第61話 厨二無双。(タイトルに偽りあり)
「我が主!」
しばらくして、魔物の大群がもう数キロ先に迫って来て、開発した極大魔法の発動に取り掛かろうとした頃、かなり焦った感じのクジマが走ってきた。
「何かあったのか?」
「はっ! ご報告致します!」
ざっ!
と、片膝をつくクジマ。
「ご領主殿の偵察隊が、南東のウィンテンの町と北西のドゥルハテの町に向かう魔物の群れを確認しました! 更に、正面の大群の他に、別動隊と思わしき群れがグロニゲンの西側に向かっているとのことです!」
はあ!?
「クジマよ。魔物は戦略や戦術とは無縁のハズではなかったか?」
だよね?
「はい。某もそう聞いておりましたし、ご領主殿や他の騎士たちも驚いていました。各々の群れは凡そ三千余り。現在、指令部は混乱状態にあります」
おいおい。
それってマズくないか?
ウィンテンの町で三千の魔物なんて、あそこの低い町壁じゃあ、防げる訳ないよな?
ドゥルハテっていう町は初めて聞くから知らないけど、この辺りで一番大きい街がここグロニゲンなんだから、もしかしたらそっちもかなりヤバい?
「ルドルフ殿は何と?」
「はっ、その。ご領主殿は自ら出陣すると大戦斧を取り出しておりましたが、クラウディア殿や騎士たちに止められておりました」
だから、何やってんだあの脳筋おっさん!
あんたは司令塔だろう!
まあ、指揮官やってるより魔物に突っ込んでった方が似合ってるけどさ。
そんな問題じゃないだろう。
目の前に大群が迫っているといっても、まだ距離はある、か。
うーん。
なんで俺がこんなことで頭を悩ませてんだろ?
ああ、あの領主のおっさんがダメだからか。
納得はしないけど、理解はした。
はぁ
「マップ・オープン!」
ぱあぁ
と、光が集まって魔法陣が描かれる。
クジマが目を剥いて驚く。
「【索敵】、樹海外の魔物」
赤い点が魔法陣の中に無数に散りばめられる。
うん。
目の前の大群がもうね?
赤い点というより塗り潰されてる感じ?
同様に、大きな集まりが三つある。
これか。
「【遠話】、カルマ、ガリア、アルミラ、クロティルド、クジマ、イヴァンナ」
『あー、もしもし、皆、聞こえるか?』
「はっ! んえ?」
クジマが俺を見て、きょろきょろしてからまた俺を見る。
『キュイ!』
『ガウ!』
『ピュイ!』
おっ、反応早いな。
ああ、クラウディアさんが誘拐された時にそういやルドルフさんと一緒に見てたか。
『マスター?』
『ご当主さま?』
きっと、今のクジマみたいにきょろきょろしてんだろうな。
遠くに俺、見えてるだろうし。
『これは遠距離で話すための我の魔法だ。緊急時なので仔細はまたな。そちらの状況はクジマに聞いた。今から皆に指示を出す。よいな』
『イエス・マイマスター』
『承知致しました。ご当主さま』
『はっ! 我が主』
『キュ!』
『ガゥ!』
『ピュ!』
素直でよろしい。
『では、クロ。お前は街から少し離れてからドラゴン形態に戻り、ウィンテンに迫る魔物の群れを滅殺せよ。地竜王の名に恥じぬ成果を期待する』
『イエス・マイマスター!』
『ガリアは北西の町に向かった群れだ。遠慮せずに蹂躙せよ』
『ガウ!』
『アルミラは北東の別動隊だ。好きに撃滅しろ』
『ピィ!』
『カルマ、お前は我と共に正面の本体だ。疾く後方に回り込み、空からやつらを殲滅せよ』
『キュイ!』
『カルマの攻撃と同時に、我は正面から極大魔法にて蹴散らしてやろうぞ』
やってやりますとも!
『イヴ、お前は今言った作戦をルドルフ殿とクラウディア殿に伝えろ。それと、北門には三美姫とウィンテンの探索者たち、南門には鮮血の三兄弟と配下の冒険者たちを向かわせ、それぞれに街の防御を固めさせろ』
『はい。仰せのままに、ご当主さま』
『皆、無理をする必要はない。最悪、足止めができればそれで良い。決して死ぬことは許さん。これは我の至上命令である。では、作戦開始だ!』
『イエス・マイマスター!』
『承知致しました!』
『はっ!』
『キュ!』
『ガゥ!』
『ピュ!』
さあ、やってやりますともさ!
†
と、勢い込んではみたものの・・・
三十分も経たない内に、南の方角で轟音が轟き、地面が盛大に揺れました。
えっ、クロ?
それを皮切りに、北西の方角で白い閃光が縦横無尽に走り、北東の方角で赤い炎が数キロに渡って立ち上がりました。
えっ、ハム太? モコちー?
そして俺の目の前では、ピーちゃんの波動砲が魔物の本体に炸裂しました。
しかも数百の光線が、なんか扇状に拡がっています。
あの、ピーちゃん?
拡散式波動砲ですか?
どこかの宇宙戦争の決戦兵器ですか?
やっぱり、ピーちゃん宇宙謎生物説が有力なのかな?
あれ?
魔物の大群どこ行った?
まさかのまさかですが、一発、というかたった一射で魔物の大群がほぼ全滅なんてことはないですよね?
はは、はははっ
いやいやある訳ないない!
ないったらない!
『マスター、ご命令通り魔物の滅殺完了しました。残敵はほぼおりません』
と、クロ。
『キュ、キュイ、キュー!』
『ガウ、ガウ、ガウゥ!』
『ピュ、ピュイ、ピィー!』
続いて従魔たちが口々に成果を報告する。
いや、何言ってるか分かんない。
そんな俺はというと、極大魔法を発動させる厨二な格好いい体勢のまま、固まっています。
どうしたらいいの?
この振り上げた拳が行き場のなくなってる感じは。
俺のさっきの悲壮感漂う覚悟を返せ!!
あぼーん(意味不明)
あれ?
最後は主人公も活躍するはずが。
あれれ?




