第51話 ついに主人公イベントが来ましたか?
「小兄貴、聞いたかよ! ウィンテンの迷宮が踏破されたらしいぜ!」
守備隊の詰め所から屋敷に戻る途中、日も暮れかけていたので食事がてらに酒場に入った。
ピーちゃんたちは今頃、外で酒場のマスターに用意して貰った魔獣の肉を堪能していることだろう。
クジマはさっき、一緒に夕食を取るためにイヴを呼びに行かせた。
クジマ兄妹を待ってる間、ひとりで麦酒をちびちびやってたら、聞こえてきたのが冒険者か探索者っぽい風体の三人組のこのセリフ。
「ああ? ついに〝双剣のステファン〟が再挑戦でもしたのか?」
「いやいや! それが踏破したのはぽっと出の新人探索者らしいんですよ!」
おおぅ、俺の噂か。
おたくら耳が早いですね?
「はっ! 酒が入ってるからって馬鹿も休み休み言え! 下位探索者なんかがあの高難易度の迷宮を踏破出来るハズがないだろう! 双剣が第二十階層でやられちまってから、十年以上そこにたどり着いたヤツすらいねぇんだぞ?」
「嘘じゃねぇんですって! ウィンテンの自警団のヤツが昨日守備隊に正式な報告に来てたらしくて、なんでも第二十階層から下もあって、信じられねぇことにたった三日で第三十階層まで踏破しちまったって話ですよ!」
「マジでか?」
「マジですぜ、マジ! で、付いた二つ名が〝三日踏破者〟だってよ!」
ぶうっ!
思わずエールを盛大に吹き出しちゃったよ!?
長老がぽろっと言ってたそれ、俺の二つ名なの!?
まさか、正式な報告書に載ってなんかいないよね?
ねぇ!
「なんだぁ、こいつ?」
「ちっ、汚ねぇなぁ。おい!」
あっ、ちょっとかかっちゃった。
「す、すまぬな。お前たちの話に少し思うところがあってな。いや、申し訳ない」
いや、マジでごめんなさい。
「はぁ!? 人様にエールぶっかけといて、「すまぬ」だぁ? 舐めてんのか? あぁん?」
うっわぁ。
まさにチンピラかごろつきのセリフだよ。
面倒なことになっちゃったなぁ。
はっ!
もしかしてこれは異世界転移のお約束ですか!?
ついに俺が主人公の時代が来ちゃいましたか!?
でも、流石に今回は完全に俺が悪いしなぁ。
ここは大人の対応で--
「き、貴様ら、我が主に向かってなんと無礼な物言いを・・・」
「万死に価しますわ・・・」
あれっ?
いつの間にかクジマ兄妹が酒場の入り口に立っていらっしゃる?
「ああん? テメェらこいつの連れか?」
「おいおい、可愛い姉ちゃんが一緒じゃねぇか! 勘弁して欲しかったらよ、そこの姉ちゃんがオレらにお酌してくれよ! まあ、もちろんその後は場所を変えてちゃんと楽しませてやるぜ? がはははっ!!」
うっわ。
お約束に、更にお約束きちゃったよ。
「お、おい? お前らそれくらいに--」
ん?
三人組のひとりだけ、何か反応が違うな?
「我が主だけでなく、妹まで愚弄するか・・・」
あれ?
「救いようのない下衆が・・・」
あれれ?
ちょっと待とうよクジマさん?
落ち着きましょうよイヴさん?
というか、忠臣キャラのクジマはともかくイヴさん?
そのような性格していらっしゃいましたか?
えっ?
なんかハンパない威圧感なんですけど?
二人共もしかして【威圧】のスキル持ってたりしますか?
「あぁん !? 陰気な兄ちゃんに可愛い姉ちゃんよぅ! オレたちが誰だか知ってて言ってんのか? この街でも知らぬ者はいねぇトップクラスの中位冒険者パーティー〝鮮血の三兄弟〟だぜ?」
「おう、小兄貴! 知らねぇハズがねぇや! ぎゃははっ!」
うう。
〝三日踏破者〟と被ってる。
その二つ名は認めてないけど、なんかヤダ!
〝三美姫〟は可愛い娘たちだからギリでいいけど。
っつーか、また冒険者ってこんなんかよ!
クラウディアさんの気持ちが解ってきちゃったよ!
「だ、だからお前ら、その位で、な?」
なんだろう?
さっきから、一番がたいのいいひとりだけノリが違う?
「さっきからどうしたんだ、大兄貴! こんなひょろっこいヤツら、さっさと伸してこの姉ちゃんと楽しもうぜ!」
「そうだぜ、どうしたんだ大兄貴! らしくねぇなぁ!」
あっ、雰囲気違ってたけどこいつがリーダーなんだ。
確かに体格も一番いいし、領主みたいに髭面な強面だけど。
「度重なる無礼、もし、例え我が主に非があったとしても、もはや甘受出来ぬ」
「はい、お兄様。このような羽虫らに情状酌量の必要はありませんわ」
怖い!
何この兄妹、怖いよっ!
「あん! オレたちを羽虫呼ばわりか? 姉ちゃん、可愛いからって容赦しねぇぞ? いや、お仕置きついでに可愛がってやんぜ! がははは!」
「可愛がってやんよ! ぎゃははは!」
「いや、だから--ひいっ!」
ギン!
クジマの鋭い視線にリーダーの大兄貴が尻込みする。
次の瞬間、冒険者二人とクジマ兄妹との戦闘が始まった。
書きたかったんです!
異世界モノですからね!




