第41話 はじめての依頼。
「ふむう。ウィンテンの迷宮は本当に第三十階層まであったか。マグナに先に踏破されたと聞いたら、ステフのやつは残念がるだろうな」
「そうかも知れませんのですわ」
とりあえず、さっき守備隊の詰め所でクラウディアさんに話した内容を改めて説明した。
ピーちゃんたちの無双で迷宮を踏破して、ドラゴンが溜め込んでた装備を身に付けてるってとこまでだな。
ルドルフさんは何かを考え込んでる。
クラウディアさんはお眠なピーちゃんとハム太に目が釘付けだ。
「ステフ殿、とは?」
誰だろう?
「迷宮都市の探索者ステファン・スヴィンケルスだ。儂とバルツ--バルツァー・エル・ベイレフェルトとは旧知でな。昔は共に狩りを楽しんだものだ! ぐはははは!」
狩りって、やっぱり魔物とか魔獣とかですよね?
きっと、お貴族様のお上品な狩りじゃないよな。
「ベイレフェルトの性ということは、クラウディア殿の関係者か?」
「む、まだ聞いてなかったか。クラウの父親だ。つまりはここの辺境伯だな。儂ら三人ともうひとりで、探索者の真似事をして暴れまわっておったのだ! まあ、当時は若造だったステフは未だに現役で探索者をやっておるがな!」
えっ、何?
クラウディアさんのお父様も探索者やってたのか?
このおっさん(無礼)と一緒に暴れてたって、大概じゃね?
「その、ステファン--スヴィンケルス殿が何故に、我が迷宮を踏破して残念がるのだ?」
「ウィンテンの町で聞かなかったか? あやつは儂らとパーティーを解散した時に少々事情があって荒れていてな。あれは十数年前だったか。憂さ晴らしにあの迷宮に挑んで、第二十階層の魔物にこてんぱんに伸されて逃げ帰ってきたのよ! がはははは!」
あれ?
なんか聞いた覚えがある?
ああっ!
「アイ・シャル・リターン」の人か!
ホントに言ったかどうかは不明だけど。
「まあ、ステフも若くして上位探索者ともて囃されて天狗になっていたからな。よい薬になったのであろう。それからあやつは、樹海迷宮に修行に行きおったのだ。理由は分からんが第三十階層まであると確信しておったようでな。いつか必ず踏破してやると息巻いてたわ!」
十年がかりの目標ですか。
それを駆け出し探索者の俺が先に踏破しちゃったと。
「もう十年も経って、あやつはあの迷宮都市でも押すも押されぬ最上位探索者だからな。そろそろ再挑戦する頃かと思っておったのだが。マグナに先を越されたと知った時のステフの顔が見物だな! ぐわははははっ!」
これ、フラグじゃないですよね?
迷宮都市にもそのうち行く気だけど、トップランカーの探索者となんて、そうそう会ったりしないよね?
しない、よね?
「ステファン様はお立場上、なかなか迷宮都市を離れられなくなっていらっしゃいましたの。きっと吃驚すると思いますわ」
と、ピーちゃんとハム太をちらちらと眺めながらクラウディアさん。
ぶれないね。
「我の話はこれくらいにして、ルドルフ殿とクラウディア殿からの話とは依頼のことであるか?」
「ふむ、そうだったな。商協同盟と大氾濫についてはクラウから聞いておるな?」
「うむ。概要はクラウディア殿の手紙に書かれていた範囲で承知している。詳しい話はルドルフ殿からと言われたのだが」
「はい。それでルドおじさまのところへ早速お連れしたのですわ」
あっ、いつの間にかピーちゃんに寄り添って、ハム太を膝に乗せてる!
ハム太、なんと羨ましい!
ご主人様を差し置いて!
「そうか。クラウの手紙にあったとは思うが、今、我が街は商協同盟と大氾濫というふたつの問題を抱えていてな。商協同盟の方は国家間のことであるから、きな臭いとはいえマグナにはあまり関係ないのだが、大氾濫は相手が魔物であるからな。少しでも力のある探索者や冒険者の力を借りたいのだ」
ああ、宇宙ちっくなアイテムでハム太になりたい。
耳無しのぬこロボやまじかるなちみっこのアイテムでもいいですよ?
いやいや、真面目に聞かんと。
「報酬については待機して貰っている期間は、何もなかったとしても払おう。襲撃があった際には追加報酬と、討伐実績に応じた報酬も考えよう。魔石やドロップアイテムは探索者や冒険者の皆で好きに分けて貰って構わない」
「まあ、妥当であるな」
よく分かんないけど合わせておく。
「では、マグナは協力してくれるか?」
「ああ、非才の身であるが最善は尽くそう。もちろん、カルマとガリアもな」
『キュイ?』
『ガウ?』
聞いてないか。
クラウディアさんに甘えて寝てましたしね!
後で太腿の感触をリサーチだ!
喋れなくてもYES・NOくらいなら理解出来る!
「ウィンテンの長老からはまだ返答はないが、他の探索者たちは協力しそうだったか?」
「うむ。こちらに来る前に話はしておいた。実際に何人になるかは分からんが、一週間後に到着することになっている。それと、我が配下の冒険者も十人ほどだが参加させようと考えているのだが、問題はないか?」
「うむ。問題はないが、マグナには冒険者の配下がいるのか? その従魔とは別にか?」
ルドルフさんはチラッっとクラウディアさんに目配せをする。
「私も初耳ですわ」
「ああ、向こうで色々あったのでな。中位程度の者が中心だが、名ばかりの者も多いので今は実力のある者たちに鍛え直させている。それらも一週間後、探索者たちと一緒にこちらへ来る予定だ」
「おお、それは有難い! マグナよ、感謝するぞ!」
ぜひしてください。
貴族のコネはあった方がいいからな。
異世界転移では定番だ。
「一体、ウィンテンで何があったのでしょう?」
クラウディアさんが呟いていた。
うん。
色々あったんですよ、クラウディアさん。
しみじみ
領主のおっさんが予定外に説明キャラ化してしまった。




