エルクトンの街~マユカの涙~
「お兄さん……ちゅー上手い……」
まだ完全に顔が離れていない状態でマユカが吐息を漏らしながら言う。
「お嬢ちゃんの唇も綺麗で柔らかくて、美味しいよ」
「やだっ……」
そう言いながらわざとらしく目を落とす。
すると、お兄さんは右手で顎をクイッと上げて再びマユカの唇を奪った。
「んっ……」
流石に遊び慣れしているお兄さんだ。マユカの合図にもちゃんと合わせる。
わざとらしく目を落とすというのはそういうものだ。
「お兄さん……」
「お嬢さんはどういうキスが好きなの?」
この言葉も合図だ。
マユカはそれを逃さない。
「お兄さんみたいなちゅーだよ……」
マユカは男の興奮のさせ方は把握している。
どう言われたら嬉しいのか、どう言われたいのかということなのだが。
いくら顔が良くて胸が大きくてもそれを最大限に使わなければ意味が無い。
そのためにはそういう気遣いも大事だ。
見た目で男心を燻ぶるのと、そういう部分で男心を燻ぶるのは同じぐらい重要だ。
つまり、両方できるというのは最強だということだ!
「お嬢ちゃんは若いのにこんな大きなこんないやらしい胸してるんだね」
「大きい胸嫌い……?」
「いや、むしろ大きい方が好きなのだけど……。正直こんなに見事な胸をみたことがない」
「そうなの? 自分じゃわからないけど私のおっぱいって良いの?」
「今まで多くの胸を見てきたけど、ダントツで一番だ」
「どこが良いの? 教えてほしいな」
マユカは少しカマトトぶってみる。
自分のことを褒められるという経験が前世では皆無だったので聞きたいのだ。
「まず、この大きさ。見事な丸みで、しかも全く垂れていない。ハリがあるし、その上で、このようにめちゃくちゃ柔らかい」
「あんっ……」
お兄さんに一揉みされて声が出る。
以前自分で調べた時思ったが、やっぱり感度はかなり良いようだ。
「感度も良いみたいだね。そして……見た目もすごく美しい……。しゃぶっていいかい?」
「うん……いいよ……」
お兄さんの口がマユカの突起物へと向かう。
生暖かい舌がねっとりと舐め回してくる。
「ん……っ。あっ……」
必死に声を我慢するが漏れてしまう。
「良い声で鳴くんだね」
「やだっ……恥ずかしい……」
片方の胸を舐められながら、もう片方は優しく揉みほぐされる。
こんなことをされるのは前世を含め初めてだ。
まだ今世の記憶が全て思い出せているわけではないので今世ではあるのかもしれないが。
マユカの感覚的には初めてのことだ。
好きでもない男の人に体を好きなようにいじられるのが、こんなにも恥ずかしくて、気まずくて、声を聞かれたくなくて、自分のそういう部分をさらけ出させられたくなくて、やめて欲しくて……。
そしてそれ以上に、気持ちいいのだということをマユカは感じていた。
「お嬢ちゃんも触ってくれないかな?」
そう言ってお兄さんは、マユカの手を取り、自分の物へと導いた。
「すごい……大きくなってる……」
「お嬢ちゃんでこうなったんだよ。しっかり責任とってね」
「手でいいかな……?」
「そうだね、最初は手でいいよ」
最初は。
お兄さんはそう言った。
けれどマユカはそれをちょっと安易にとらえていた。
手だけで満足させれば、それでことが終わると。
そして、こんなものはこすればいいだけ。そう思っている。
「お兄さん……氣持ちい?」
マユカは手を動かした。
上下に激しく……。
早く終わらせて早くお金を貰いたい。
その一心だった。
「お嬢ちゃん、待った待った待った」
「どうしたの? そんなに気持ちいいの?」
もう絶頂に達しようとしていたのだろうか。
マユカはより一層手の動きを早めた。
「だから違うって!」
