第44話 家を買っちゃいました。
ふーふーふー
内心の叫びを隠すだけで大変苦労しています。
異世界で家を購入する事にした、厨二病を拗らせ中の大魔導師アルス・マグナです。
召喚士とか魔獣使いじゃねぇの?
と疑問を持たれても反論できませんが、実際中二からそう言ってオンラインゲームとかでキャラつくってたので、簡単には直せません。
まあ、それはいいとして。
はぁ
はじめてのネコミミがおっさんかー。
予想の斜め上とはこのことか。
なんか異世界に来てから小鳥がドラゴンになったり、ハムスターが虎になったり、でかいドラゴンが人に化けたり、兎がフェニックスになったりと驚いてばかりだけど、今が一番ショックかも知れない。
はじめてのケモミミじゃなくって良かったー。
狐耳っ娘は可愛かったからな。
もしはじめてだったら、ぶちギレて魔法でも放ってたかもな。
マジで。
「あの、我が主?」
なんか感じ取ったのか、クジマが恐る恐る声をかけてきた。
いや、平常心平常心。
ひっひっふー
ひっひっふー
だから違う!
これじゃない!
ふぅー
はあぁぁぁ
よし。
何とかなりそうだ。
「むっ、すまぬな。少し考え事をしていた。なんだ?」
「いえ、こちらの要望に合った丁度良い物件がひとつあるようなので、まずは見に行っては如何かという話になったのですが・・・」
いや、ごめんなさい。
思ってた以上に錯乱してたみたいです。
どんだけショックなんですかね?
自分。
「クジマが良いと言うのなら、構わん」
「はっ! 恐縮です!」
いや、畏まり過ぎじゃないですか?
そんなに表に出てたかな?
反省しよう。
理不尽極まりないしね。
†
ということで、やって来ました男爵邸!
男爵邸?
なにそれ美味しいの?
えっ、貴族様のお屋敷ですか?
いつの間に元男爵邸なんか購入する流れになってんの?
おっさんのネコミミショック、パネェ!
と、衝撃的だったのは置いておいて、まあ、確かに要望は充たしてますね。
でも、予想以上に豪華ですね。
玄関のとこには明治時代のドラマで出てきそうな馬車を停める屋根みたいのがあったよ。
中に入ると、小規模な舞踏会でも開けそうなエントランスがあるよ。
頭上にはシャンデリアみたいなのがすげー自己主張してるし、正面には転がり落ちてみたくなるようなでかい階段が付いてるね。
二階の各部屋はシンプルだけど、それが逆に貴族っぽいかもしんない。
一際重厚な扉の先には仕事用の書斎もあった。
食堂はでかい食卓と燭台っぽい魔道具があって十人以上座れそうだし、厨房もレストランみたいに広い。
冒険者用に使いたい離れもちゃんとあった。
いや、最初に想像してたのこんなんだったし。
これだけで十分ちゃうの?
そして、ありましたよ、風、呂!
だーい、よーく、じょーう!
「どうですかな? マグナ殿のご希望を叶えるならば、グロニゲン広しといえども今はここしかないと思いますぞ。特に風呂は高級宿か貴族の屋敷にくらいしかありませんからな!」
と、ハシム商会長。
謎が解けました。
そうかー、風呂かー。
風呂付き物件って日本人の感覚で言っちゃたけど、中世風ファンタジー世界だもんなぁ。
そりゃ、貴族くらいしか出来ない贅沢か。
クジマが最初から屋敷とか言ってた理由もこれかー。
創作系でも大体そうだもんなぁ。
くぅ、厨二が聞いて呆れるぜっ!
こんな基本設定を忘れるなんて。
そういや、宿でも体拭くだけだったよ。
だからこそ真っ先に風呂付きって言っちゃたんだけど。
うーん。
男爵邸かぁ。
昨日行った領主館ほどじゃないけど、一般日本人の感覚じゃあ垢抜けてるとか言うレベルじゃないよなぁ。
しかし、この大浴場を見ちゃうとなぁ。
足伸ばして入れるのいいなぁ。
あっちの世界でも実家は普通の浴槽だったから、憧れだよなぁ。
うーん。
「我が主、これなら満足して頂けるのでは?」
「そうですな。慎ましやかでありながらも洗練された屋敷ですからな。元の男爵様が趣味の良い方だったのですよ」
プッシュしますね。
これで慎ましいとか言っちゃいますか。
流石はやり手の商人ですね。
「これくらいでしたら使用人も家令か執事が一人と、あとはメイドが二、三人もいれば済むでしょう。屋敷の維持を考えても、このくらいが妥当ではないですか、我が主」
なぬっ?
今なんと申した、我が第一の家臣クジマよ!
メイドを雇う、だとぅ!?
今、メイドを二、三人雇うと言ったか!!
「うむ。クジマがそこまで薦めるのであれば良いであろう。ハシム商会長殿、早速手続きをしてくれ」
「ありがとうございます!」
ハシム商会長は大きな取り引きが纏まったからか、にこにことご満悦の顔だ。
そうかー。
屋敷買ったらメイドを雇わなくちゃダメだよなぁー。
ピーちゃんたち従魔は論外だし、ドラゴンのクロに家事なんか期待できないだろうしなぁ。
仕方ないよなぁー。
そうかー。
メイドかぁ。
領主館にいたような本物のメイドさんが「ご主人様」で「ご奉仕します」かぁ。
そうかー。
メイドかぁ。
ぐふふふふ
期待しちゃっていいかなー!
いいともーーー!!
えっ、家令か執事も雇うだろうって?
なにそれ美味しいの?
そんなのどうでもよかと!
メ、イ、ド、やっふぅ!!!
領主館のメイドの下りはこの伏線でした。
普通の高校生は、いくら金あっても貴族の屋敷は買わないかなと。
思春期の妄想は、何にも勝る動機付け!(持論)




