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厨二系飼育係の成り上がり -異世界で厨二病が最強だった件-  作者: どらぬこ
第一部 大騒動な大氾濫編 第一章 異世界召喚
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第7話 姫騎士さんはクーデレでした。

チラッ


「・・・」


チラッチラッ


「・・・・・・」


チラッチラッチラッ


「・・・・・・・・・」


いや、分かってるんですよ?

隣を歩いてるクラウディアさんが、ずっとちょこちょことこちらを気にしてるのは。


「クラウディア殿・・・」


「な、なんですの?」


「いや、それはこっちの台詞なのだが・・・」


いい加減むずがゆくなってきたので、話題を振ってみる。

自分、鈍感系主人公じゃないんで!


「むうぅ」


クラウディアさんは黙って俯いた後、意を決したように俺に言った。


「ま、マグナ殿。はしたないとは思うのですが、私はもう、我慢が出来ないのですわ・・・」


何かを耐えるように両手をぎゅと握り、せがむように潤んだ瞳。

エルフのイメージ通りの整った顔は、ほのかに上気している。


「ふむ」


平静を装って頷く。

こ、これは、やっぱり!?


「わ、私にも、か、カルマ殿を抱かせて欲しいですの!」


ですよねー。


悪漢?から助けたくらいで惚れるなんて、ハーレム系主人公もののチョロインたちくらいですよね!

あれはあれでいいんですが!


しかも、バトルで活躍したのはピーちゃんだしね!

よく考えたら俺、けしかけただけでまともな指示すらしてないよ!


分かってました!

でも異世界だったから、ちょっと非日常を期待したかったんです!


ずーん


頬を伝う一粒の水は、心の汗ですよ?

ホントですよ?


「カルマ、良いか?」


『キュ!』


ピーちゃんは快く頷く。

そんな姿も愛らしい。


敢えて言おう、カワユイと!


「い、いいのですか!」


腕に抱いてたピーちゃんをクラウディアさんに渡す。

抱きしめた彼女に、パーっと満面の笑顔が広がりました。


何この娘、かっ、可愛い!


さっきまでの凛とした雰囲気も良かったけど、こ、これは・・・


そう、ギャップ萌えってやつですな!



陽は随分と傾いている。

随分と歩いたがまだ草原の街道だ。


ただ、遠くに石を積んだ壁らしきものが見える。

あれが石壁だとすると、向かっている街かも知れないな。

中世ヨーロッパでは、ある程度の規模の街になると壁で囲っていたらしいし。


因みに、今向かっているのはこの国のグロニゲンという都市だ。

クラウディアさんは、普段はその街で守備隊に勤務してるらしい。


「・・・・・・」


日本ではまず見られない風景だ。

観光気分で色んな所を旅するのもいいかもな。

ファンタジー万歳!


「・・・・・・」


あー、やっぱりな。

無理矢理じゃテンション上がんねぇわ。


「カルマ殿~、あれが我が領の街なのですよ~。着いたら美味しいご飯たべましょうね~」


『キュイ!』


ピーちゃんが返事すると、クラウディアさんはでれぇっと破顔する。


キャラ崩壊、ここに極まれり。

凛々しいエルフの姫騎士はどこいった!


ある意味クーデレですけどね?

デレたのは俺じゃなくて、ピーちゃんにね。


いやね?

なんとなく疎外ぼっち感がね?


知ってますか?

本当につらいのは、ひとりぼっちでいる時より、みんなでいるのに孤独感さみしさを感じる時なんですよ?


「く、クラウディア殿。それで、我はあの街に入れるのであろうか?」


寂しくなってきたのでクラウディアさんの言葉に乗ってみたら、あっ、そういえばいたんだっけ?みたいな顔されました。


いわゆる俺、空気?


【隠密】スキル使ってないですよ?

ちょっと泣いてもいいですか?


「え、ええ。私が身元の保証をいたしますので、問題ないですわ」


「そうか。助かる」


『キュイ!』


ピーちゃんの鳴き声に、またでれでれになるクラウディアさん。


もう好きにしてください。



おおー。


傷心も吹き飛び、俺はちょっと感動していた。

魔導師ロールプレイには合わないんで、内心で感嘆する。


街道の先に見えていた石壁が目の前にある。

グロニゲンの街に着いたのだ。

なんか本当に異世界に来たって感じがする。


こうやって近くで見ると、石壁って迫力あるなぁ。

俺の身長から考えると、高さは5メートルくらいかな。


それ以上に、街門からちらっと覗く街の異世界感がハンパない。

きっと、端から見れば俺の目はきらきらしてるんじゃないか?


否が応にも期待が膨らむ。

が、ここは我慢だ。


クラウディアさんにいぶかしがられないように、街に入っても泰然たいぜんとしないと。


クラウディアさんは少し離れた所で衛兵と話している。

哨戒任務中だったらしいし、ゴブリンやオークに遭遇した経緯を報告しているのだろう。


ピーちゃんは今は俺の肩に乗ってる。

クラウディアさんは最後まで残念そうだったけど、抱いたまま仕事は出来ないと判断したと思われる。


まったく賢明です。

あんなでれでれな顔で報告なんて出来るはずもない。

今の凛々しい彼女からは想像できん。


おかしな格好をした俺については、助けてくれた旅の魔導師ってことであっさり通った。


彼女が思っていたよりも偉いのか、警備がザルなのか。

できれば前者だと思いたい。


クラウディアさんが魔導師って紹介した時の衛兵は、ああ、それなら仕方ないなって感じで苦笑してた。


元の世界でも実際の錬金術師とかは偏屈へんくつだったりしたらしいから、こっちでも魔導師は変わったやつが多いのだろう。


錬金術と言ったら鉛を金に変えるってのが定番だけど、厨二的には人体錬成と機械鎧オートメイルの義手だよな。

もちろん、ホムンクルスと賢者の石なんかも憧れだ。


そう言えば、教科書にも載ってる有名な数学者が錬金術師アルケミストだったって聞いて、びっくりしたことがあったな。


でもよくよく考えてみると、宗教的な価値観に否定されるまでは魔術も錬金術もれっきとした学問だったみたいだし、近世までは国家レベルでも結構真面目に研究されてたんだよなぁ。


転生や召喚されたら、魔法だよな。


異世界ロマンだ。

そう、ファンタジーと言ったら剣と魔法!


両方兼ね揃えた魔法剣士とか憧れるなぁ。


日本人の転生で剣士といったら、やっぱり刀だよ。

異世界で日本刀で無双するなんてカッコいいよな。

機会があったら探してみよう。


そうだ。

ロールプレイのノリでクラウディアさんに魔導師って言っちゃったけど、俺、魔法使えるのかな?

ステータスのスキルにはないけど。


ピーちゃんを召喚出来たんだから、多分使えるよな。

【召喚術】も魔法の一種だろうし。


うん。

落ち着いたらまずは魔法だな!


くぅ、俺の厨二魂が震えるぜ!


ピーちゃん主人公説が・・・

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