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ありのままのゼーレ  作者: 天チク
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綻びの約束


初めまして天チクです。


短めになっております。


ではどうぞ。


そもそも人とは何なのだろうか。どうでもいいことで一気一様し、くだらないことで本気に悩む。

悩む暇があるなら行動した方が早い、感情を表に出すなんて弱みを見せることでしかない。


こう考える僕はつまらない人間なのだろうか。


昨日母に言われた言葉が頭に残る。


「あんたは全然子供らしくないわねー。もう少し笑ってくれてもいいと思うのよ」


子供らしいとは何なのか。僕にはわからないのに。


同年代の子供たちみたいに無邪気に笑えばいいのだろうか、それとも幼い言葉遣いで母に甘えればいいのだろうか。


僕にはわからない。だから言葉にできない。


生まれつき目が良かった僕は一度見たものは完全に再現できた。はじめのうちはそれこそ楽しかったと思う。自分の知らないことを吸収ことにある種の快感のようなものを覚えてもいた。

しかし、それももう飽きた。一度見たらできるということは練習する必要も、努力する過程もいらず結果しか手にいれることはできない。

他のみんなは羨ましいと思うかもしれない。

でも、その過程にあるはずの達成感や喜びまで感じれないのだとしたら、それは本当に羨ましがられるものなのだろうか。


過程を飛ばし、結果だけを見つめる瞳は、1番近い他人である両親から大人と言うものを学んでしまった。


やり甲斐のない人生は依然として僕に試練を与えず、つまらない生活は僕の感情を錆びつかせる。


家にいてもつまらない。感情とは伝達し周囲にも伝わるものだ。だったらいない方がお互いの為になる。


街はずれの山の中にある、小さな小屋が最近の僕の居場所だ。

木々の中というものはそれだけで何処か荒れた心を癒してくれる。その静けさの中で俺は1人物思いに耽る。


このまま1人で生きていくのだろうか。笑わない僕は他者を笑顔をすることになんて出来ない。

折り合いをつけて、嘘の笑顔で誤魔化すことはできるかもしれない。だけど僕は「正直者」だ。

もう1つある僕の特異性。

僕は嘘をつけない。つこうとしても口が勝手に真実を語るのだ。

唯一の抵抗手段は黙ることのみ。

人より効率よく物事を進めれる僕が社会に出た時に上手く心を誤魔化しながら上司や同僚に接することなんてできるわけがない。勝手に口が語りだす。黙っていたら仕事なんてできない。

きっと社会でも失敗するだろう。


悲しくないわけがない、誰だって1人は寂しい。

こんな力いらないと思ったことも、なかったわけじゃない。でも、この力も僕の一部なのだとしたら、それを否定したのだとしたら、僕は僕自身すら信用できなくなってしまう。


ああ、1人は辛いよ。


「…」

「…」


目を、目を前に向けると女の子がこちらを見ていた。小屋の扉が開けられているということはこの子は幽霊ではない。

少女は瞳を輝かせながら、けれど少し悲しそうな顔で尋ねてきた。

「ねえ、1人は辛い?」

ストレートな言葉は容赦なく僕の心を抉りとる。見透かされたような錯覚に陥る。いい繕うとしても僕は真実だけを語ってしまう。

「うん、辛いよ。一人はイヤだよ」

当然だった。僕は異端児。『認められても認めてもらえない』そんな優秀すぎた廃棄物。 人なのに人の中で生活することが難しいだなんて笑い話にもなりはしない。いつだって僕の心はひとりぼっち。


