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ララオールの街~この街での最初のお客様~

「さて、今日から一週間、お互い別行動よ!」


「どっちが多く稼げるか、という勝負だったわね」


「そうよ。多く稼いだら多く稼いだだけ良いわけだからもちろん上限はないわ」


 マユカとアズミはそう言葉を交わした後、別の方向へと歩きだした。


 マユカが向かった先は居酒屋。


 昼間っから飲んでいる人がいればその人達を相手に金を稼ごうと思ったのだ。


 しかし……。


「閉まってる……」


 居酒屋の扉は閉められ、中からの光も全く見えない。


「あ、あのすみません。ここの居酒屋もうやってないんですか?」


 たまらず、たまたま近くを通り過ぎようとした人に聞いてみる。


「え? いや、違うよ。まだやってないんだよ」


「……まだ?」


「そうだよ、18時開店だもんその店」


「18時!!!?」


「あー、もしかして大きい街の方から来た人?」


「そうだけど……」


「他のところはどうかしらないけど、この街の居酒屋は17時とか18時に開店するよ。それまでお酒は我慢だね」


「そん……な……」


「まあこんな田舎街だけど、よかったらゆっくりしていきなよ」


 そう言って、通りすがりの人は歩いていった。


「う~ん……完全に予定が狂った。まだ10時前だから7時間もぼーっとするわけにも行かないし」


 酔っ払った相手をしたほうがやりやすかったのだけれど、こうなったら別の客層を狙うしか無い。


 しかし、年増も行かない10代の男を狙ったところで金銭交渉を行っても、バカにしてるような金額しか持っていないだろう。


 ならばどの層を狙うのかというとそれは――。


 昼間働いている男だ。


 田舎街でも、働いている20代~30代の人間は金も多少は持っているだろうし、田舎街だからこそ性欲を持て余している可能性がある。


 そう考えたマユカは宣言するようにこう発声した。


「正しいお金の使い方を教えてあげないといけないわね」

上唇にそって舌を滑らせ、口内にその桃色の舌を納めた後、色っぽく笑みを浮かべた。



 さて、この街の最初の金づるは誰にしようか。


 店頭で販売をしている八百屋か、はたまた魚屋か、なんて考えた人は愚かしい。


 田舎街のそういった店は大抵家族ぐるみで商いをしている。


 つまり、家族の目が近くにあるわけだ。


 店を離れるのも大義名分が必要。


 なので狙うなら、家族で商いをしているがそこまで目が届かない、もしくは少し離れても大丈夫なことをしている人。


 マユカはしばらく散策して、回った後にある男に目星をつけた。


「こんにちは~。これは一体何を作ってるんですか?」


 ストレートな金髪を風になびかせ、横髪を耳にかけながら、畑で働いている男の人に声をかける。


「お、おう……。えっとこれは……ニンジンだ。そ、それくらいわかるだろっ!」


「あら、これはごめんなさい。存じませんでした。でもあなたが教えてくださったから次からはちゃんとわかりますね!」


 首を少し斜めにして笑みを浮かべる。


 すると、その男は一瞬固まったが、はっとしたようにマユカの顔を見るのをやめ、再びクワを振りかざし、地面に落とす。


「仕事熱心なんですね。素敵です」


「べ、別に普通だ。それよりあんたは……冒険者か? 全然見たこと無いが」


「そうです。冒険者です。どうしてわかったんですか?」


「そりゃ……。あんた見たいな美人見たこと無いからだよ……」


「あら、そんな嬉しいことを言ってくれるんですね! お世辞でも嬉しいです」


お世辞じゃなくガチなんだろうなー。とマユカは思ったけれど、それは当然言わない。

あと、ついでにこれはもう金出すだろうなコイツ。とも思った。


「お世辞じゃねー。まぁ、言われ慣れてそうだけどな」


「お世辞じゃないのなら、それはすごくうれしいです。でも……。あなたが言ったように皆そういうふうに言って来るんですが、みんな私じゃなくて私の持っている何かが欲しくて言うみたいで……。私、すぐ騙されちゃうんです」


