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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第4章 策動するシャムシ達と近付く戦乱
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第9話

 また中途半端に切ってしまったような気がします。

 久しぶりに昨日の昼に、梅田に行ったついでにつけ麺を食べようと思ったのですが定休日だったのですよ。移動前に一回は食べたかった。まあ、まだ1月半ほどあるので行く機会を狙います。

 さて仁王、ですが、立花 宗茂に勝てないですよ、しかしぜひ勝ちたい。誾千代可愛い(え?)、猫かわいそう。まあそれほど時間的に出来るわけではありませんがね。

 

 成型加工は主に金属を切ったり貼ったりすることなく、その姿かたちを変化させるための加工である。例えば鋳造加工や鍛造加工、プレス加工なんかもそうであるし、あまり一般的に聞かないものなら転造加工や爆発加工なんていうのもある。鋳造はこの時代でも多く使われているし、これら熱、圧力、またはその組み合わせによってされている事は、この時代の鍛冶師の加工と基本的には同じである。これら金属の、いったん形が決まったらなかなかその形から変化しない性質、を塑性といい、それを利用し、素材に大きな力を加え、変形させることで、目的とする形状に加工することを塑性加工という。常温で行う加工も当然あり、冷間加工、温感加工、熱間加工と温度が上がっていく。もちろん温度が上がれば加工はしやすくなるものの、精度が下がることもあったりして、素材と用途目的などに左右されやすい。


 次の切削加工は読んで字の如く、切ったり削ったりする加工のことである。正確に言うと、加工対象物より不要な部分を取り除き、目的となる形状に近づけることになるが、加工対象物が木材や合成樹脂であり金属でない場合もある。この加工での有名なのは一度はテレビとかで見たことがあると思う、木材ののみ加工だろうか。もっともこれもこの加工の一例になるが、これは木工で金属加工ではない。この加工では工作機械を多用することが多く、このことを機械加工と呼んでいる。例えばフライス盤と言われる回転する削る為の刃を加工対象物に押し当てて平面や溝などを削る機械や、旋盤と言われる、逆に刃ではなく加工対象物を回転させ、ここに刃を当てることによって削る機械などが有名である。そのほかにも研磨等や放電加工やプラズマ切断等もこの加工の範疇に入る。


 最後が接合加工である。この接合加工は加工対象物をくっ付けることであるのだが、この方法に特徴がある。例えば接着剤でくっつけるとこの加工になるのだろうか? 答えは、ならない、である(と思う、間違ってたらごめんなさい)。ではなにが接合加工の要素となりえるのか。答えは熱や圧力、またはその組み合わせであって、そういう意味においては上記の加工に似ていなくもない。乱暴な言い方を許してもらえるのであれば、加工対象物をくっつけるか、形を変えるかの差でもある。この加工の具体的な手法としては、日本刀製作の技法の一つでもある沸かし付け、いわゆる鍛接、一般的によく見ることができる熱を利用するアークやガス溶接、圧力でくっつける圧接、はんだ付けのような加工対象物より融点の低い金属を融解させてくっつけるろう接などがある。


 これらの三種類の基本的加工方法の組み合わせによって製品は出来上がるのであるが、これら加工をするには基本的に機械が必要になってくるし、効率よく、また幅広く加工しようとすると機械の動力は手動、つまり人力では都合が悪い。もちろん人力も馬鹿にはしてはいけない、人力パソコンなる物もあるぐらいである。しかし人力以外の動力を見つけない限り大量生産は効率が落ちるのもまた純然たる事実である。


 ここで動力として考えたのはすでに鍛冶場で使用している水力、さらに大きな力を得ることが出来るが、燃料が必要になる蒸気、状況によっては燃料いらず、ただし製作するべき装置が増える電気、この三つが基本的に候補として挙げることができる。


 この中で一番採用の可能性が無いのが蒸気機関だろう。これは簡単に言えば燃料がかかりすぎて金銭的にどうしようもない。さらに言えば、場所的にも作れないとは言わないが、作るのに時間がかかる装置的にも大規模化して生産の時間的猶予がなくなる可能性もある。


 次が残念ながら水力。これは現在使用していることから、その利点と欠点をよく理解できている。

 水力は動力効率が電力に変換する際は他の追随を許さないほどに非常に大きい、ただしこれは大規模、かつ落差が非常に大きいときに限る。加えて問題はその水車で受けた動力の損失を出来る限り少なく伝えることが難しい事で、この点が大規模な工場を、つまり動力を作っている水車の場所と実際に機械で使う場所の距離が大きな工場では動力のロスが大きく勿体無いのだ。


