第10話
ゴメンナサイ、お待たせいたしました。忙しすぎてようやく時間が取れた作者です。べ、別にポケモンgoしてたりなんかしちゃったりしてませんよ、いやだなー単純に忙しかっただけですヨ。とまあ冗談はさておき、頑張って面白い作品を更新していきたいとと思います。しかし技術を一つ出そうと思うとそれに対してさらに必要な技術が出てくるのは調べると言う点でちょっと大変です。ここら辺はばっさりと無視してしまっていいものか悩みますね。中途半端に掲載するのもなんかもやっとするし……、まだまだ力量不足の作者ですがどうぞよろしくお願いします。
「そしてこれが恐らく今作ろうとしている武器だと思います」
寮の自室でカウルさんにタブレットで飛び道具の歴史の火器の項目を見せながら説明する。
「なるほど、火薬を使って弾を打ち出す武器か、ふーん。弓矢に対しての利点と欠点は何があるんだいシュラク情報幕僚」
茶化しながらカウルさんが質問してくる。情報幕僚とは部隊の情報収集や情報の保全を担当とする部隊の指揮官を補佐する役職のことである。部隊を指揮するとき指揮官は部隊の置かれている複雑な状況を客観的に、かつ簡潔に把握していないといけないし、この状況に対する対処方針を決定して、さらには部下に対しこの情報と対処方針をそれぞれの段階において理解、徹底させる必要がある。この過程においてもっとも重要視されるといっても過言ではないが情報である。もっとも他にも人事、運用、補給を担当する幕僚がいるし、彼らもこの過程に参加するのは言うまでも無いことである。ちなみに人事は総務と人事を担当し、具体的には文書の管理や、字のごとく人事などを行う。運用は作戦や運用を担当し、補給は補給を統括する。
「利点は威力面だと思います。弓矢に比べると初速、標的に与える運動量等が段違いに大きいのは確かです。欠点は弓矢と違って矢となる弾の準備、生産、弾の一部といってもいい火薬の調合、その原料の調達、生産、さらには弓に相当する火器本体の生産が手間です。あと利点か欠点かわからないのが音でしょうか。やかましくて気付かれずに敵を倒すことができませんが、逆に言うと敵に対して鬨の声にも、また意表を衝くことも可能と思います。加えて弓矢に比べて扱いが簡単な点も利点か欠点かわからないところです」
考え付くところはこんなところだろうか。最初の威力の点は大きな利点であると思う、初速は弓矢では大型の弓矢ですら50から60m/s、そして弓矢の一種である弩でも100~300m/s、一方発展した個人が携帯できる火器ならば軽く音速(350m/s)を超えると書いてある。衝撃力、それすなわち威力とはいえないが、というのも空気抵抗や弾丸の形状等などがあるせいだ、は一般的に物理学から弾丸の運動エネルギーは二分の一×弾丸の質量×弾丸の速度の二乗である。当然弓矢は弾丸である矢の速度が携帯型の小火器に遠く及ばず、砲に対しても矢は質量で到底及ばない、威力という面では大きく火器に劣るだろう。そしてさらにはこの速度は正確に物を狙うという効果までもを与えてくれる。
では欠点はどうだろうか? 弓矢なら一人前の木工職人であるなら簡単にさらに大量に作れるだろうし、矢も先端の鏃と矢羽に使う羽が手間ではあるがそれほど生産が大変だ、とは聞いたことがない。一方火器においては弓に相当する火器本体にしても、また矢に相当する弾の生産にも大変な手間がかかることはまず間違いない事だろう。
そして利点か欠点か判らないのが音と養成の容易さだろう。
僕も弓を人並み、かどうかは疑問のあるところだが、一様、本当に一様であるが、弓を使える、しかしこの使えるは弓兵として使用に耐える、ではなく、どうにかしてたまには的に当てられるであるのだ。しかし火器ならばそこまで育成、さらに錬度を高めることは難しくはないだろう。というのも火器は完成して、手にとって実際に射撃してみないと確実なことははっきりと断言できないものの、どう考えても初速が速い分狙う事、それ自体が簡単そうである、ということはそれだけ簡単に射手が養成できるということに他ならない。しかし、しかしである、射手が簡単に養成できることは利点だけではない、欠点も含まれる。つまり簡単に兵士を育成できる、敵も含めて、では火器と弾の生産が多いほうが勝つ、となるのである。まあ今のところ我々以外こんな物を生産する酔狂な勢力はいないと思うが、世の中がそんなに単純かつ簡単なら最初に剣を開発して人間が王になってるだろう。
そしてもう一つが音である。
これについてはなんともいえない。邪魔であるといえば邪魔であるし、有用といえば有用であろう。時と場合による、例えば夜間に敵陣に夜襲をかけるときならばすぐに発見されるだろう。しかし一斉に発射して大音響を敵の前で鳴らせば、それだけで敵は怯むかもしれない。音とはそういうもののような気がする。もっとも僕自身は戦場には一切行ったことはないが……
「うんうん、情報幕僚はこの武器をそう見るわけか。まあそんなとこ、だろうな。しかしこの重火器ってのはすごいな。ふん、最大射程30kmとかもう戦争じゃないな、これ。今、他の都市国家に使ったら一方的な虐殺になるわ」
