第20話 アイデンティティーが激減しました。
異世界生活も四日目を迎えた異世界名アルス・マグナです。
夕刻から始まった昨日のどんちゃん騒ぎは朝方まで続き、絶賛二日酔い中です。
二日酔いは流石に初体験です。
酔い潰れて朝に酒場の筋肉マスターに起こされました。
筋肉バスターではありません。
色んな探索者に声を掛けられていたけど、ほとんど覚えてないです。
マスター曰く、女性もいたらしい。
くっ、フラグのチャンスを逃したかも知れん。
騒ぎまくってた探索者たちだけでなく、フィロメナが無い色気で俺をからかい、エマニュエルがエロくしなだれ、意外にも酒に弱かったユスティナは真っ先に酔い潰れて寝てました。
俺も日付けが変わる頃には潰れてたらしい。
まさに混沌だった。
マスターに起こされた後、水を貰って一息ついた俺と三人組はそのまま別れ、宿屋の竜の尻尾亭に戻った。
今日の分の宿代を支払い、ピーちゃんを抱き枕にして昼過ぎまでがっつり寝た。
退廃的ですな。
朝御飯は食べ損ねて残ってなかった。
昨日聞いた通り宿屋でランチはやってないらしく、遅い朝食を食べたいからとおかみさんに昼でも開いてる定食屋を教えてもらった。
お薦めの近場の定食屋に入ると、昨日の酒場にいたらしい探索者パーティーから声を掛けられた。
覚えとらんので適当に対応した。
すまんこってす。
†
昼食後、俺は町外れの林に来ていた。
林の中のちょっと開けた感じの場所だ。
別れ際に三人と相談したら、フィロメナ先生の魔法講座は明日になったので、ピーちゃんと昨日の反省会だ。
ピーちゃんは大活躍だったから、主に俺の反省だけどね!
ダンジョンに挑戦することで頭がいっぱいになり、ほとんど準備しなかったことを後悔したのだ。
ゲームでもいきなりじゃゲームオーバーコースだよね。
猿に習って壁に手を付いて反省しました。
自虐も文化です。
「第二回異世界でどうする会議~」
『キュー!』
ぽふぽふぽふ
切り株に座ったピーちゃんが初日のように翼で手を叩くが、やっぱりパチパチと音はならなかった。
「今日の議題は、『俺の戦闘スタイルをどうするか?』だ!」
『キュイ!』
ピーちゃんがいてくれて良かったぜ。
ひとりだと流石にぼっち通り越して危ない人認定されるからな。
まあ、ピーちゃんは喋れないけど。
「昨日はピーちゃんが大活躍でした。はっきり言ってボロ儲けです。はっきり言って、半年間は寝て暮らせます」
『キュイ!』
ピーちゃんが勢い良く片翼を上げ、胸を反らして答える。
「しかぁし!」
『キュイ?』
ピーちゃんは小首を傾げる。
「このままでは俺の立場がありません!」
『キュイィ』
ちょっと寂しそうだ。
くっ、ここは心を鬼にして!
「ということで、明日フィロメナに魔法を習う前に、やれることをやってみたいと思います」
『キュ!』
「魔法はまだ出来なくても、ピーちゃんの召喚には成功してます」
『キュイ』
こくこく
と、頷くピーちゃん。
「という事で、スキルにもある【召喚術】を改めて試してみようと思います」
『キュイ!』
あっ、嬉しそう。
仲間が増えるかもしれないからだな。
さて、ピーちゃんが飼育してた小鳥だから、同じように世話してた子たちにしよう。
んー、どの子にしようか。
両生類とか水棲生物は移動で不安だから避けておこう。
水槽とかもないし、帰還させられるかも分からん。
玉モンみたいにみたいにしまっておけるなら問題ないんだけど。
とすると、ピーちゃんみたいな小動物系か。
犬猫は流石にいなかったしなぁ。
あっ、飼育小屋の兎とか?
いや、あれは学校で飼ってたからだからちょっと違うかな?
うーん
よし、決めた!
