第87話 迷子の精霊さん。
「ふえぇ、私も精霊種様は初めて見ましたぁ」
無言でボケらっとしてて、エルメさんが居たの忘れてた。
あっ、空気仲間いた!
心の友よ!
じゃない!
精霊種のこと忘れてたよ!
だって仕方ないじゃん!
もふもふが!
新たな素敵もふもふの情報が!
くぅ
今は涙を飲んで精霊種について話を戻すか。
エルメさんなんか様付けだし、なんか稀少なだけじゃなく大層な種族っぽいしな。
新もふもふ情報については【記録】スキルに最重要の星マークを付けておこう。
チェックチェック
「で、精霊種とやらが稀少なことは理解したが、結局は人種なのか? 魔物なのか?」
「中間、でしょうか? リン様」
「そうじゃのぅ。魔物とは根本的に違うのじゃが、魔素を大量に取り込んではおるからの。妾たちに近いのではないかの?」
「そうですね。聖獣種や竜種に近いです」
と言われてもね?
俺にはキミたちの生態もよく分からんのですよ?
ピーちゃんたち--特にたまっちなんかは謎過ぎるし。
戦車型の亀なのか、亀っぽい戦車なのか?
「う、うぅ・・・」
「あっ、マグナさん! 精霊種様が起きましたよ!」
「う、うむ」
まだどう対応していいか分かんねぇ!
とりあえず人として接すればいいのか?
「ん?」
きょろきょろ
リンを見て、クロを見て、エルメさんを見てから、ピーちゃんたちに視線を移し、俺で視線を止める。
「「・・・・・・」」
視線がばっちり合い、無言の俺と精霊さん。
「ひ」
「ひ?」
「人種の男!? いやー、拐われる! 犯される! 殺されるぅ!」
いくらなんでも初対面で失礼じゃないですかね?
いや、初対面だからか?
ぶるぶると震えて丸くなる精霊さん。
あっ、言葉通りですよ?
身体を丸めるんじゃなくて、なんか丸い物体になりました。
スライムですか?
ここはこのセリフだな!
「ボク、ワルいヒトシュじゃないよ?」
「「「・・・・・・」」」
ち、沈黙が痛い。
「マスター?」
「主殿?」
「マグナさん?」
くっ
異世界じゃあ流石にこのネタは分からんか!
「ほ、ホント? 虐めない?」
「精霊種よ。マイマスターはそのようなことはなされません。聖獣の長であるリン様をはじめ、四聖獣の主たる至高のお方です」
なんか凄そうな方ですね?
どちらさまですか?
「そうじゃ。麒麟である妾の主殿であるぞ。妾の美貌にはめろめろとはいえ、節度ある方なのじゃ」
あの、いつ俺が幼女にめろめろになりましたかね?
クロの言葉で安心しかけた精霊さんが、胡乱な目付きで俺を見てますよ?
「大丈夫です! 第三百二十六代目の勇者であるこのエルメントラウト・フォン・シュパールヴァッサーが保証しましょう!」
おお!
力強い今代勇者様のお言葉です!
「何かあれば、私が守ってあげますので安心して下さい!」
あれっ?
それって俺のこと信用してないって意味ですか?
『キュ、キュイ、キュキュ!』
『ガウ、ガガゥ、ガゥ!』
『ピュイ、ピュ、ピュイー!』
『ミュ、ミュー、ミュー!』
ピーちゃんたちが何か言ってます。
「そうなんですか? 分かりました」
ぺこり
精霊さんが人型に戻り、俺に向かって頭を下げました。
「いきなり叫んでしまって、ごめんなさい」
何か素直に謝ってきました。
いい娘みたいです。
「うむ。気にしてはおらぬが、あれだけ取り乱すとは、何か事情でもあるのか?」
「そうですねー、なんでこんな場所にひとりでいたんですかぁ?」
「あの、えっと、黒狐族の勇者さまと--」
「我は孤高にして万象を司る至高にして偉大なる大魔導師、アルス・マグナだ。精霊種の娘よ」
ちょっといつもより盛ってみました。
「あの、あたしは風精族のラトランド氏族、グウィネスです」
ぺこり
「主殿の従魔である聖獣麒麟のリンじゃ」
「同じくマイマスターの従魔、ファフニール氏族の地竜王クロティルドです」
『キュキュイ』
『ガゥガウ』
『ピュピュイ』
『ミューミュ』
従魔たちも続く。
ピーちゃんたちも自己紹介してるんだろう。
「して、グウィネス嬢は何故このような場所にひとりでいたのだ? 聞くところによるとこの辺りに精霊種の集落などはないのであろう?」
「そ、そうでした! あ、あたしは迷宮都市に行かないといけないんです!」
「ふむ、不思議に思っておったのじゃが、お主は〝聖域〟近くの集落から来たのではないのか?」
「あっ、はい。聖域の外周になりますが、そうです」
「逆方向じゃの」
「通り過ぎたのではないですか?」
「・・・・・・、ええっ!!」
がくっ
あっ、精霊さんが崩れ落ちた。
「うう、やっぱりあたしは目的地に辿り着けないダメな風精族なんですぅ」
方向音痴ですか?
「風精族で方向音痴とは、これまた珍しいのぅ」
「はじめて聞きましたね」
そうなのか?
「まあ、我らはこれからその迷宮都市に行くのだ。一緒に着いて来るか?」
「えっ、いいのですか!?」
「うむ。木から落としてしまった詫びもあるしな。構わぬぞ」
「ええっ! あたしが木から落ちたのって貴方のせいなんですか!?」
気付いてなかったのか?
「我というか、こっちの勇者のせい?」
と、エルメさんに視線を向ける。
「えええっ! 勇者さまのせい!?」
この精霊さん、驚いてばかりですね?
「あっ、その・・・すみません。人がいるとは思わなくて、ははっ」
力なく笑うエルメさん。
まあ、上にいたら普通は分からんよね。
怪我もしてなかったし、道に迷う心配もなくなったんだから、結果オーライです!
書いた本人が言うのもなんだけど、この作品、まともなヒロインいなくね?