カウルさんはタブレットの中の本をぺらぺらと捲りながら重火器の項目を見ている。
「そんな大きな物は早々簡単には作れないでしょう? さすがに。大体それ攻城用なんじゃないですか? 投石器とかと同じで」
僕もカウルさんの手元を覗き込みながら性能を確認する。よくよく見てみるとカウルさんが見ていたのは大きいし、重い大型の砲といわれるものであった。こんな大型で発展した砲はすぐには生産できないと思いますよ。それに機動性皆無でしょうに。
「頭固いな~、うちの情報幕僚は。使えるものは何でも使えって。例えば攻城用の投石器も使いようによると野戦でも使えるもんだよ。しかしどうやって作るんだろうか? 少し気になるな」
まあ、カウルさんが言うならばそうなのだろう。たしかに気になるといえば気になるが、生産の手順ちょっと知りたい気がする。
「いろいろとこの飛び道具の歴史は面白いな。ちょっと他のやつらにも言ってきてやるか。ちょっと出てくる」
そう言うと席を立ちタブレット片手に読みながら部屋を出ていこういとした。
「はい、行ってらっしゃい」
カウルさんを見送ってから僕は今日授業で出された課題を机に向かってやり始めた。
課題を終わらせるとそろそろ夕食時に近付いていた。さっさと食べて、火器を作る方法を聞きに行ってみるか。
食堂に行き、夕食を食べていると、サエルさん達が夕食を食べにやってきた。
「サエルさん」
疲労の色が色濃く見えるエキエルとサエルさんに近付き挨拶しに行く。
「ああ、シュラクか」
サエルさんが僕を見て返事を返す。
「ちょっと聞きたいことがあるんですけれどいいですか?」
夕食を食べているサエルさんとエキエルに質問を投げかける。
「かまわないぞ」
食べながら少し疲れた風にサエルさんが答える。
「いま作っているの炉はは反射炉だってエキエルに聞いたんですけど、武器を作っているとか?」
疲れてるみたいだから回りくどく聞き出すのも悪い気がするから単刀直入に本題に入る。
「ああ、火薬を使う火器、それも個人携帯用の小火器ってやつだな。まあ、ゆくゆくは大型の重火器も作りたいが。でそれがどうかしたか? やっぱり興味あるか?」
なるほど携帯型の小火器だけでなく重火器も作ろうとしてるのか。もっとも今興味があるのは作られたあとの作品、いや量産しようとしているのだから製品かな? ではなく製作方法なんだけどな。
「ええ本体にも興味はあるのですが、今さらに興味があるのは作り方なんですよね。どうやって作るつもりですか?」
「ああ口で説明するのは面倒なんだが、それに皆交代で晩飯なんだ。俺達も食べ終わったらすぐ戻らないといけない。向こうでなら説明できるがこの後付いて来るか?」
なるほど交代で作業して効率を落とさないようにしているのか。ついていかないわけがない。
「大丈夫です。付いて行きます」
サエルさん達は食事を終え皆が作業をしている場所に一緒に戻ってきて説明を始める。
「作り方を直接さっさと説明したいんだが、場所の説明と作る物に対する説明からしていきたい。これを理解していない、してるでは大きく違うからな。まず今作ろうとしているのはさっき言った様に第一に小火器だ、そして第二に重火器だな。最初はそれらを鉄製で作ろうとしていたんだ。現在の鉄製製品は鉄の塊を火に焼べて柔らかくなったところでハンマーで叩いて形を整える方法で作っている、これを鍛造と言う。利点は強度、欠点は生産性の低さと熟練度が製品の品質に直接響くところだろう。ハンマーを持ったことの無い人間には教えることも難しい。でだ、鉄製で作ろうとしたんだが火薬に耐えれる強度が現状出せない。さっき鍛造の利点に強度を挙げたが火器用の筒を鍛造で作ってみたらものの見事に破裂した。まあ破裂しないように筒を肉厚にしてもいいんだが今度は重くなる。結局厚みはそのままにして解決策を探したところ鉄の強度自体、または筒の材質の均一化に問題があるとの結論に至ったんだ。鉄と言っても一概に言えなくてな、強度によっては名前が変わるほどだ、合金にすればさらに強度は増すしな。青銅製の鋳造、あー鋳造ってのはどろどろに金属を溶かして鋳型、まあ型だな、に流し込んで特定の形を作る方法だ、で作ろうかとも思ったんだがどうせなら利点も多い鉄にしようと思ったといったところだ。そのために鉄をさらに強靭に熔解しなくちゃならん。基本的に炭素が少ないほど強靭な鉄になる、基本的にだがな。例えば何でも強靭な鉄のほうがいいわけじゃない、強靭になると加工が難しいと言った事もあるからな、何事も適切な強度が重要だ。話がそれたけど鉄の熔解と強靭化に必要なのが反射炉になる。これで筒の材質の均一化と強靭化が達成できる。反射炉の構造は読んで字のごとく燃料源の熱量を炉内で反射させて装入物を過熱、溶錬する。化学的に言うと還元溶錬か酸化溶錬に分けれるんだが、どっちでもいいか。そしてどろどろに解けた鉄を型に流し込んで円柱の棒状にして鋳造する。ここまではいいか?」
つまり鍛造で火器の発射装置を製作しようとしたら鉄じゃ失敗して、青銅製の鋳造で作ろうと思ったけど、どうせなら鉄を使って鋳造で製作しようと言ったところか。別に青銅にしててもいいんじゃないかな? すでに青銅の鍛冶技術は高度だと聞いているんだけどなぜなんだろう?
