第24話 異世界にも正座はあるようです。
孤高にして万象を司る魔導師、という厨二設定三年目を迎え、よく分からない誰かによって異世界に召喚された15才高校生の、厨二ネームが転じて異世界名になったアルス・マグナです。
そんな俺は今、半壊した林の地面に正座をしています。
目の前には、仁王立ちするフィロメナとその仲間たち、ユスティナとエマニュエルが左右に並んで立っています。
二人は困惑した表情ですが、フィロメナ先生は憤怒の表情をしています。
もしかして、近年の創作物によく登場する七つの大罪でも宿ったのでしょうか?
「マグっち、反省」
「うむ」
余計なことを考えているのが分かったのか、フィロメナ先生が冷やかな声で言いました。
美人や美少女って、顔の造形が整っている分、それが崩れると恐いですよね?
「フィロ、どうにも信じられないのだが、これをマグナがやったというのか?」
信じられないと、ユスティナが言う。
「ん」
即座に肯定するフィロメナ。
「昨日の話も聞きましたけど、俄には信じられませんね」
エマニュエルもだ。
そりゃそうですよね。
数日前までは空気もかくやという、戦闘時の存在感の無さでしたから。
「弟子の不始末は、師匠の不始末」
「う、うむ。すまん」
「まあ、人的被害は幸いにもなかったわけですし」
「マグナも反省しているようだしな。赦していいんじゃないか」
ああ、お二人が女神に見えます。
あざっす!
「むう」
あれから--俺がやっちまった後、しばらくして轟音を聞き付けた三人が駆けつけて来た。
響いてきた轟音と消し飛んだ林に町は騒然として、警戒体制になってるらしい。
彼女らは今、町でもトップクラスのパーティーだから、先遣隊として調査に訪れた。
俺にとってこれは幸なのか不幸なのか。
現場に呆然と佇んでいた俺を見つけるなり、事態を理解したフィロメナに正座させられた。
で、今。
超、足が痺れてます。
現代っ子の俺は正座なんて慣れてないので、かなりキツい。
「正直に話したところで、誰も信じないわよねぇ」
「だろうな。宮廷魔法士でもこんな魔法は使えないだろう。倫理的にではなく、実力的にな」
「むむう」
フィロメナ先生はまだ不機嫌なままだ。
「正直に報告して、後の判断は町の人たちに任せるしかないでしょうね」
「そうだな。誤魔化すにしても、ドラゴンが現れたぐらいしか言い訳が思いつかない」
「もっと、大騒ぎに、なる」
「そうねぇ」
「そうだな」
と、三人は長いため息をついた。
†
結論から言うと、町に戻った俺にお咎めはなかった。
騒ぎにはなったが、特に被害という被害がなかったからだ。
長老さんは「ふぇふぇふぇ」と笑い、若いもんは元気でいいのぅ、なんて言ってた。
器が大きいのかボケてんのか判断に迷うところだ。
ただし、ペナルティの代わりに、ダンジョンの攻略を依頼された。
そんだけ力が有り余ってるならちょうど良いだろう、とのことだ。
何でも、十年くらい前に上位の探索者パーティーがふらっと現れて第二十階層まで攻略したんだけど、その階層のボスモンスターには歯が立たなかったらしく、何度か挑戦した後に諦めて去っていったらしい。
去り際に「アイ・シャル・リターン」と、言ったとか言わないとか。
それ以降は今まで誰も第二十階層まで到達出来ず、現在この町でもトップクラスの三人娘でも第十五階層までが限界らしい。
だから長老としては、第二十階層が最下層なのか、もっと深い階層まであるのか気になるらしい。
一般的に、ダンジョンの深さは富の埋蔵量に比例するから、町にとっても知りたい事のようだ。
万が一のことを考えて、大氾濫の想定される規模を国に報告するのも大事とのことだ。
これは災い転じて福と成す、というやつか?
どっちにしろダンジョン攻略は続ける予定だし、これは町のトップにお墨付きを貰ったようなものだ。
攻略出来なかったからと言って罰則がある訳じゃないみたいだしな。
よし、ここは新規一転、ダンジョン攻略に勤しむことにしますか!