「じゃあ、くる?」


そんな心に無邪気に入り込んできた一筋の光。

目の前の少女は僕に手を差し出してくる。


ーーどこへ、なんて疑問はわかなかった。


ただその手を取りたいと願った。このまま何も言わずに掴むだけでいい、けれど俺の目は心を語る。


「いきたい…よ。でも僕はダメだよ。きっと、上手くできないから」

優しければ優しいほど、拒絶された時の対価は大きい。孤独を選びたくて選んでるわけじゃない、けれどこれが最善の選択なんだ。傷つきたくないだけの守りの選択。


「どうして? そんなにも寂しがってるのに」

どうしてなんて聞かないでくれよ。君にはわかるわけないじゃないか。僕の辛さは僕だけのものだ。他人に同情される為にこの辛さを抱えてきたわけじゃない。


頑なに喋らない僕を見て少女は語りはじめる。

「私もね1人なんだ」

僕は少女に目を向けた。

重なり合う視線、されどどちらもそらすことなく話は続く。

「私にはね、不思議な力があるの。「魂」が見えるんだ。思ってることが魂の色でわかるの」

だから、と少女は言った。

「君が心の底から寂しがってることがわかるよ。困惑してることも諦めてることも全部わかるよ。でもね想いは読めても過去は読めないんだ」

少女は深呼吸して心を落ち着かせるとこちらを向けて言葉を紡ぐ。

「君のことを知りたい。1人は私も嫌だから、せっかく会えたんだから、私は君を知りたいなっ」


その真摯な姿勢に打たれたのではないら。ただ、1人の男として彼女の純粋な笑顔に僕は生まれてはじめて心を揺さぶられたのだった。


これが僕、明智 洸夜と立花 小羽の出会いだった。


****


僕達は遊んだ。今までの分を埋め合うように、お互いを必要とし、じゃれあうことで1人じゃないということを確認しながら毎日、日が暮れるまで遊ぶ。


そんな毎日の中で小羽は言った。


『私達と同じ子がいる』


僕達はそうやって仲間を作っていった。大切な仲間を。

一人一人がそれぞれ傷を持っていた。孤独に苛まれていた。だからこそ一体感は凄かった。


『嘘をつけない完璧超人 明智 洸夜』


『魂の色が見える少女 立花 小羽』


『不幸体質の頑丈ムードメーカー 武藤 辰馬』


『生物の声が聞こえる令嬢 三ノ宮 揚羽』


『言葉を失った武闘家 鏡 京司』


『傷つかない女の子 舞浜 芽衣』


互いを大切に、されど本音を言い合えるのはここまで楽しいものだったのかと、僕達の世界は色を変えた。

そんな僕達に小羽は言う。

「変わったのはみんなの魂の色だよ」

世界は変わらないけど、私達は変われるんだと少女は笑う。


そんなある日、秘密基地として定着していた小屋の中で小羽が提案した。

「私達の絆を、私達の魂を繋げたい」

意味なんてよくわからなかった。けどその場にいた全員が彼女が本気で言ってることだけはわかっていた。

「いいぜ」

辰馬が真っ先に言ったのと同時に次々と賛成の意見が上がる。

「みんな…ありがと」

小羽の指示で円を組むように手を繋ぐ。


「いまからやるのは『魂結び』 本来は肉体から魂が離れないようにっていう御呪いなんだけど、ここでは私達の魂を繋ぐ為にやりたいと思います。みんなといるととても楽しくて、心がポカポカして、そんな毎日が本当に幸せです。みんなも心に思い浮かべて私の後に続いてください」

皆が自然に目を閉じる。


「魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま」

『魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま』

1度目はみんなとの出会いに感謝を込めて。


「魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま」

『魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま』

2度目はみんなと過ごした日々の幸福を噛み締めながら。


「魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま」

『魂は見つ主は誰とも知らねども結びとどめよ下がひのつま』

そして3度目は僕達の未来を信じて唱える。


儀式が終わり、誰からともなく手を離す。


みんなで顔を見合わせて笑いあう。

こんな毎日がいつまでも続くことを、結んだ魂の絆と天に願った。




その1年後小羽は死んだ。




いかがでしたでしょうか。


これからも精進していきたいと思います。


感想の方お待ちしております。

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