第33話 異世界の夜道は危ないようです。
驚愕の連続で倒れた狐耳っ娘は、ピーちゃんにお願いして回復魔法を掛けてもらった。
もちろん、セクハラはしませんでしたよ?
無防備なもふもふの誘惑には頑張って抗いました。
少女相手に頑張ったとか言ってる時点で犯罪者予備軍ですね。
まあ、大して年が離れてる訳じゃないので、ロリコンの汚名は回避出来そうですが。
因みに、クロはどこ吹く風でハム太をもふもふしてました。
仲良くなりましたね!
俺も近い内に回復系の魔法を覚えることにしよう。
回復してヴィタが正常に戻ったので、嵩張っていた上層と中層の魔石だけ買い取って貰った。
階層主や下層の魔石は、店の資金力の限界もあって持ち帰ることになった。
ヴィタは残念そうというより無念そうだった。
これらはグロニゲンの街に寄った時に大商会に売るか、古い貨幣と一緒にオークションに出品するといいとアドバイスしてもらった。
上層と中層の魔石だけでも前回の三倍以上の金額になった。
贅沢しなければ、三年以上は寝て暮らせますね。
オンラインゲームでもあったら、廃人になりそうです。
†
この日、先日も使った三人娘御用達の酒場でまた探索者たちに大盤振る舞いしました。
迷宮攻略の記念です。
下手に噂がひとり歩きして面倒になるよりは、ちゃんとした情報を流した方がいいかなと、ね?
もちろん、情報操作込みです。
抜かりはありません。
前回よりも増えた探索者たちが、男女問わず迷宮攻略について聞きにひっきりなしに声を掛けてきます。
最初は皆さん半信半疑でしたが、中層や下層のドロップアイテムを披露すると九信一疑くらいになったようです。
今は、俺が実質荷物持ちだったことは触れずに、ピーちゃんとハム太の活躍を語ってます。
ぶっちゃけ従魔の自慢話になっています。
端から見たら、ただの飼い主バカでしょう。
活躍した当のピーちゃんは酔っぱらったユスティナに絡まれて、キュイキュイと神妙に頷いています。
出来た従魔です。
ハム太はエマニュエルさんに抱かれ、褐色の霊峰に埋まって肉を食べさせて貰ってます。
羨ましい従魔です。
クロはフィロメナと魔石商の看板娘に捕まって、質問責め真っ最中です。
途中でヴィタが「ど、ドラ--!」とか叫びかけてフィロメナに口を塞がれてました。
フィロメナ先生、ぐっじょぶです。
きっと、クロが正体を喋ってしまったのでしょう。
せっかくの情報操作が無駄になるところでした。
困った従魔です。
そんな混沌な状況を眺めながら探索者の相手をしていたら、なんかモーレツに眠くなってきました。
ぷぷっぴどぅ、な感じです。(意味不明)
そろそろ宿に帰りましょう。
あれっ?
なんか俺の言葉がおかしくないですか?
あっ!
そういえば、まともに酔っぱらったの初めてかも知れないです。
前回は記憶が曖昧だし・・・
眠い。
†
酔っぱらって若干千鳥足気味の帰り道。
宿にむかう途中でなぜか全身黒ずくめの男たちに絶賛包囲中です。
俺に向けられる強烈な殺気で、なんか酔いが一気に醒めました。
狐耳っ娘のアレ、フラグですか!?
夜道で襲い掛かるほどの嫉妬?
こいつらまさかの、ザ・嫉妬マスクズ!?
お揃いで変な仮面付けてるし。
今日は性夜--もとい聖夜じゃないよな!?
女性っぽいシルエットもあるけど、まさか狐耳っ娘は加わってないよね?
って、三人娘もクロも彼女とかじゃないからな!
俺、嫉妬する側のぼっちDTですよ!?
あっ、これは自分で言ってて凹むわ。
ORZ
とか言ってる場合じゃない。
「お主がアルス・マグナだな」
背の高い痩身の黒ずくめが確認してきた。
なんとなくジン(仮)と呼ぶことにする。
惚けてみようかとも一瞬考えたんだけど、確信持って言ってそうなのでやめた。
「大人しく手紙をよこせば、見逃してやるぞ」
あっ、違った?
嫉妬マスクズの襲撃じゃない?
手紙?
この世界で手紙のやり取りなんかした覚えはない。
つまり、心当たりがまったくないです。
「そこの女、お主に用はない。怪我をしたくなければ失せろ」
と、俺の後ろでハム太を抱いてるクロに忠告する。
おっ、こんなことやってる割には紳士的?
リーダーっぽいジンさんはストイック系?
怯えてるようにでも見えるのかな?
実際にはありえんけど。
「ちっ、せっかくのお楽しみが・・・」
身長は普通だけど、がっしりしつつ小肥りな感じの男だ。
こいつはウォッカ(仮)だな。
こっちの奴は欲望丸出しですね。
なんか俺、思った以上に落ち着いてます。
まあ、中層や下層の魔物に比べれば威圧感は無いに等しいし、大した脅威でもない。
でも、怪我したら嫌だからな。
身体に張り付く様な結界を襲撃者に気付かれないように、こっそりとマントの中に展開する。
かなり上等な装備を付けてるので、無駄かも知れないが念のためだ。
「黙ってないで何か言ったらどうだ? 舐めてんのか? それともビビって声も出ねぇのか? ああん!」
意気がるウォッカさん。
暗殺者っぽい格好だけど、柄の悪いチンピラみたいだ。
舐めてるというか、対応に困ってる?
この町の探索者が仮装した嫉妬マスクズなら下手に大怪我させたりすると、もしかしたら後で面倒になるかも知れないと思ったけど、明らかにただの不審者だからな。
流石にこの状況で正当防衛が認められないってことはないだろう。
そうだ!
こういう時こそ長年培われてきた魔導師ロールプレイが活躍する時!
「くくくっ、孤高にして万象を司る我、大魔導師アルス・マグナがこの程度の数に囲まれたくらいで怯えると? くくっ、ははははっ! 良い、良いぞ! その身の程を知らぬ滑稽さに免じて、今退くなら見逃してやろう!」
あっ、思ったよりテンション高い。
まだ完全には酔い醒めてないや。
いや、いつもこんなもんか?
「なっ、テメエ!」
ウォッカさん、直情型ですね。
こいつは暗殺者じゃないな。
「渡す気はないと?」
おっ、ジンさんはまともな対応だな。
寡黙で克己的なイメージにぴったりだ。
まあ、暗殺者紛いの襲撃者にまともってのも変だけどな。
「手紙など知らぬがな。持っていたとしても、貴様らに渡す謂われはない」
「そうか。では、気は進まんが力ずくで奪わせて貰おう」
と、ジンさんが黒塗りの直刀を抜く。
それを合図にウォッカさんもでかい戦斧を構え、周囲の黒ずくめたちが戦闘体勢に入る。
場が一触即発の緊張感に包まれる。
対人戦は初めてか。
人殺しの覚悟はまだないなぁ。
どうしよう。
あっ、ゴブリンとオーク、ピーちゃんが殺っちゃってたや!
今更だね!
黒ずくめといったら、ねぇ?
嫉妬マスクのネタ分かる人!
はい!(筆者)




