第36話 姫騎士からの手紙。
冒険者の襲撃があった翌日。
宿に戻ったのは朝も近い時刻だったので、昼過ぎまで寝てた。
人生には自堕落な日があってもいいと思います。
まあ、所詮は高一。
人生を語るほど生きてはいないですが。
前日と同じように、クロは同室の隣のベッドでハム太を、俺はピーちゃんを抱き枕にして寝ました。
もふもふはこの世の至福です。
クジマには隣室を取って休んでもらった。
最初は廊下でいいと固辞していたけど、「家臣を無下にする主にしたいのか」と言ったらあっさりと引き下がった。
クジマ相手にはこの手が使えるね!
くくっ、覚えておこう。(下衆)
竜の尻尾亭のおばちゃんは、深夜朝方でいきなりにも関わらず、ちゃんと一泊分払うなら気にしないと快く部屋を用意してくれた。
いい人というより、商魂逞しい感じだ。
宿を出た俺たちは長老宅に向かった。
預けてある冒険者たちとの交渉のためだ。
全員奴隷にして売り払う事も考えたんだけど、元々犯罪者という訳でもないし、クジマの例もあったからだ。
情状酌量の余地ありってやつ?
面倒だけど時間をかけてひとりひとり話をして、見込みがありそうな九人に関しては面倒をみることにして、残りの反抗的な奴らはそのまま自警団に任せる事にした。
多分、犯罪奴隷落ちだろう。
実際に犯罪だしな。
ウォッカさんは案の定、九人の内のひとりだ。
名前も聞いたんだけど、忘れた。
まあ、その内覚えよう。
†
それと、クラウディアさんからの手紙が届きました。
ただ遅れただけのようです。
まあ、中世ファンタジー世界ですからね。
現代みたいに早く正確に届かないのは仕方ないでしょう。
というか、ウィンテンの町での俺の所在が彼女には分からなかったからか、長老宛に届けられていた。
迷宮踏破の報告で長老がぶっ倒れたので、俺に渡し損ねただけだった。
仕方ない--のか?
クラウディアさんからの手紙はもちろん俺への恋文--ではなく、かといってピーちゃんへの想いを綴ったものでもなく、仕事の依頼書だった。
綺麗な字で丁寧に書かれていたので、それなりに長かったから内容をはしょると、最近グロニゲン近郊の大樹海でクルメール協商同盟が活発に動いているらしい。
クルメール協商同盟は異世界初日にクラウディアさんを襲ってたオークとかゴブリンの鬼人族の三国同盟ね。
クラウディアさんたちの哨戒部隊が襲われたのも、このひとつだったのではないかとのことだ。
それと、これと同時に大樹海の魔物の動きも普段より活発化しているとの報告があり、協商同盟の動きとの関連性は不明だけど、同時期に同じ場所でというのが懸念材料になっているらしい。
守備隊の責任者であるイケメンエルフがあくまで偶然だろうと歯牙にもかけてないので、領都アスターヴへの本格的な辺境軍の派遣は要請されてない。
あいつは駄エルフか?
とも思わないでもないが、他国からの侵攻が報告されたとか魔物の大氾濫が確認されたとかの緊急事態ならともかく、今の状況では軍の派遣にはそれなりの手続きも必要だから、不確かな情報とただの可能性では正直要請することは難しいとも書かれていた。
まあ、軍隊は金食い虫って言うしな。
イケメンエルフの判断も間違いとは言えないのだろう。
中世風に考えると、職業軍人は少なくてほとんどは農民兵って可能性が高そうだ。
封建制みたいな感じだと、騎士とかの指揮官クラス以外はすべて兼業なのかも知れない。
因みに、魔物の大氾濫というのは数十年に一度あるかないかくらいらしい。
発生すると、町や村がいくつも壊滅するんだと。
召喚された遺跡があった場所の近くに町がなかった理由だ。
・・・怖っ!
と、ここまでがあちらの状況。
で、依頼内容はここから。
「愛しの大魔導師マグナ様、助けて!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
すいません。
調子に乗りました。
まあ、そこまではいかないけど、協商同盟については国家間のことなので置いておいて、万が一の魔物の大氾濫が起こった時のために予備戦力としてグロニゲンに戻って来て欲しいとのことだ。
戦時中でもないから傭兵団を雇える程の余裕もなく、彼らは魔物や魔獣の討伐にはほとんど素人だから、とりあえず専門の冒険者や探索者をある程度の数を集めたいらしい。
彼女の苦手な冒険者にも、ってところが切羽詰まった感じがする。
長老にも別に要請しているので、もしウィンテンの町で協力してくれそうな探索者に心当たりがあれば声を掛けて欲しいとも書かれていた。
クラウディアさんと会った時には俺は魔法は使えなかったし、きっとピーちゃんの戦力がお目当てなんだろうなぁ、と思いつつも、彼女には恩があるので協力はしたいと思う。
それに!
今度こそ俺の魔法を披露して、「きゃ、ステキ! マグナ様、抱いてっ!」とか言わせてみたい!
そんなキャラじゃないのは分かってますよ?
妄想乙!
†
「ということで、第四回異世界でどうする会議~」
『キュイ!』
『ガウ!』
いつも通り元気なピーちゃんとハム太。
宿に戻って恒例の会議の時間だ。
「異世界、とはなんですか?」
「この小動物たちは言葉を理解しているのか? ぐぼぅ」
よく分かってないクロと興味深気なクジマ。
ピーちゃんたちを小動物とか言ってしまったクジマが、次の瞬間クロの一撃で沈む。
「カルマ様に無礼ですよ! 言葉を改めてなさい、下等生物」
いや、小動物やん。
容赦ねぇ。
「いや、何が・・・なのだ?」
そりゃそうだ。
いくらドラゴンとはいえ、このサイズでこの愛らしさだもんね。
「あー、クジマよ」
説明してなかったので、ちょっぴりばつが悪い。
「はっ、我が主」
まだ苦しそうだけど、クジマは無理矢理に居住まいを正す。
「実はな、クロはこの町の迷宮の第三十階層にいた迷宮主で、地竜の化身でな」
「は?」
クジマが目を見開いて絶句する。
「そこの床で尻尾振ってるガリアは、白虎種という聖獣の幼体だ」
「は?」
あっ、キャラ崩壊の予感がする。
「で、ベッドに乗ってるカルマも聖獣の幼体なのだが、神獣になる竜種であるらしいぞ?」
「は? は? は?」
は? を繰り返された。
「地竜の化身? 聖獣の白虎? 神になる竜種?」
「うむ」
ちょっと違ってるけど、概ね合っているからいいや。
「我が主は、一体何者なのですか? いや、それよりも、某らは、なんで生きてるのですかな?」
うん。
分かるよ、その気持ちは。
自分のことで今更だけど、この集まりってなんかおかしいよね!
ここで三章は終了です。
五章でラノベ一冊分くらいになるので一段落させる予定です。
面白かったらブクマお願いします!
ここまで読んでも面白くなかったら、できれば感想とか?
あっ、でもあんまりキツイと心が折れるのでお手柔らかにお願いします(汗)




