第29話 ドラゴン(二匹目)はドジっ子ですか?
あ、あー、テステステステステス。
ただ今マイクのテスト中。
本日は晴天なり。
いっつ・ふぁいん・とぅでい。
It's fine today.
えー、異世界はダンジョンの最下層。
こんばんわ、駆け出し探索者のアルス・マグナです。
昨日からダンジョンに籠ってますので、天気は判りません。
ぱくぱくと口が動いているのですが、声が出てないです。
厨二病のぼっちDTには、いきなりの美少女の全裸は刺激が強過ぎると思います。
しかも、あっちの世界の標準でも極上の美少女です。
アイドル顔負けってやつです。
ばかでかいドラゴンさんが、いきなり変身したとですよ?
角と尻尾がありますが、それ以外は普通の少女にしか見えません。
さっき、何百年とか言ってたので成年、成体? それとも老体? なのでしょうか。
はなぢぶぅ
と、情けない姿を晒しております。
まじんぶぅ
ではありません。
刺激的な事で鼻血が垂れるのって、本当にあるんですね。
フィクションの中だけだと思ってました。
『どうしたのですか? マスター?』
「いや、いいから服を、服を着てください!」
思わず素です。
こんな状況で魔導師ロールプレイなんて無理です。
「ああっ、これは失礼しました。何分久しぶりなので、人種の風習を忘れていました!」
「ど、ドラゴンって、ひ、人にもなれるんですね」
「ある程度長生きすれば、興味本位で人種の言葉や化ける魔法を覚えたりはよくありますね。そのまま嵌まって、子孫を遺した者もいます。では、少し失礼して、宝物庫にある装備を着て参りますね」
なんか気になる発現もあったが、今はいい。
「そ、そうしてください。マジで。すぐに。ちょっぱやで!」
「あっ、はい」
俺の勢いに戸惑いながらも、クロティルドさん--クロは、背を向けて広間の奥に消えて行く。
ツンとしたお尻と尻尾がふりふりする後ろ姿も、それはそれで刺激的だった。
背中のラインが素晴らしくエロいです。
ちょ、ちょっと勿体ないなんて思ってないんだからね!
チェリーには刺激的過ぎるからね!
妄想力には一家言があったはずですが、実物を目の前にすると全部吹っ飛びました。
今の内に平常心平常心。
よし、こういう時こそ癒し系に頼ろう。
ピーちゃんとハム太はどこだ?
そう言えば、ずっと静かだったよな?
きょろきょろと探してみる。
二匹の癒し系さんたちは、丸くなってすやすやと寝ていやがりました。
静かなはずですね!
†
クロが戻って来る頃には、寝てたピーちゃんたちを起こして、もふもふした俺は平常心を取り戻しました。
「どうでしょうか、マスター。少し古いですが、前の棲み家を襲ってきた冒険者とやらが遺した逸品です」
「似合ってると、思う」
全裸でも美少女だったけど、紅に輝く軽鎧姿は、彼女の茶髪に相まってなんか神々しい感じだ。
裸じゃないからちゃんと直視できるし。
ここ大事。
狩人職のエマニュエルが着てた服装に似てるけど、ランクがひとつふたつ上なんじゃないかな。
ドラゴン討伐に行くくらいだから、上位冒険者だったんだろう。
どんな人たちかは知らないけど、彼女らの末路は怖くて聞けない。
「では、宝物庫を案内しましょう。すべてマスターのものです」
「ん、ああ。行くか」
さっきはそれどころじゃなさ過ぎたからなぁ。
ダンジョンクリアの成果のことなんて、すっかり忘れてた。
美少女の裸体だけで、もうお腹いっぱいです。
お腹いっぱいで・・・
すっげぇ!
何これ!?
小部屋、と言ってもドラゴンの巨体が数匹は入っても問題ないくらい広さがある洞窟みたいな場所に、財宝の山がありました。
成年雑誌の裏にある、札束風呂でうはうはってレベルじゃないです。
金銀財宝はもちろん、高そうな装備品によく分からんキラキラしてる謎オブジェとかもある。
これ、あっちの世界でも国家予算くらいあんじゃね?
『キュイ!』
『ガウゥ!』
ピーちゃんたちにもお宝の凄さが分かるのか。
分かるのか?
あっ、ピーちゃんはドラゴンだから本能で分かるのかも。
ハム太は、ノリかな?
