パラリンメシア「SABURO」④
佐武朗はくるみが通っている高校のサッカー部の練習を見ていた。くるみの元彼の偵察だ。
こういう時は「身体障害者」は便利である。学校のなかに入っても怪しまれない、と言うより誰も気に留めない。見えていても、あえて見なかった事にする。だから多少の悪さしても許されるから笑える。
くるみから見せてもらった元彼を見つけた。いかにもモテそうな爽やかな少年だ。
「あ、あ、あいつ、あんな澄ました顔でくるみを苦しめやがって……」
佐武朗のカリムダンサーを操る足先が怒りで震えた。
サッカー部の練習が終わる頃は、もう辺りは暗くなってきていた。くるみの元彼が自転車で交差点にさしかかった時に「黒い何か」が飛び出てきた。少年は避けきれずに「黒い何か」に衝突した。
「痛っ…何だよ、何にぶつかった?」
「い、い、いてぇ〜な〜、に、にいちゃん…」
「は⁈……」
少年は目の前に立っている、いや、座っている電動車椅子の障害者のオッサンを見上げた。
少年は最初事態が理解できなかったが、だんだん正気を取り戻した。
「何なんだよ!障害者が暗い中出歩いてんじゃねえぞ!殺すぞ‼︎」
「お、お、おい!俺はひ、ひ、被害者だぞ!く、糞ガキャー‼︎」
「なんだと奇形ってるジジイが偉そうに!川に沈めるぞ!」
佐武朗とくるみの元彼がそんなやりとりをしていると、少年は車椅子を蹴り上げた。
「おい!ガキ‼︎そこまでだ‼︎」次の瞬間くるみの元彼は背後から何者かに腕の関節を柔術技で決められてしまった。
「一部始終見て、そんで聞いてたぜ。お坊ちゃん」タカカズがナイスなタイミングで現れた。
「おい、なな何だよ!誰だよ、止めろよ!離せ!俺のオヤジが誰だか知ってんのか?お前らなんか社会的に抹殺できるんだぞ!離せ!」
「残念でした。さっきの二人のやりとりは、俺のスマホで録画してたんだよ。これ世の中に出されて困るのはお前の父ちゃんだろ⁈代議士の」
「な、なにぃ〜‼︎」
「バッチリ顔も声もいい感じて記録されてるよ」
「て、てメェー!そのスマホよこせ‼︎」
「おっとっと、危ない危ない。そ・う・し・んっと……」
「おい、なに⁈ 何処に送信したんだよ!」
「今の時代はクラウドの時代だぜ。いろんな場所に保存されているから、このスマホがどうなっても大丈夫。証拠は消えないの
!」
「ク、クソ!」
「有名代議士の一人息子でイケメン優等生、将来は国会を背負う後継者の自慢のご子息が、障害者を自転車で怪我を負わせた挙句に因縁つけて車椅子を蹴りあげる。週刊誌が喜びそうなネタだな……でもよ、取り引きしてやってもいいけど?」
「何とだよ!」
「お前アホ丸出しにいろんな女引っ掛けてはエロい写真撮る趣味があるらしいな。その中にちょっと知っている子がいるんだよ」
「な、なんのことだよ⁈」
「しらばっくれても調べはついてるんよ。この変態下衆野郎が‼︎」
「え⁈え〜〜!」
「お前のSNSのアカウントやら、スマホ、PC本体も全部一応壊す。いいな!それとこの件はお前の親父さんにも報告してある。明日から俺もSABROも社会的特典がたくさん付くよ。ありがとうな」
「は、は〜〜……」
「ちゃんと全部始末しろよ。ちなみにお前の家の電化製品は全部ハッキングしてある。盗聴器もたくさん仕掛けてある。いつも見張っているからな」
「は、はい……」
道にヘタレこんで座っているくるみの元彼に向かってSABROは言った。
「チミャ! (てめーは)女泣かせる奴は、ゆ、ゆ、ゆるさぁねー‼︎」
そう言うとカリムダンサーのコントロールレバーの下のスイッチを押した。すると、座席の下から高圧水鉄砲が出て来て、くるみの元彼の顔面に命中した。
「うわぁ!なんだよ…く、臭せ〜!ひょっとしてこれ、シ、ションベンかよ!」
「グワァはっはっは‼︎ あ、あ、あばよ〜‼︎」」
SABROとタカカズは闇の中に消えていったのだった。