やっふぅ!!(意味不明)
†
ということで、四日ぶりにやってきましたダンジョン!
ダンジョンダンジョン、愉快なダンジョン♪
ダンジョンダンジョン、深いねダンジョン♪
ダンジョンダンジョン、俺たちの~、(溜めて)ダンジョン!(ちゃん♪)
と、俺は酒場で宴会した時に誰かが歌ってた歌を口ずさむ。
『キュ、キュ!』
『ガゥ、ガゥ!』
ピーちゃんとハム太も合わせて鳴いている。
くうぅ、いつもながら可愛いぜ!
帰ったら恒例のもふりタイムだな。
ふふっ、第一級モフリストの腕が鳴るぜ!
既に俺たちは第九階層の攻略中だ。
えっ、ダンジョン攻略はしょり過ぎだろうって?
だって仕方ないじゃん!
ピーちゃんの無双は前回同様だし、ハム太はピーちゃんにも負けず劣らず魔物を蹂躙してるし、更に加えて、俺の魔法が炸裂してるんだから。
流石に懲りたので、威力はフィロメナに教えてもらった中位魔法を少し強くしたくらいに押さえてある。
それでも上位魔法並みの威力はあるっぽい。
なので、遭遇する魔物はまず瞬殺。
たまに初撃を躱されても、二撃目を避けれたやつは未だにいない。
第十階層まではダンジョンの入り口にいた、兵士もどきの商人から購入したマップで楽々と階層クリアしてる。
普通はマップがあっても魔物に遭遇して、実力に応じた階層で苦戦する訳だけど、俺たちはまだまだ平気そうだ。
逆に、レアモンスター出て来ないかなぁと、一般の探索者が聞けば唖然としそうな期待の仕方をしてるくらいだ。
でかスライム--ヒュージ・スライムで第十五階層以降のレアモンらしいからな。
あれでもピーちゃんが初見で瞬殺してるし。
まあ、油断し過ぎて怪我したくはないから、警戒は怠ってないよ?
ってゆーか、ピーちゃんもすげえけど、ハム太の索敵能力がパネェ。
何十メートルも先の見えない敵を補足して警告してくれるので、後方どころか前方すらも警戒しなくていいレベルだ。
ダンジョンと言ったらやっぱり罠!
なんだけど、第五階層以降にたまにある罠は、ピーちゃんとハム太の野生の二重チェックですべて稼働前に発見された。
えっ、肝心の罠の解除はピーちゃんたちには出来ないだろうって?
よくぞ聞いてくれました!(誰が?)
俺の【鑑定】スキルって物品限定だけど、何の罠か分かるんだよ。
これ。
買い物で取れたくらいだから、駄スキルかと思ってました。
ラノベ的な鑑定というよりは、ダンジョンゲーム系の優良スキルみたいな感じです。
鑑定さん、侮っていてすみません。
なので、解除は出来なくても発見次第俺が何の罠か調べて、避けて通ればいいので問題ない。
因みに、ダンジョンという期待を裏切らずに宝箱もたまにあるんだけど、これも鑑定で中身と罠が分かるので、大体スルーしてる。
最初は無駄にテンション上がりまくってたけどな。
なんたって宝箱だからな。
当然だ。
ただ、上の階層じゃあ大した宝物なんてないからね。
一般の探索者からすればそこそこいい稼ぎになるのかも知れないけど。
俺たちの場合は、魔石とドロップアイテムだけでもうはうはだしね!
あっ、そういやドロップアイテムまだ一度も売ってないや。
前回の分は宿に預けっ放しだし、戻ったら考えよう。
と、順調に攻略を進めてる最強パーティーの俺たちですが、ちょっと言っていいですか?
何でまだ俺は荷物持ちメインやねん!
ピーちゃんたちには回収とか運ぶの無理だけどさ!
強力な魔法覚えても立場変わらずかよっ!
責任者出てこいやぁ!
やぁやぁやぁ(エコー)
仕事で堅めの文章はそこそこ書いてきたけど、まともに小説書いたのも、公開したのも初めてなんだよなぁ。
今更ながら緊張してきた(遅)




