ギルドは今日も大変だ ダンジョンから異世界人がやってきた
新作ですよろしくお願いいたします
ダンジョンのある街ギュレムの冒険者ギルドに勤めてから、1ヶ月
アイラは二度目の夜勤に緊張していた
そこそこの生活魔法とそこそこの戦闘力を兼ね備えた18歳の乙女である
冒険者ギルドの職員のアイラちゃんが苦労する話です
この街の冒険者ギルドは24時間開いている
ダンジョンから出た人間に問題が起きた場合や、ダンジョンから魔物が湧いてきた場合に直ぐに対応出来るようにだ
そう、この世界の冒険者ギルドはお堅い職業である
ギルド職員は皆真面目だし、飲み屋や宿が一緒になっていたりもしない
時間がたつにつれて緊張が溶け、アイラは自分のカウンターに頬杖をついて、ぼんやりしていた
ああ、このまま朝になってくれたらいいのになー。とのんびり考えていると急に外が騒がしくなってきた
「大変です!ダンジョンから人が!」
2,3人の見慣れた冒険者とダンジョンの入り口に詰めているはずのイールさんが飛び込んできた
「ケガ人ですか?治療が必要ですか?」
アイラは立ち上がり、その場にいたほかの冒険者達に会話に入られないように、すかさず声をかける
「真っ黒い服を着た人達が出てきて!」
「クレイグさんを呼んでて、大騒ぎしてる」
一緒にきた冒険者が口々に言う
「どう見ても冒険者に見えない人達が、クレイグさんを呼んでいるんです」
イールさんが、息を切らせて叫んでいる
「帰らずのダンジョンから出てきた人が!」
ざわつき始める
この街には入り口が二つ並んだ珍しいダンジョンがある
この街のダンジョンは二つなのだが、それが並んでいるのでギルドはそこの近くにあるのだ
帰らずのダンジョンは階層を戻る事ができない独特の成り立ちをしていて、なかなか奥には進めない
走破した人間はいない事になっている
そこから戻った人がいるのだ
途中のボスを倒して、そこからなら戻れるので途中までかもしれないが、浅い階層しか攻略されていないダンジョンだ。みな、興味津々である
「俺の名前を呼んでいるって?」
ドタドタと二階から大きな男が降りてきた、ここのサブギルドマスターのクレイグだ
「何故連れてこない?」
「言葉が通じません」
「誰彼構わず、クレイグ?クレイグ?って」
「貴族みたいな服だしなぁ、なんか遠慮しちまうよ」
クレイグは考えていた。黒い服の集団が異世界から現れることは昔から時々あったようだ
ダンジョンの中に転移する異世界人の話も聞いた事があるので、そこから出てきた人が俺の名前を知っているという事は…
「ベル達のパーティー」
誰かまだ生きているのか?クレイグはあわててギルドから駆け出した
「アイラ!行くぞ」