 で、結局は電気になってしまうのだが、これは動力の距離による損失が少ない。もちろん損失がまったく無いわけではないものの、電気という形にすることで容易に、また長距離を伝搬させやすい。問題は作るべき装置がさらに多くなってしまう事であるが、そんなこと言えば他二つでもさほど差は無い。

 

 発電機と電動機の作り方はすでに鍛冶場を製作するときに作り方を彼らは調べていたようで、製作にはまったく躊躇が無かった。


 「あ、校長。いい所に来ましたね」

 サエルがざわついている鍛冶場の様子を息抜きがてら見に来たコウジに話しかける。


 「うん、どうしたんだ?」

 

 「ああ、あっちの取水口に置いた発動機と、そこの加工場に置いた電動機、それに繋げた旋盤機を動かしてみたんですよ。いやー凄いですよ。今まで鋳造して、水力を動力にして中ぐりして、さらにそこからライフリングを刻んでいた銃身が、ここまで簡単に、なおかつ早く完成するなんて、これはもの凄いものですね」

 

 「そりゃあ、まあ、そう、だろうな。だが、なんでエルザとブラムまで見に来てるんだ」

 コウジはエルザとブラムが身を乗り出さんばかりに削りだしの工程を、物珍しそうに、いろいろな角度から見ているのに呆気にとられて質問した。

 よくよく二人を見ていると、生徒達は飛んで来る金属の削りカスや火花を避けて少し離れた所いるのに、二人はそれより二歩前にいる。さらに彼らの前には見えない壁が在って彼らの方に飛んでくる火花や削りカスはそれに当たったらその場で自然と落ちていくのだ。この光景を生徒達は不思議そうに見ているものの、猛者になるとエルザやブラムを盾にして工程を覗き込む、なんてことをしている奴までいる。

 もちろん二人はコバンザメもどきの生徒に対してお構いなしでに動くものだから、後ろにいる生徒にたまに削りカスが飛んでいってしまう。


 「なにしてんの?」

 ついつい近畿の方言が出てしまったコウジであったが、彼らのしていることが判らないわけでは決して無い。

 もちろん理解している。しているのだが、その、なんというか、自分の周りに透明な物理的障壁を出せる卓越した技術力を持っている連中が、こんなローテクな加工法をまじまじと注視していることに少々落差を感じてしまったのだ。

 所謂ギャップ萌えではなく、もちろん萌えてない、ただただ驚いているだけだ。


 彼ら二人も自分達の周りを見渡し少々浮いていることに気がついたのか、襟をただし、ブラムがコウジに言い訳がましく発言した。

 「い、いえ、博物館でも見ることの出来ないこの加工法を、初めて見たものですから、少々夢中になって記録をとっておりまして」 

 

 「そ、そうよ、べ、別にちょっとみててもいいじゃない。減るものじゃないし」

 エルザも、というかエルザの方が口を尖らせて言う。


 「そ、そうか。そりゃあ、まあ、減るものではないし、別に悪いとは言ってないんだがな、ならぜひ、出来れば後ろにいる生徒達にも近づけるように障壁を広げてやってくれ」


 「そうですね。気がつかず申し訳ない」

 即座にブラムがシールドを拡大する

 

 「ありがとうございます」

 生徒が即座に礼をいって近付く。


 「それでどれくらい工程が速くなったんだ?」

 それを横目で見ながらサエルにコウジは尋ねる。


 「ええ、今までは鋳造した穴の開いていない銃身を水力で少しづつ回転させ、そこに固定した鑿を削るために押し当てて穴を開けていきます」

 サエルが説明し始める。コウジは完成品と概要しか知らなかったので、工程の詳しい説明をされるのは今回が初めてである。


 「そのときに使われていた鑿が、その銃身を回している電動機の横で固定してある鑿ですが、やはりこれも長時間使用していたら交換しなければいけない消耗品ですね。それから少しずつ削り取っていき、ほぼ丸2日かけて弾が通る穴をくりぬきます。しかしそれが電動機を使用すればほんの30分ぐらいで完成です。しかも水力の場合ですと力が弱かったせいで時間だけでなく、固定されている鑿を押し当てる絶妙な力加減を習得する必要があったのですが、これは後ろから今まで削りだしをしていた職人に教えてもらうだけでくり貫けますよ。さらに回転速度が速くなったおかげで穴の大きさも、鑿さえ調整すればさらに小さく出来るかと思いますよ。まあ銃身の強度との相談にもなるかと思いますが」