「カルマ様やガリア殿に装備できるものは少ないと思いますが、マスターには良いものがあるでしょう。失礼ですが、今着ていらっしゃる物はあまり上等な装備ではなさそうですし」
クラウディアさんを助けた報酬で、グロニゲンの街で買った初心者装備ですからね。
反論できん。
一週間も着てない大して思い入れがある装備でもないから、その気もないけど。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「本当にこれ貰っていいのか?」
新装備を纏った俺は、確認するように聞く。
「もちろんです。敗北を認めて尚、宝に固執するほど狭量ではありません」
クロティルドさん、かっけぇ!
俺みたいな小物には言えないことを言う。
そこにシビれる憧れるぅ!
「カルマ様に相対して、命があるだけ幸運です・・・」
あっ、ボソッと呟いたけど聞こえちゃったよ。
やっぱり命あっての物種だよね。
今、俺が装備しているのは、身長より長いくらいの長杖に魔導師っぽいローブだ。
長杖は木製で、先の方に高そうな宝珠が付いている。【鑑定】すると、【竜玉の杖[LG]】と出た。
ローブは光の反射で色合いが変わるのでちょっと派手だけど、高級感があって成金とか下品な感じはしない。
これも【虹色蜘蛛の外套[LG]】と表示された。
蜘蛛装備か。
そう考えるとなんか嫌だな。
まあ、蚕の糸が絹糸だと思えば甘受できるか。
でも[LG]ってなんだろうな?
[C]はコモンで一般品質の安物って武具屋のおっちゃんが言ってたな。
コモンの次、上とかってなんだ?
「クロ、ステータスの装備に[LG]って書いてあるんだけど、これ何? 」
「それは〝伝説級〟と呼ばれる等級ですね。確か下から順に、〝低級〟〝中級〟〝上級〟〝特級〟〝特上級〟で、その上が伝説級ですね。今の時代でもそう呼ばれているとます。良い品であることは間違いないですね」
流石に長生きしてるだけあるな。
クロがクラウディアさんに続く説明キャラの称号を与えよう。
言うと嫌がるかも知んないから、内心で。
つーか、一気に五段階もアップか。
ドラゴンの財宝、パネェな。
あっ、普通なら魔王か四天王クラスなんだっけ。
この世界に来て遭遇したドラゴンってピーちゃんとクロだからな。
なんか微妙だ。
俺だけじゃなく、ピーちゃんとハム太にも補助系の首輪と耳飾りを装備してもらった。
ピーちゃんは【飛翔の首輪[LG]】と【戦女神の耳飾り[LG]】、ハム太は【剛力の首輪[LG]】と【韋駄天の耳飾り[LG]】だ。
この世界にいるのか、韋駄天?
仏教の神様とかだよな?
意訳か?
クロの見立てで、俺の装備と合わせて二匹の装備もなんとなくお洒落な感じに纏った。
ドラゴンと言えども流石は女性だな。
でも、クロは恐れ多いと付けたがらなかったので、俺がそのふたつを付けてあげると、二匹とも嬉しそうに駆け廻っていた。
これ以上強くなってどうすんだ?
という疑問は心の奥に仕舞っておいた。
あと、これは言わねばなるまい。
やっぱりありました!
ザ・アイテムボックス!
その名も【次元鞄[UR]】。
これは特上級で、家一軒分くらいの質量が入れられる物だ。
クロの受け売りなので家の大きさは不明だけど。
空間の広さが上限なので、重量は関係ないらしい。
対象に触って少量の魔力を流せば勝手に収納されるので、便利なことこの上ない。
ステータスみたいに一覧もちゃんと見れるのが嬉しい。
敢えて難を言えば、一瞬で仕舞ったり取り出したりするのは難しそうなので、戦闘中に装備を換装するとかは出来なさそうだ。
適当にピックアップした装備品や貨幣なんかの財宝は次元鞄に入れて、残りはそのままにして行くことにした。
第三十階層まで攻略されることはそうそうないだろうしな。
入れた物だけでも小国が買えそうな勢いだけど。
既に資産が強くてニューゲーム状態?
別に魔王と戦う予定も戦争に参加する気もないですよ?
ん?
そういえば。
「それで、ここの最下層はどうするんだ? クロが俺たちと来たら、階層主が不在にならないか?」
ふとした疑問が出たので、クロに聞いてみる。
「そうですね。ミスリル・ゴーレムでも置いておきましょう。下層のボスとしては丁度いいでしょう」
「はい? 第十階層で出たアレが?」
「は? あそこの階層主はロック・ゴーレムですが?」
「えっ?」
「えっ??」
なんとも言えない空気が漂う。
「・・・もしかして、間違えてました?」
おい!
まさかのドジっ子かよ!
クロは説明キャラ兼通訳兼ドジっ子?




