ギルドは今日も大変だ ダンジョンから来た異世界人は本当に人なのか?
「ギュレムの冒険者ギルドにようこそ!」
笑顔で挨拶をするアイラを見て、異世界人達はみんなそろって頭を下げた
「ヨロシクオネガイシマス」
意味はわからないが声が完璧に揃っている、お招き頂きましてありがとうございますとかの意味だろうか
あまりにも声が揃っていてアイラはちょっと怖くなった
「奥の部屋に案内してあげて」
一緒に夜勤をしている先輩に言われて、アイラは異世界人達を奥の会議室に連れていった
中央の横長のテーブルを椅子が囲んでいるので、アイラはみんなに座るようにと手で合図した
全員が座れた
ホッとしたのか、ため息をついた子もいる
と、ばたんと何人かが机に突っ伏した
えっ?何?
アイラがおどおど見ている前で次々と机に突っ伏す
キョトンとしたアイラが見ているが、じっとしていて動かない
あわてて近寄ると…寝てる?他の人達も、大きなあくびをしている
入ってきたイールがびっくりしている
「寝てる?」
「まあ真夜中ですからね」
「それにしても怖いもの知らずと言うか、図太い神経と言うか」
とうとう全員が沈没している(ぐっすり寝てる)
「まあ、俺が朝までついててやるから、受け付けに戻っていいよ。最初に出会ったのが俺だから目が覚める時に居てやれって、クレイグさんが」
アイラは軽く頭を下げて戻った
「こんなとこで寝ちまって、服がしわになるんじゃないのか」
イールもため息をついた
クレイグはさっき受け取ったノートを読んでいた
こんなに薄くて丈夫な紙は見たことがないし、中の文字は擦っても水を一滴落としてもにじまない
いろいろ調べて見たかったが、まずは中身、内容が一番大切だ
ジルベルフィードがやはり生きている!
日記のようなので、異世界人達の話が書いてありそうな最後の方を見た
途中から日記ではなくなっていて、クレイグに宛てて書かれたもののようだ
日記の部分と重複する内容もあるだろうが書いておこう
新しい人達が来たが、全く言葉が通じない
子供の集団で、大人が一人だけ
ここまで降りてきた事を考えると、かなり強いだろう
昔よく行われていた勇者召還で、黒い服の集団が来たときには気をつけろ。と記録されているがそれか?
言葉が通じない異世界人は外れだと聞くが矛盾していないか?
何より驚いたのは明るい事だ、人懐っこくて全員がにこにことみんなに愛想を振りまいている
好奇心のかたまりで、言葉が通じないのにどんどん話かけてくる
その割りにはなれなれしくしない
その距離感に育ちの良さを感じる
ここにきてから誰も死んでいないと言う事だろうか
そんな事が有り得るのかと、日々観察していた
このダンジョンではこの階から、はじめて食べ物がででくる
しかし、手にするためには闘技場で戦い勝つことが必要だ
彼らはためらう事もなく戦い、勝つ
見たことのない魔法を使用し、ゴーレムに変身し、時には新しいメンバーが増えていたりもした
そして空を飛ぶ。鳥の翼や虫の翅をつけて
異世界人なのか?本当に人なのだろうか?
彼らは進もうとしている。彼らなら難なくこのダンジョンから帰還(と言っていいのかわからないが)出来るのではないかと思う
この階層はまだ浅いと思うが、ダンジョンそのものが浅いのかとも思っている
アイダホという少年がノートを見せてくれた
そして、他のノートの文字を白紙のノートに魔法で写して見せたんだ
一生懸命に何か外に伝えたい事はないかと聞いてくれていると気がついて日記を見せた
日記を新しいノートに写してくれるようなので、今急いでこれを書いている
言いたい事はひとつ
俺は元気にやってるよ
そして、この子達は見かけ以上に子供だ、守ってやってくれ
言葉も少しは解るようになってきた
じゃあな、クレイグ
そこで終わっていた
彼らについてはあんまり参考にならなかった
しかし、飛ぶ!ジルベルフィードは真面目過ぎて冗談は言えないから、その目で見ているはずだ
悪い人達ではなさそうだし、危機感が無さすぎて心配になる
「とても安全な国に住んでいたんでしょうねぇ」
いつの間にか戻ったアイラに、そう言われてクレイグはうなづいた。タメ息をつく
「その割りには強すぎるんだよ。ベルの日記にも書いてあるんだが、死人を出していないのかな」