お兄さんは我慢できずに、マユカの手をがっちりと掴んだ。
「お兄さん。ダメだよー。我慢は体にどくだよ」
「いや、そうじゃない。お嬢ちゃん……。乱暴にしたらいいってものじゃないんだよ」
「ふぇ?」
何を言ってるのかわからなかった。
こっちは金のためにやってるのだからさっさと済ませたいに決まってる。
確かに金を払う側からしたら少しでも長く楽しみたいのだろう。
そこの配慮が足りなかったのかもしれない。とマユカは思った。
「ごめんなさい……」
しかし、ここで反抗してはお金を払ってもらえず逃げられるというのも考えられる。
それは一番避けなければならない。
「しょうがない、俺が色々と教えてあげるよ」
マユカは、うわっ、すっごくめんどくさいやつだ。と思った。
これが俗にいう調教したがりな男というやつだろうか。
「いいの。私は自分で頑張るから」
「そういう問題じゃないんだけどな……」
「ん?」
だったらどういう問題なのだろうか。
「まぁ、いいや。じゃあこうしよう。君の胸で挟んでそれでこすってくれないか?」
「おっぱいで?」
「そうだよ。君の胸ならできるはずだ」
なるほど、ようやくおっぱいが全面的に活躍する場面が来たというわけだ。
「わかった」
これがマユカのおっぱいのデビュー試合というわけだ。
マユカはお兄さんの股の間に移動し、自分の胸でお兄さんの反り立つ物を挟む。
「こうですか……?」
谷間に自分の胸より高い温度と強い脈拍を感じながら、マユカは手で胸を寄せて、擦る。
「あぁ――。すごくいいよお嬢ちゃん」
お兄さんの声が先ほどとは違い、柔らかいものとなっている。
こちらのほうが断然に気持ちよさそうだ。
「んっ――」
マユカも自然と声が漏れた。
感度の良い胸のせいでマユカ自身も感じてしまっている。
「自分でこすっているのに興奮するなんて、お嬢ちゃんもイヤラシいな」
「やだ……」
そんな短い言葉を交わした後、マユカは必死に胸を動かした。
お兄さんもまた、言葉としての声をだすことをやめた。
二人とも集中して快感を求める。
マユカは当初自分も気持よくなろうだなんて全く思っていなかったのだけれど、今はそんなことを考えていない。
純粋にこの場を楽しみだしている。
静かな空間に二人の吐息と漏れる声だけが生まれる。
その空気がマユカの興奮を引きたせてくる。
もっともっと、気持ちよくなりたい。
そんな欲求がマユカの中に生まれつつあったその時。
「ダメだ……。出る」
お兄さんの絞りだすような声で終焉を迎える。
ハァハァと息を切らすお兄さんはマユカのことを全く気にすること無く、ベッドに身を委ねた。
マユカは少しの間呆然としていたが、自分の胸にかかったそれが気持ち悪くなって近くにあった布で拭き取る。
何度拭いても、何度拭いても、気持ち悪さが拭えなかった。
自分の胸が赤くなりそうになってきたので、拭うことをやめて、ベッドに腰掛け、ため息をついた。
マユカもお兄さんもお互い、身を寄せることも近づくこともなかった。
しばらく時間がたったあと、お兄さんがベッドから起き上がり、自分の荷物から袋を取り出して、マユカに差し出す。
「約束の金だ。ちゃんと50ブランある。お嬢ちゃんの胸は今までにない最高のモノだったよ」
モノ。
その言葉はマユカが無自覚のうちに心に突き刺さった。
「ありがとう、お兄さん」
マユカはお兄さんから差し出された袋を手に取る。
「さて、そろそろ出るよ。ここは明日の朝までの料金を払ってあるからお嬢ちゃんが好きに使うと良い」
そう言いながらお兄さんは服を着、出て行った。
お兄さんが出て行くのを見届けたマユカは、手にある袋を開けてみた。
そこには確かに袋いっぱいこの国の通貨が入っていた。
マユカはそれを眺めながら、涙を流した。