またピーちゃんみたいにこっちの魔獣に化けるのか、そのまま召喚されるのか。
試してみねばなるまい!
「開け異世界の扉! 召喚、ハム太!!」
片手を天に向けて掲げると、周囲が仄かに煌めいている。
「おおっ!」
徐々に広がり、煌めきがまたあの時みたいに光の粒子となって集まる。
ピーちゃんの時とは模様が異なる魔法陣が浮かび上がり、閃光が辺りを白く染め上げる。
やば!
そういやピーちゃん呼んだ時も眩しかった!
気が付いて、すぐに瞼を固く閉じる。
「ピーちゃんも目を瞑って!」
『キュ!』
多分伝わったと思う。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
しばらくして、瞼に当たる光がなくなった。
恐る恐る目を開けて、視界を確認する。
ピーちゃんの時は間近ででかいドラゴンだと思ってビビったからな。
慎重に、慎重に。
あれ?
いない?
きょろきょろと辺りを見回す。
何も見当たらない。
「失敗、か?」
『キュ!』
切り株の上のピーちゃんが俺の足下を見てる。
ん?
釣られて首を下に向ける。
『くうぅ、くうぅぅ』
足下には、丸まって寝てる小動物がいました。
まる。
†
『ガウ、ガゥ』
『キュ、キュイ』
二匹の小動物がなんか話してるようです。
召喚には成功しました。
でもね?
やっぱりというか、何か違うモノが呼び出されました。
ジャンガリアン・ハムスターのハム太を呼んだつもりだったんだけど、召喚されたのは猫科の王者の一角でした。
つまりは虎です。
白いです。
ホワイトタイガーなう!
とか、プチSNSで呟きたくなりました。
一般的な秋田犬くらいの大きさなのですが、体格はそれよりもしっかりしてます。
某サムライアニメの白虎の小さいのを想像してください。
えっ、古いですか?
まあ、俺も本作は見ていない。
名作アニメ番組でちょろっと見たのが記憶に残ってるだけだ。
仔白虎ですね。
俺が呼んだのはジャンガリアン・ハムスターですが。
ハムスターって鼠とかと同類で齧歯類じゃねぇの?
白いのは元々だけど、何で虎?
虎って哺乳類じゃなかった?
まあ、ピーちゃんのことがあるからそこまで驚いてはいないけどさ。
何か納得いかない。
「ハム太?」
『ガゥ!』
あっ、デジャヴ。
ピーちゃんとの会話?を中断して、嬉しそうにハム太が飛びついてきました。
がふっ
ううっ。
昨日の食べた胃の中のモノが飛び出しそうだ。
『ガウガウ!』
ふおぉぉ!
体格がいいから犬よりもずっしりくるけど、毛並みがピーちゃんとはまた違う感じでビューティフォー!
モフラーの魂が、モフリストの矜持が震えるぜ!
エクセレンツ!
†
しばらくハム太のもふもふを堪能しました。
犬っぽいような猫っぽいような、とにかく至福でした。
気を取り直してステータス確認してみよう。
きっと、ただの虎じゃないんだろうなぁ。(諦観)
「ステータス・オープン!」
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ガリア(ハム太)
種族 白虎種
性別 オス
職業 アルス・マグナの従魔
階級 聖獣(幼体)
特技 獣牙、獣爪、咆哮、威圧、跳躍、瞬間加速、麒麟、属性魔法、魔力適性、魔力耐性、精神適応、異常耐性、感知、自己治癒、長命
加護 獣神
言語 獣語、神獣語
称号 境界を越えし者
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うっわぁ、やっぱりチート?
ピーちゃんとあんまり変わんねぇ。
【麒麟】ってなんだろう?
まさかビール関係とかじゃないよね?
あっ、ちょっと待て!
これって本末転倒じゃないか!?
チートさんが増えて俺の存在価値がまた減ったよ!!
チートキャラ召喚したら当然じゃんか!
先に気付けよ、俺!
ORZ
ジャンガリアン・ハムスター飼ってたことがあったので。




