、とあったから、ジルベルフィードという人が教えてあげたんだろうと思った
「隣の宿屋に朝食を用意してありますから、案内しますね」
通じなくても、きちんと話す。食べる仕草をすると、みんなの目がキラキラする
「そんなに期待しないでください!」
勿論通じない。うれしそうに異世界人がついてきているので、アイラは豪華な食事ではないので申し訳ない気分になった
貴族はこんな場所(冒険者ギルドの事だ)にいないので、こんな格好でいると完全に浮いている
服を着替えていないので、男子タキシード、女子ワンピースドレスのままだ
「イタダキマス!」
食前のお祈り、みじかっ!心の中で突っ込みを入れつつ、きちんとフォークとナイフを使うのを確認する
生活レベルが高かった証拠だ
「ゴチソウサマデシタ!」
何故か食べ終わりにも一瞬だけお祈りしていた
とりあえず、王都のギルドには連絡を入れた
14人もいる。これは、宿に泊まって貰うにはギルドの出費が多すぎるので冒険者用の一軒家に入って貰うしかない
勿論、一人部屋も無理である
「町中で見つかって領主の屋敷に泊まる人もいるのに、かわいそうかもね」
とイール
「いえ。異世界人と認められなくての垂れ死にしてる人数の方が多いでしょう」
ギルドマスターのコペロンが、出勤してきていた。冒険者上がりではないので、ひょろいメガネのおっさんである
ギルドの入り口付近に立たれていると迷惑なので、異世界人達をさっきの会議室に戻すとコペロンが全員に言った
「私は、ギュレムの冒険者ギルドマスターのコペロンです。住む場所を貸す事になるのですが、こちらで用意は致します」
文章にすると一瞬だが、これだけの内容を伝えるのに相当の時間を要した
「家?貸す?代金はどうしますか?」
栗色の髪を後で束ねた少年が片言でそう言った
そして見たことのないコインを差し出す
価値が全くわからないが、むこうは自分達がこちらのお金の知識がないことをこうやって示しているんだろう
「残念ですが、こちらはこの国のお金としては使えません。ダンジョンから出て来ましたね、買い取れる物には代金を支払います」
すべての言葉を理解できてはいないようだが、相談している
「これはどうしますか?」
たどたどしいがこちらの言葉で言って、ゴブリンのものだろう魔石を出してきた
「ゴブリンの魔石ですね。たいした金額にはなりませんが、買い取れます」
地上のゴブリンならば討伐部位を持ってくればもう少し払えるのだが、ダンジョン産のものは魔石の価値の分の金額になる
「お金低い?」
「お金は低いではなくて、安いといいます。ゴブリンの魔石は安いですね」
「持っている魔石出します。家借りれる?」
栗色の髪の少年が、ゴブリンの魔石を空中から出すと机においた
他のメンバーが次々に魔石を出すと、コペロンは心の中で悲鳴をあげた
アイテムボックス持ち!全員が?
ゴブリン以外の魔石もあってゴーレムらしき物の魔石まである
これは、ドラゴンのものか?
「家が、一年は借りれますよ」
もっと借りれるよ。と、コペロンは苦笑する
異世界人達は、みんな両手をあげてお互いに打ち合わせて大喜びしている
コペロンは一年って言葉が通じているかな?と思ったのだった