第49話 メイドの仕事着はメイド服です。
鍛冶師の工房で詳細を詰めたらちょうどよく夕方になったので、俺たちはそのまま新居に向かうことにした。
宿屋は朝で引き払ってあるし、工房から近かったのもあったからな。
クジマは守備隊の詰め所に依頼についての確認に行ったので、今俺たちはハシム商会長と屋敷にいる。
ピーちゃんたちはずっと着いて来てたけど、ハシム商会や鍛冶師の工房では外で待っててもらった。
モコちーだけが外じゃ可哀想だからな。
建物を出ると、どちらでも子どもや女性に囲まれてた。
まあ、これは仕方ない。
商会長は屋敷の簡単な説明と鍵の束を俺に渡して商会に戻っていった。
心なしかほくほく顔だった。
きっと、新式馬車の事でも考えていたんだろう。
執事とメイドの事もついでに相談してみたら、ハシム商会で人の斡旋はしてないけど、気を配っておいてくれるそうだ。
まあ、すぐには見つからないだろうし、まだ必要でもない。
ゆっくり探そう。
商会長を見送った後、俺は改めて屋敷の中を見回して歩き、適当な部屋に入ってベッドに寝転ぶ。
もちろん、モコちーを先に寝かせてお腹に頭を埋めている。
ピーちゃんとハム太は両脇で丸まってる。
なんか至極優雅です。
もふもふ天国です。
はぁ、和むわぁ。
†
もふもふに癒されてうとうとしてたところで、クジマが守備隊の詰め所から帰って来た。
クラウディアさんと話した内容の確認は後にして、イヴを連れて来るように指示する。
いくら元気になったからといって、あの環境は身体にあまり良くはないだろうし、遅かれ早かれメイドとして雇う訳だから、どっちにしろクジマと共にこの屋敷に住んでもらうのは決定事項だ。
クジマの家は街の東側だから、ほどなくしてイヴを連れて戻ってきた。
イヴは想像以上のお屋敷に驚きつつも、俺に大袈裟な挨拶をしていった。
彼女には一階にある使用人部屋の一室--クジマの隣室をあてがっておいた。
†
夜になってクジマとイヴが部屋に訪ねてきたので、執務室で話すことにした。
「我が主、ベイレフェルト殿との契約と今後の事についてですが--」
「うむ」
ベイレフェルト殿ってのはクラウディアさんのことだな。
「先日、我が主が直接ジラルディエール卿からお伺いになったとのことですので重複するとは思われますが、まず、我が主と某は明日からの契約となります。毎朝に守備隊の詰め所に行って、待機するなり何かしらの指示を受ける事になります。後日ウィンテンの町から来る冒険者や探索者は、着いた翌日からとのことです」
「続けてくれ」
目配せしたクジマに、続けるように促す。
「はっ! 詰め所で待機した場合の報酬は、下位職の者が銀貨六枚、中位で小金貨一枚、上位で小金貨二枚となります。我が主は規格外として、従魔込みで小金貨三枚になりました」
規格外て。
ピーちゃんたちのことか?
まあ、納得だ。
「襲撃があった日はそれぞれ倍額が支給され、成果報酬は後日改めて相談とのことです。魔石やドロップしたアイテムについては、街の魔石商で換金して冒険者と探索者に分配することににりました。最初は好きにしていいと言われたのですが、争いの種になりかねないので某の方でそう提案しましたが、問題なかったでしょうか?」
「よい」
「詰め所では訓練なども義務となりますが、それ以外で何かしらの指示をされた場合、任務の危険性に応じた追加報酬が出るそうです」
「任務とは?」
「早速ですが、ベイレフェルト殿から我が主に明日は樹海線の調査に赴くので同行して欲しいとのことです。以後は状況に応じてかと」
「そうか」
さっきから一言づつしか喋ってないな、俺。
楽でいいや。
「後は細々とした内容を署名にて預かっておりますが、逃亡は罪になるなどの順当なものでした」
「分かった。クジマ、ご苦労だったな。イヴ、体調の方はどうだ?」
「はい。ご当主さま。病にかかる以前より調子がいいくらいです。アルミラさまはすごいのですね」
「では、無理をしない程度で構わないので、屋敷のことは頼むぞ。何か必要な物があれば遠慮なく言ってくれ。ああ、食材や日用品などの購入はまかせるからな。いくらかの資金を後で渡しておこう。何に使ったかだけ後で報告してくれ」
「はい! 何なりとご指示下さいませ!」
なんか命令すると嬉しそうだな。
メイドのご奉仕魂か?
素晴らしい!
「ご当主さま、早速ですがお願いがございますの」
「何だ?」
「やはりメイドとして働くのであれば、仕事着があった方がいいと思いますの。服飾店で仕立てさせてもよろしいでしょうか?」
メイドの仕事着・・・
それは当然、メ、イ、ド、服っ!
なんと素晴らしいお願いかっ!
俺から言うのはなんか憚られたんだけど、メイド本人が着たいって言うのなら仕方ないよね!
ぐっじょぶだ、イヴ!
最初のひとりが着てたら、後からのメイドたちには流れで着させられる!
策を弄する前に主人の心を見抜き、しかも提案ではなくお願いとは!
イヴ、恐ろしい娘!
いや、メイドの鑑!
「構わぬ。ご領主殿の館にいた使用人が来ていたものが良い感じであったと記憶している。あれに習うといい。ただ、貴族の使用人とまったく同じであるのは立場上不味いかも知れんから、店の者と相談するといいだろう」
「ご当主さまの御心のままに・・・」
イヴが両手でスカートの端を摘まみ、優雅にお辞儀をする。
流石はどこかの屋敷での経験ありだね!
狼耳っ娘メイドのメイド服!
期待しちゃっていいよね!
いいよね!
ひゃっほう!
主人公・・・(汗)




