第25話 はじめての階層主です。
第九階層も難なく抜けた。
ついに初の階層主がいる第十階層だ。
長かった--訳でもないが、ちょっとした感慨深さがある。
流石に階層主を瞬殺ってことはないだろうから、慎重に挑む事にする。
あり得ないくらいのスピードでさくさく攻略してると言っても、歩き疲れはあるので第九階層の最後で休息を取る。
「恒例になりました、第三回異世界でどうする会議~」
『キュキュー!』
『ガゥガゥ!』
ぽふぽふぽふ
ぽんぽんぽん
ピーちゃんとハム太が手を叩く。
やはり音はしない。
「さて、参加者にハム太くんが増えたところで、今日の議題は『階層主とどう戦うか?』だ!」
『キュイ!』
『ガウゥ!』
「えー、まず、事前情報で階層主がゴーレムだということは分かってます。ロック・ゴーレムです。岩で出来てるらしいですが、三メートル以上の巨体でかなりの硬さがあるようです」
『キュ!』
『ガウ!』
階層主は大体一月くらいで復活するらしく、三人娘も毎回苦労しているらしい。
倒すことは出来ても、怪我や体力の回復で一週間くらいは休養し、残りの期間で以降の階層攻略をするけど、第十五階層くらいまで行くと魔物が強くなる上に、こいつが復活するので面倒とのことだ。
下位の治癒、回復魔法では完全には治らないそうだ。
あれ?
ピーちゃんの神聖魔法ってもしかしなくても凄い?
最近は他のパーティーとの合同で階層主を倒して余力を持って進んでるけど、町に戻った時の合同したパーティーからのお誘いが面倒で、単独で倒すのとどっちがマシか悩みどころなんだと。
美人美少女の三人組だから、他の男性パーティーからすると垂涎ものなんだろうな。
酒場での殺気も頷ける。
でも、必死過ぎね?
美少女ゲームとかだと、そんなやつらはまず立ち絵どころか名前すらない雑魚キャラですよ?
精々《せいぜい》活躍するのは、逆ギレして襲いかかったあげく、主人公に邪魔されてフラグ立てる手伝いしちゃうとかね?
そんなことはどうでもよろしい。
「ということでゴーレム対策ですが、ゴーレムを倒す時には、〝emeth(真理)〟と書かれている e の文字を消すと〝meth(死)〟となって滅びるというのが定番ですが、この世界のゴーレムには書いてないみたいです」
『キュイ?』
『ガウ?』
君たちは知らんわな。
歴史知識というより、厨二知識だ。
誰かが造ったというより魔石が変化するんだから、文字が無くても不思議ではないか。
因みに、ユダヤ教の学者が造るらしいぞ?
「なので、今まで通り火力で圧倒しようと思います。ピーちゃん」
『キュ!』
右の翼を勢いよく上げる。
「階層主の部屋に入ったら、すぐに遠距離から波動砲を撃って牽制してください」
『キュイ!』
「ハム太は、ピーちゃんが足止めしてる内にゴーレムに接近して、足下に噛み付くなり体当たりするなりして動きを止めてください」
『ガウ!』
尻尾を勢いよくふりふりしてる。
「で、動けなくなったゴーレムに、俺の魔法で留めを差します。質問はありますか?」
二匹とも揃って首を振る。
ないようだ。
まあ、あっても言葉分かんないけど。
俺の言葉が通じてるのが不思議だね。
やっぱりファンタジー補正なのかな?
†
第十階層。
大きくて豪華な金属製の扉の前に立つ。
ふぅ
深呼吸。
「よし! 開けたら作戦通りに速攻で倒すぞ!」
『キュ!』
『ガゥ!』
いい返事だ。
そして、俺は運命の扉を開ける!
ガガガガガッ
金属と岩が大きな音をたてて擦れる。
中にいるはずのゴーレムも侵入者に気付いたことだろう。
完全に開け放たれる前に、ピーちゃんが飛び立って扉をくぐり抜ける!
続いて、ハム太が勢いよく地を蹴って飛び込む!
当然、俺も続く!
さあ、気合いを入れて階層主討伐だっ!
†
んー、まあね?
頭の隅ではこうなる気もしてましたけどね?
一応、強敵って聞いてましたしね?
でもさ?
なんか納得行かないよね?
ハム太に続いてボス部屋に入った直後、ゴーレムは轟音と共に崩れ落ちました。
ピーちゃんの一撃で。
少し前方に佇むハム太も、活躍出来なかったからかなのか、こちらを振り向いてシュンとしてる。
『くぅん』
と、仕草がなんか犬っぽい。
『キュイ!』
反対に、ピーちゃんは背を反らしてお決まりの自慢顔だ。
階層主まで瞬殺ですか。
しかもなんか--気のせいかも知れませんが、あのゴーレム金属ちっくな光沢があるんですけども?
決して、聞いてた土とか岩っぽくはないですよ?
あっ、大きめの魔石と、なんかの金属のインゴットのドロップアイテムだ。
なんかありがたみねー。
もちろんありがたみがあろうとなかろうと、ありがたく頂戴して無駄にはしませんけどね?
探索者は生き汚なくないといけないのだ!
「ピーちゃん、よくやった。凄かったぞ。ハム太もちゃんと指示に従ってて偉いぞ」
二匹の頭をちょっと強めに撫でると、俺のなでなでに目を細める。
うん、凄いし偉いぞ!
俺は君たちを友達に持てて幸せだ!
しかし、第十階層を攻略したら一度町に戻るつもりだったけど、まだ半日も経ってない。
ダンジョンって言っても、マップを見ながら階段まで一直線に攻略し、魔物を瞬殺してたら、各階層毎に三十分も掛かってない。
三大迷宮とかだったらもっと広かったりするのかな。
行くとしてもまだ先だろうから、今はいいか。
一応、ユスティナたちに付き合って貰って、三日くらい分の野営セットも買って持ってきたし。
よし。
もう少し進んでみるか。
†
そして、第十一階層に降りてから数時間。
第十九階層も攻略間近です。
ちゃんと攻略しろよ!
往年のダンジョン系の作品に謝れ!
と、当の俺でも叫びたくなりました。
階層主戦で良いとこ見せられなかったからか、張り切ったハム太の無双がパネェです。
ピーちゃんが攻撃する隙もなくて、ちょっと困ってる感じ。
マップがなくなって攻略ペースが落ちるかとも思ってたんだけど、ピーちゃんの直感?とハム太の野生の勘?でほとんど迷う事もなく進んだので、無問題でした。
もうこうなったら、第二十階層の階層主戦に行っちゃいましょう!
行くっきゃないでしょう!
あはははっ(渇いた笑い)
あらすじでも書いてますが、主人公はまともに迷宮攻略はしません(汗)




