第8話 ケモミミヒャッホゥ!(ハイテンション)
俺は今、モーレツに感動している!!
マジで叫び出したいです!
なんでってそりゃあね?
ケ・モ・ミ・ミ、キターーー!!
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
落ち着こう、俺。
ひっひっふー
ひっひっふー
いや、ラマーズ法は妊婦の出産でするものだ。
俺が今やっても意味がない。
はあぁーー
ふぅーー
肺が許す限りの空気を吸って、深呼吸。
改めて辺りを見回す。
エルフっ娘。
ケモミミっ娘。
厨二病なら一度は--いや、幾度となく夢見る楽園が今、ここに!
ビバ、異世界!
エクセレンツ、ファンタジー!!
いい加減落ち着け、俺!
†
えー、なんとか落ち着きました。
流石に反省してます。
門を潜って街に入った俺を出迎えたのは、普通の人に混ざってチラホラと、見るからにエルフや獣人といった多種族が行き交うという、そんな素晴らしい光景でした。
特殊メイクバリバリな、ハリウッドのファンタジー映画の中に入り込んだと想像してください。
少しくらいはっちゃけても仕方ないと思います。
森で遭遇したオークやゴブリンは、って?
何それ美味しいの?(てんどん)
いや、あいつらも街にいますけどね?
見ないふり、知らないふり。
見えてない見えてない。
つーか、戦争中じゃなかったの?
「クラウディア殿。森で襲っていた奴等がいるが、問題ないのか?」
「はい? 鬼人族たちのことですの?」
「うむ」
「戦争中とはいえ彼らのほとんどは一般人や商人ですわ。奴隷も多少は混ざっていますけど。街中ではまず危険はないですの」
あー、そういや魔物扱いじゃないのか。
気を付けないとな。
さらっと言ったけど、奴隷もいるんだな。
中世風なら当然いるよなぁー。
「そう、でしたね。ラグナ殿はこの辺りの知識はないのでしたわ。グロニゲンまでもう少し歩きますから、簡単に説明しましょうか?」
「そうしてもらえると助かる」
「先ほども少しだけ話しましたが、この国はデスヴォルクス継承帝国と言いますわ。この辺りは私のお父様、ベイレフェルト辺境伯が治めている帝国北部の土地ですの。一般的にはネデル領と呼ばれていますわ」
ネデルってのが地域の名前で、支配しているのがベイレフェルト辺境伯で、クラウディアさんはその娘さん、と。
異世界転移モノなんかで情報収集は生命線だからな。
心のメモ帳にしっかりと書き込んでいく。
こういう時の厨二病の、マンガやアニメ、ラノベで培った順応力はハンパじゃないぜ。
多分、ゲーム脳も活躍中なのだろう。
「数年前に五つの諸侯領と三つの辺境伯領、それといくつかの小領の盟主として現皇帝陛下が戴冠したので、旧帝国の後継を名乗っていますわ」
ふむふむ。
「旧帝国とは?」
「過去にこの大陸の過半を支配していた大帝国ですわ。旧帝国の版図に比べれば、この領土など二割にも充たない程度ですわね」
何故か少し自嘲気味だ。
ここは深入りしないでおこう--
「旧帝国の後継を名乗ってはいますが、最初に戴冠したアールヴの大帝が崩御した百年以上前に三国に分裂していますの。そのひとつが東に位置する我が国なのですわ」
と思ったけど、それが理由かな?
「そのひとつが先ほど言っていたエールという国なのか?」
「いえ、エール光輝王国は我が国とは別の国、隣国ですの。同じ森人族でも、私たち白アールヴとは異なる黒アールヴの国ですわね」
そういやさっきも言ってたな。
黒アールヴ、つまりダークエルフか。
金髪色白のエルフときたら、やっぱりそっちは銀髪褐色か?
いつか会えるのを楽しみにしとこう。
そうしよう。
「先ほどマグナ殿に助けて頂いた場所が〝大樹海〟と呼ばれている広大な森で、〝樹海線〟と呼ばれている端の端ですの」
大きな森が大樹海で、樹海線が端っこね。
さっきも聞いたけど、微妙に流してたからな。
メモメモ
「その樹海を挟んで、北にエール連合王国、北東にクルメール商協同盟がありますわ。クルメールの三国は元々は戦時協定としての一時的な協力関係だったらしいのですが、今では実質的な軍事同盟ですの」
えっと、エール連合王国がダークエルフの国で、クルメール商協同盟がオークとゴブリンの国、と。
ん?
クルメールは三国って言ったよね?
「クルメール商協同盟は豚鬼族と小鬼族の国であったな? どちらかが二か国に分かれいるのか?」
「いえ、ヴァリャーグ戦士国は豚鬼族、ディーン都市連合は小鬼族、ノルディク部族王国は戦鬼族が支配していますの」
ここ、テストに出るぞ!
なんてね。
異世界には学校もテストもないのさ!
妖怪はいないけど、魔物はいるしね!
「クルメール商協同盟とは商圏の奪い合いで、経済的な摩擦が数百年ずっと続いている感じですね。まあ、どこの国も隣国とは色々あるものですけど」
どこの世界も変わらずそんなもんか。
よし!
そろそろ覚え切れなくなってきたんで、本題を聞こう。
さりげなく、さりげなく。
「けっ、ケモ--」
じゃなくて。
こほん
「クラウディア殿。先ほどから獣人を見かけるが、彼らの国もあるのか?」
「ええ、そうですわね。ゴール光輝王国の西、大山脈の向こうには戦闘に長けた兎人族の領域がありますし、南東には羊人族の国もありますわ」
戦闘に強い兎さん?
いや、獣人なんだろうけど。
うーん、想像できん。
ぷるぷる震える愛玩動物のイメージしか浮かばない。
羊人族はやっぱり、おっとりな巨乳さんがデフォですか?
ドキドキ
巨乳のお姉さんに癒されたいっす!
国名とかスルーしていいです。