 ここでは銃身を作る方法は鋳造、つまり鋳型に反射炉から出てきた溶けてドロドロになった鉄を流し込み、それに穴を開ける形で作られる。


 もちろんこれ以外にも制作方法は存在する。


 例えば日本の火縄銃の銃身の作り方ならば、まずはじめに平らで銃身の長さほどの長い長方形の鉄の板を用意する。これを瓦金といい火縄銃生産の最盛期ではこれを作る専門の鍛冶屋があって、そこが集中的に生産していたのだそうだ。次にこの瓦金を熱間鍛造して、つまり熱して叩いて鍛え、円形に近づける。しかし単に鍛造だけで目的の整った円柱形になるわけもないので、そこに中心に筒を挿入し、その周りに巻きつかす形で鍛造していく。こうやって円柱形になるのだが、これではもともと一枚の板だったことから板の端と、その反対側の端に隙間が生じていることになる。もちろんこの隙間を塞ぐために真金しんがね、比較的柔軟な鉄、を隙間にいれて鍛造して、接合部が見えなくなるまで固定する。これで完成かと思いきや、これをさらに強化する次の工程が存在する。鉄板を鍛造で打ち伸ばし、つなぎ合わせて、細長い板を作っていく。これを巻板というが、これを先ほど出来た円柱に巻きつける。さらに二重で巻きつけたもの存在するらしいが、とりあえずそれはおいといて。さらに先端は薄い巻板で少し円錐の形に近づけ、鍛造か、はめ込んで火皿を取り付ける。

 ここまでは特に異説、異論がそれほど存在しない工程なのだが、ここからが少々はっきりしていない、というのもこれはもとは一枚の鉄の板を鍛造で製作した銃身であって、当然両方に穴が開いている。しかし銃として、銃身として使用する場合には穴の一方を塞がないと使いようが無い。この穴を塞ぐにはネジを使用するのであるが、この銃身本体の雌ネジ、雄ネジが挿入されるほう、(エ、エロくないよ、そう説明されてるんだってw)の作り方に二つの通説があるのだ。

 種子島の鍛冶職人の話を聞いたことがあれば、ああ、あのことかと思っていただけると思う。まあ教えを請うために娘を渡したかどうかは判らないが。

 さて雌ネジを作る方法としては上記の金属加工方法が役に立つと思う。普通ネジを作るなら、簡単に思いつくのが、削る方法だろう。ただこれはネジを挿されるほうのネジ穴を削る道具が必要になってくる。これが鉄砲伝来時にあったのかどうか、がこの説に反対する人達の論拠ともなるのであるが、それは少し横においといて、次に思いつくのが鍛造だろう。

 鍛造でネジを刻めるのか? と思う人もおられると思うが、この方法は雄ネジをヤスリなどで作った後、それを銃身に差し込んでそこで熱間鍛造することによって製作される。この方法で作られたと考えている根拠は、まさしくさっき書いた通り削る道具の当初の有無である。これに対しても実際に切削加工で作られた断面を持つ火縄銃が所蔵されていたり、ネジきりのためのタップという当時の道具が国友(火縄銃の産地として有名です、今でもその流れを受け継いだ会社が自衛隊などに弾薬を納入していたりもします)の鉄砲鍛冶資料館などに展示されている。

 これらを考慮するに最初は鍛造、大量生産されるようになったときは切削になっていったのだと思う。ただし雄ネジの互換性はおそらくは低かったのではないか、とも思うが。加えて火縄銃にはライフリングなどと言うものは刻まれていない。

 

 「穴を開けた銃身を今度は、固定してライフリングの削り器で削っていきます。この工程は以前は人力でしていましたが、電動にすると完成までの時間が短縮できます。とはいえ中ぐりほどは短縮できません。もともと1時間ほど何回も削り器を上げ下げして工程を終了させていたのが、30分ほど道具を往復させるだけで完成品ができるようになっただけですからね。やはり削りが悪いところは人間が確認して、その部分を削りなおさないといけませんからね」

 

 「削り直しが多くなったのか」

 

 「いえ、まだ確認中です。何本か削ってみた結果ですが、人力よりかはまだましかと思いますよ」

 銃身を手で持ち、胸の前で叩きながらサエルが言う。

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