「そ、そうなんか」


「だから、あなたの言葉も本当なのかなって……思ってしまうんです」


「本当だよ、別に初めて会ったあんたにそんな嘘いってもしょうがないだろ」


「だったら、どうしてさっきから私の顔を見てくださらないのですか?」


 マユカがそういうと、沈黙が数秒続いた。


「こっちを向いて言ってくださいませんか?」


 その言葉に、男はマユカの方を見る。


「やっとこっちを見てくれましたね」


 すかさずマユカは笑顔を男に向ける。


 その笑顔にやられたのか、男はクワを持っていることを忘れ、足にクワを落としてしまった。


「いだっ!!!」


「大丈夫ですか!?」


「いででで」


「怪我しててはいけません。そこの茂みまでいきましょう」


「いや、大丈夫。大丈夫だから」


 今にでもあっちに行けと言いそうな空気を察したマユカは一言。


「安心してください。私クレリックなので怪我治せます!」


 だから見せてください。と休む口実を与えた。


 茂みまで男を連れてきたマユカは、前屈の状態にさせ、靴を脱がせた。


 マユカは男の足の裏側に位置し、前かがみになりながら足を見る。


「どうですか? 痛いです?」


 足をムニムニ触りながら男に問いかける。


 当然、男の顔は見ない。あくまで足を見ている状態なのだが、男が自身の足を見ようとしたら服の間から谷間が見えるように意識する。


「いや……えっと……大丈夫」


「無理しないでちゃんと言ってください、あとあと大事になってしまったら大変なので……。ここは痛いですか?」


 マユカはそう言って別の所も触ってみる。


「だ、大丈夫。本当に痛くないから……その……」


 マユカはそろそろかな? と思いながらゆっくりと足を揉む手を緩めていく。


「だったらよかったです…………ね?」


 マユカがゆっくりと顔をあげると、男の股間の部分の服のシワが明らかに先ほどと違う。


「あらいやだ……」


「いや、その、えっと。これは……違うんだ!」


「いえ、いいんですよ。私でこうなってくれたんですよね……。恥ずかしいですけど……すごくうれしいです」


 照れ笑いを見せるとマユカは男の腕に抱きつき、胸を押し当てる。

 しかし、相手の顔は見ないようにする。


「私って、男の人のことよく知らないのですが、こうなるのって私でドキドキしてくれたってことですよね?」


「あ……あぁ」


「うふっ、すごくうれしいです。ありがとうございます」


 そう言って、男の肩に頭を預けるマユカ。


「あの……これを聞くのは少し恥ずかしいんですけど、私のどこでドキドキしてくださいました?」


「えっ」


 男は驚いたように言う。


「私、自分に自信がなくて……。だから教えてほしいなーって思ったんです」


「えっと……。その。顔も綺麗だし、太ももも白くて……。む、胸も大きくて柔らかそうで……」


「そんなにいっぱいあるんですか!」


「いや、悪く思ったならすまん」


「その逆ですよ。そんなに一杯褒めてくれて嬉しいです」


「そ、そうか……」


 男はまだ戸惑いを隠せない。


 もうひと押しか、とマユカは思い。勝負にでる。


「あ、あの……よかったら。触ってみますか?」


「えっ!!?」


「その……私男の人に胸を触ってもらったことがないので、どんな感じなのかなっていうちょっとした好奇心と、一杯嬉しいことを言ってくれたお礼と――」


 マユカは少し溜めた後再び口を開く。


「あなただったら、いいかなって思っちゃったから……」


 耳元でそう囁いた。


 さらに、片手で男の出っ張ったところを優しく撫でる。


「ここにも……興味があるの……」


 そう言うと男はいきなりマユカに抱きついた。


「キャッ。もう、そんなにあわてないで。怖いですよ」


「もうとまらないんだ」


 そう言って男は乱暴にマユカの胸を揉む。


「あん。ダメ……」


「俺が男を教えてやるよ」


「あなたになら……お願いしたいわ」


 そう言いながらもマユカは男のモノを服の上から結構な勢いで擦る。


 すると、男はキスをしようとマユカに顔を近づける。


 何をしようとしているのかはわかっている。


「キスは……ダメ」


 マユカは寸でのところで空いている片方の手で防ぐ。


「いいじゃねーか。これからもっとすごいことをするんだから」


「怖いから優しく……ね」


 しかし、男が慌てているのにも理由があった。


 そして、その理由はその後すぐにわかった。


 ウッ……。と男が言ったかと思うとビクビク震えて履いている布が湿ったのだ。


「あら、どうしたのですか?」


「イッた……」


 男は恥ずかしそうにそういう。


「あら、そうだったんですね。気持ちよかったですか?」


「あぁ、こんなに気持ちよかったのは初めてだ……。あんたすげーよ」


「満足してもらったのならよかった。じゃあ15ブラン頂戴」


「は?」


「気持ちよかったんでしょ? しかも満足したんでしょ? だったらその対価をちょうだいって言ってるの」


「何言ってやがる! 大人を馬鹿にするな!」


「払わないというのならこっちだって準備はできているわ。あなたはどんな運命になるんでしょうね」


 悪魔の様な笑みを浮かべるマユカ。


「はっ。んなこと言ったってな。そんな大金もってるわけないだろ!」


「あら? いいの? だったら今あなたが持っているお金全部でも良いのよ。それだと多分20ブランは超えるんじゃないかしら?」


「何を根拠にそんなこと言ってやがるんだ。アホらしい」


「あなた、さっき商会に納品に行った時にお金もらっていたわよね」


「…………それを狙ってたのか?」


「もちろん」


 今度は優しく笑顔を見せるマユカ。


「あんた……すげーよ」


 男は、参った。俺の負けだ。と言って15ブランをマユカに渡した。


「ありがとうね! でもあなたも良い思いしたからそれでおあいこ!」


 そう言ってマユカは男の元から去ろうとして、思い出したように振り返る。


「あなた、胸を揉むのは乱暴にするだけじゃダメだよ。全くもって気持ちよくないから!」


 それを告げて、マユカは別の男を探しに行った。


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