第101話 大富豪アルス・マグナ。
「どういうことですかな? まさか力づくで私たちを排除するとでも?」
ざざざっ
猫さんを追っかけていたチンピラ冒険者たちが、男の前に立ち並び各々の武器を構える。
意外に統制取れてますね?
「院長殿!」
「あっ、はい!?」
「借金の額は残りどれくらいなのだ?」
「えっと、利子も増えてるので細かい金額は分かりませんが、多分、真銀貨で十枚くらい、です・・・」
院長さんの声がしぼんでいく。
確か真銀貨は一枚で帝国金貨十枚相当だから、金貨で換算すると百枚。
金貨が一枚で一人の月収程度らしいから、現代の日本の感覚だと十五万から二十万くらいか?
だと、真銀貨十枚は千五百万から二千万・・・
確かにまともな方法で稼いで返せる金額じゃないな。
それこそ、冒険者か探索者になって一山当てるくらいしか方法はないだろう。
「ふむ、真銀貨で十枚か。では、これで足りるな」
と、懐から出すフリをして【収納】から旧帝国金貨を一枚だけ取り出す。
「はっ、金貨一枚でどうしようってんだ?」
「アニキぃ、こいつ、頭がおかしいんじゃねぇですか?」
「ん? ああ、分かったぞ! その金貨でこの爆乳女を最初に一晩予約ってぇ訳だ! こりゃいいや! さっそくお客様が入ったぜ! 稼ぎが期待できそうだ!」
「「「げははははははっ!」」」
あー、やっぱりこいつらじゃ旧帝国金貨の価値は分からんか。
「「・・・・・・」」
いや、ちょっと、そこの神峰(暫定)さんと猫さん?
チンピラの発言を真に受けて俺を蔑んだ目で見るのやめてくれませんかね?
俺はそういう視線で喜ぶ変態さんではありませんよ?
まあ、チンピラ冒険者たちはともかく、商会の人間らしいまとめ役の男はどうかな?
「それは、まさか?」
おっ、やっぱり分かりますか。
これなら交渉の余地はあるでしょう。
「んにゃ?」
「えっ?」
男の動揺を見て、蔑んだ目はとりあえず引っ込みました。
ほっ
「部下共は分からんようだが、お前が商会の人間ならば分かるのではないか?」
「見せて頂いても?」
「構わぬ」
旧帝国金貨を男に向かって差し出す。
「だ、旦那?」
「どうしたんですかい?」
「予約はなしですか? うひゃひゃ!」
冷やかす冒険者たち。
「お前たちは少し黙っていろ!」
「「「は、はいっ!」」」
部下を怒鳴った後、男が俺の手から旧帝国金貨をそっと掴み、眼鏡の位置を直して見定める。
「ふぅ。本物のようですね」
「そうだな」
しばらくして深い息を付くと、金貨を俺に返す。
「その金貨で借金の証文を買い取ると? 見も知らずの彼女たちのために?」
「うむ、そうだ」
「お人好しですねぇ。オークションに出せば借金の額を簡単に超えますよ? 個人的には好感が持てますが、この場所とその女性にそれほどの価値がありますかな?」
「まあ、それを決めるのは我だからな。お前には関係がないだろう? それとも、取り引きはしないか?」
「確かにそうですね。しかも、そんなものを出されては商売人として否はありませんな」
「それは重畳・・・」
今度は俺がさっきの言葉を返すと、まとめ役の男はにやりと笑う。
「ふふっ、外見に似合わず、というやつですねぇ。貴方のような方がこの街にいるとは知りませんでしたよ」
「我らは昨日、この街に着いたばかりだからな。当然だ」
「それはそれは。運がいいのか悪いのか・・・」
複雑な表情をする、まとめ役の男。
「流石に全額払えるとは思っておりませんでしたからね。証文は私の商会にあります。ご足労を願っても構いませんか?」
「うむ、行こう。猫殿!」
「は、はいにゃ!」
「話が済んだらまた後で来るからな。院長殿としばらく待っていてくれ」
「何がにゃんだか分からないんにゃけど、待ってるにゃ」
「えっ? あの? 何が? どうなって?」
孤児院の院長さんは戸惑って、おろおろしてます。
両腕の間で形が変わる双峰が、凶悪な自己主張をしていますが、残念ながら魔法でも戦闘力が測れません。
ぜひとも乳測定魔道具が欲しいです。
「カルマは一緒に着いて来てくれ」
『キュイ!』
と、右の翼で敬礼してから、ぱたぱたと俺の肩にとまるピーちゃん。
「ガリア、アルミラ、クールマはここで待機していろ。不審な者は殺さない程度に排除して構わん」
『ガウ!』
『ピュイ!』
『ミュ!』
うん
いつも通り、俺の従魔たちは良い子です。
あれ?
マグナがちゃんと主役っぽい?
でも結局戦ったり成敗はしてないw




