第58話 証明終了(Q.E.D.)です。
「ルドルフ殿。すまんのだが、我の話に合わせてくれぬか? 訳知り顔で立って、ブラウエル殿を睨み付けているだけで構わない。我が何か話を振ったら、頷いてくれると助かる」
と、小声でルドルフさんにお願いする。
「うむ? 何かは知らんが、分かった。マグナの言う通りにしよう」
素直でありがたいご領主様ですね。
「そこにいるのは従魔に寄生している大魔導師殿か? 何故キミが、僕たち騎士を差し置いてこの街の領主であるジラルディエール卿の側に侍っているんだい?」
俺とルドルフさんが話していると、イケメンエルフが話し掛けてきた。
嫌味っぽいのは最初からだけど、更に数段階レベルが上がってないか?
まあ、計画を俺に邪魔されたからだろけどな。
あと、おっさんになんか侍ってねーよ。
侍るなら、美女か美少女オンリーだ。
いや、あとピーちゃんたちみたいなもふもふさんはもちろんアリだ。
「ジラルディエール卿? 何故そんな険しい顔をなされているのですか? この似非魔導師に何か吹き込まれましたか? まさか、クラウに何か!?」
おい、似非魔導師とまで言うか。
確かに初対面の時なら反論出来なかったけどな!
ORZ
いやいや、落ち込んでる場合じゃない。
「ブラウエル殿、我が何故に似非魔導師なのかは知らぬが、クラウディア殿は無事だ。囚われたままではあるがな」
「そうかい! クラウは無事なのかい! それは良かった!」
いけしゃあしゃあと。
ある意味、演技派なのかな。
「ブラウエル殿」
「なんだい? 似非魔導師殿?」
まだ言うか、このイケメンエルフ。
いや、もうクソエルフでいいや。
「もう、演技はしなくてよろしいのではないのですかな?」
怪訝な表情を浮かべる。
「は? 何を言っているんだい? どこかで頭でも打ったのかい? それは可哀想だね。頭の病気は治癒魔法じゃ治らないっていうからね。ご愁傷さま。ああ、ここはもう僕たちが引き受けるから、もう帰って頂いて構わないよ。正直邪魔だからさ」
こいつは【嫌味】のスキルでも持ってんのか?
「ブラウエル殿、総てが露見しておるのだ。貴公が商協同盟を唆して大樹海でクラウディア殿の部隊を襲わせたこと、ウィンテンで冒険者に我を襲わせたこと、そして今、クラウディア殿を誘拐させて監禁させている張本人であることもだ」
最初のはカマをかけただけだけどな。
こいつならやりそうだ。
「そうであるな、ルドルフ殿?」
「うむ」
目を見開いて、クソエルフを睨み付けるルドルフさん。
怖っ!
「な、何を言っているんだい? 幼馴染のクラウを、僕が商協同盟と組んで襲わせたって? 誘拐したのも僕? しかも、冒険者を雇ってキミを襲わせた? はははははっ! 被害妄想もここまで来ると笑うしかないものなんだね! ジラルディエール卿? まさかお信じになっている訳ではないですよね? 父上の友人である旧知の僕と、この得たいの知れない似非魔導師を天秤に掛ける必要すらないでしょう!」
おおー。
よく喋る喋る。
探偵もののミステリーで、「真犯人はお前だ!」って言われた時の容疑者のようだ。
しかも、最後の方は情にまで訴えかけてるな。
ルドルフさんは戸惑っているのか困っているのか、仁王立ちしたまま、クソエルフを睨んだままだ。
ぜひそのままで、最後までお願いします。
「森人族の貴族家の者ともあろうものが、なんとも見苦しいな。潔く罪を認めるなら、恩赦も考えてやろうとしていたルドルフ殿のお心まで無下にするとは」
「な、なんだと! この似非魔導師め! 僕を侮辱するのかっ!?」
よし!
