ギルドは今日も大変だ ダンジョンから来た異世界人がやたら騒がしい
アイラは必死になって走った
むさいおっさんであるサブギルドマスターのクレイグの脚は速かった
自分の名前を呼ぶ声が遠くから聞こえてきているのでクレイグも必死に走ったからだ
帰らずのダンジョンの方の入り口の前に人だかりがあって、よく見えない
「ギルドのクレイグだ!」
叫ぶと人が道を開けてくれてダンジョンから出てきた人達を見る事ができた
はあ?子供の集団?しかもタキシード着てるじゃないか?
女性に至っては、淡い色の長いドレスだ
子供の集団でみな黒い服。異世界から来た人の何割かはこのパターンらしいんだが、タキシードだったか?もっと、こう軍服っぽかったよなぁ
王都の博物館でチラ見しただけだが
こういった異世界から団体さんが来たときには、一人か二人引率者がいると聞いたが、あの女性かな?
「クッレイグ!クッレイグ!」
みんなで声を合わせて叫んでいる
何人かは手拍子までしてうれしそうだ
はっと、われに帰ったクレイグは集団の中で一人だけ歳上っぽい女性に向かって歩いた
しかし淡い金髪の少年に声をかけられいきなり腕を掴まれる
「クレイグ?ジルベルフィード」
にっこり笑って薄いノートのようなものを見せてくる
そして、優雅な仕草でそのノートをクレイグに手渡した
何だか圧倒されて思わず受け取ってしまった
ジルベルフィード、やはり生きているのか?
「クレイグさん。早すぎですよ」
追い付いてきた、アイラがぶつぶつ言う
「あなた達はどこから来ましたか?」
アイラがゆっくり言うが、分からないようでみな一斉に首を横にふった
アイラはちょっとガッカリした
言葉の通じる異世界人は大抵、大きな力を誰からか貰って移動してきている場合が多く、当たりだと言われている
しかも、街の中に表れてくれれば、領の管轄になるのだがダンジョンから出た場合は冒険者ギルドが面倒を見なければならない
溢れ出るモンスターと同じ扱いだ
しかも、人数が多くて騒がしい
その割りには上流っぽい服装と態度、扱いが難しそうだった
「ひとまずギルドに連れて帰ろう」
クレイグがアイラに声をかけた。それしか手はなさそうだ
「ついてきてくれ」
異世界の貴族だとしても、どうせ言葉は通じないようなので敬語は使っていない
言葉は理解できなくても言いたい事は伝わったようで、異世界人達は、黙ってテクテクついていく
「危機感なさすぎじゃあないですか?」
全員がキョロキョロ回りを見回して落ち着かない
はずれの異世界人の面倒をみないといけないと思えばアイラの口調はきつくなる
「ダンジョンから出れたから、この世界に来たばかりなのと同じ事だしな!」
イールは好意的だ
「少なくとも、二つ目のボスを倒してきているはずだから強いぞ」
「ジルベルフィードと会っているみたいだしな」
「魔法の道具とかで倒しているのかも知れないです!強いかどうかなんてわかりません」
「なら、すごいアイテムもっているってことになるぜ」
ギルドは近い、すぐに着く
「異世界人達がダンジョンから出てきた!」
クレイグが、大声ですべての職員に向かって叫ぶ
そして異世界人が入って、来なかった
ギルドに入る順番を押し付けあっていた
アイラには全く理解できない言葉で言い争っている
が、顔は笑っているのでふざけあっているようにしか見えない
言葉はわからないが、
「お前、先行けよ」
「嫌だよ、お前が先に入れよ」
と言っているに違いない
しかも、人数が多いのでうるさい
「いい加減にしなさい!」
思わず叫んでしまったアイラを誰も責められないだろう
異世界人達は口々に「ハーイ」と言って入ってきた
多分、了解の意味の現地の言葉なのであろう
アイラがイラッとしているのに気がついてヤバイと思ったに違いない
入ってきてきちんと並んで立っている異世界人達にアイラは精一杯のつくり笑顔で言った
「ギュレムの冒険者ギルドにようこそ!」