逆上しちゃえばこっちのものだ。
「ほう。侮辱、と言うか。その程度の自尊心はあるのか。犯罪者の割には気骨がおありなのかな? なんとも無様ではあるがな。はははははっ!」
ここは決め付ける。
「ぐっ、貴様! 僕を犯罪者扱いまでするのか! そこまで言うのなら、証拠でもあるのだろうね! ここまで貴族家の、テオドルス家の僕を貶めたのだ! 無いでは済まされないよ!」
「今は無いな」
「は?」
予想外の返答に、クソエルフはぽかんとする。
あっ、ちょっと面白い。
「無い、と言っている。その立派な耳は飾りかな?」
おお。
もしかしたら、俺にも【嫌味】スキルがあるかも。
「くっ、くははははははっ! 証拠もなくたかが平民が貴族家の僕を断罪していたというのか? ふざけるなよ!」
「ふざけてなどないぞ。今は無い、と言っている。やはりその耳は飾りなのかな? ああ、我は良い治癒士を知っているからな。紹介してやってもいいぞ?」
「き、ききききき、きさっ」
あっ、キレそう。
キレてる?
いやぁ、スカしたこいつのこの表情見れただけでも、なんかスカッとしたなぁ。
俺って実は性格悪いのかな?
「まあ、耳も頭も悪いブラウエル殿には、親切な我が教えてやろう。貴公、我を襲わせた時に雇った冒険者が、今何をしているのか知っているのか?」
「そ、そんなもの、貴様が殺したに決まっているだろう! この大量虐殺者め!」
あっ、こいつ否定しないでやんの。
自白と変わんないじゃない?
これ?
ルドルフさんもその事に気付いたのか、からだがぷるぷるしてる。
クソエルフは、キレててルドルフさんの存在自体を忘れてるっぽい。
言葉使いもスカした感じじゃなくなってるし。
「ほう、人殺しではなく大量虐殺者か。何故、貴公は冒険者が複数であったことを知っている? 我は冒険者、としか言っていないのだがな」
「いや、それは、クラウから--」
「クラウディア殿も知らぬハズだが?」
「ぐっ」
苦虫を噛み潰した表情ってやつだね。
もうほとんど自白してるしね。
「まあ、いい。証拠であったな」
「そ、そうだ! 証拠がなければただの言い掛かりだ!」
「そうそう、冒険者だが、貴公が何故か知っているように大勢であった。そして、リーダーだったクジマを含めて彼らの多くは今は我が配下だ」
「なっ!?」
いいね!
その表情いいね!
「さて、証拠であったな。その襲撃者のリーダーのクジマがだな、依頼人のことを良く覚えていたのだ。どこかの貴族の使用人のようだったとな」
「くっ」
「ここまで言えば、後はその足りない頭と難聴の耳でも分かるだろう。貴公の関係者にその使用人がいれば、それで終わりだ。今、もし言い逃れが出来たとしても、結果は変わらぬのではないか?」
がくっと、膝を付くクソエルフ。
ふっ、勝った!
「以上の事から、貴公が首謀者であることは明白だ。これにて、証明終了だ--ルドルフ殿」
「うむ。この馬鹿者を捕らえよ!」
俺たちの話を呆然と聞いていた騎士たちが、ルドルフさんの一声でクソエルフ--いや、事件の首謀者テオドルス・エル・ブラウエルを捕らえる。
んー、探偵の解決編って、やってみると想像以上に気分いいな。
まさか異世界でやることになるとはねっ!
まあ、実際には証明も証拠もなかったから、最後のセリフは言いたかっただけだけどな!
ノリと勢いで解決!
それがマグナ・クオリティー!
†
そうそう。
後で聞いたら、エルフの耳を貶すのは、彼らにとって最大級の侮辱なんだそうだ。
知らないって怖いね!
Quod Erat Demonstrandum〝かく示された〟(羅)
あっ、クラウディアさんは!?