「鉄製で火器を作るの利点は何なんですか? 別に青銅でも生産性を考えたらよさそうですけど」
「ああ、鉄のほうが磨耗や熱にも強い、寿命やより強力の火薬が使える点で青銅より優秀だろう、と考えたそれに鉄ってのは簡単に手に入る材質なんだよ、この星の質量の3分の1は鉄だ。銅の400倍近い埋蔵量を誇っていると言ってもいい。まあまだそれほど使われて無い素材でもあるけどな」
「そんなにもですか」
そ、そんなにも鉄の埋蔵量があるのか。てかこの星って鉄で出来てるのか? じゃあ一番安くてもおかしくないな、もっとも鉄鉱石は大半はアナトリア、あるいは一部エラムからの輸送になるため少々お高い。最も銅もアナトリアからかエラムからかしか入ってこないからさほど変わりないが。
(作者注:アナトリアは現在のトルコ東部方面、エラムはイラン南西部方面です)
「続けるぞ。棒を作ったら今度はそれを加工する。先ずはくり抜いて筒にするんだがここで問題がある。どうやってくり抜くか、だ。最初は人力を考えてたんだがめんど……、手間だ。それに大量生産可能かどうかも武器には重要な素質だ。決して楽したいとかではないぞ。次に考えたのが水車つまり水の力を利用して棒をくり抜こうと考えたんだ。あっちがその水車を利用したくり抜き機をおく建物だな。まあ動力としては現状では最善だろう。くり抜いた後に考えないといけないのは発射した弾の安定のために溝を切るかどうかだ。これを専門用語でライフリングと言うんだが、これを刻む方法は俺達が出来る技術では二つ紹介されている。出来ない技術ならもっとあるんだが、まあ出来ないものをどうこう言っても始まらないからな。一つ目は鍛造。ものすごい力で凸を押し当てて刻む。これを鍛造と言っていいのかどうかは定義しだいだが、俺としてはハンマー使ってないのは鍛造と言いたくない、が金属を圧力を用いて目的の形にすると言う定義ならまあ鍛造だろう。話がそれたがそれが一つ目で、次がもっと簡単、単純に削る。まあ削るのには手間がかかるが水車の応用で何とかなりそうだ。もっとも問題は精度と生産性だ。当然鍛造がお勧めだがそれをしようとするとさらに技術がいる。なんとも一つ目的を達成するためにもう二、三技術を要求されるからな。鍛造も普通の圧力じゃ鉄に溝を刻むことは出来んからなさらに調べに入らないとどうしようもない。そして首尾よく溝を刻んだとしても今度は前から弾をこめるか、後ろから弾をこめるかと言った問題が出てくる」
「前装式と後装式のことですか?」
前装式とは前から弾と発射薬を詰める方法である。他方後装式は後ろから詰める方法である。当然前装式は構造的には後装式のように後部を開閉したり、密閉する機構が必要ないため、火器全体を一つの鋳型で鋳造でき、場合によっては製作の為の部品点数を減らすことも出来るかもしれないといったところが利点であろう。
では後装式の利点はどうか? 前装式は、弾を撃った後、銃口を手元に戻して弾込めの作業をしなければならないのに対して、後装式は発射した姿勢を崩さず、手元で弾込めが可能である。このため、前装式に比べて弾丸の装填が容易に迅速に行え、発射速度が速い。ただし、後装式は弾を込めた後、火薬の爆発を後ろに漏らさないように、弾を込めた箇所を完全に密閉する必要があるので、閉鎖機構の設計や製造が未熟だと閉鎖機構の不完全閉鎖により火薬ガスの噴出や、さらにもっと最悪なのが暴発等が起こることが考えられる。撃たれた相手より撃った本人が死んでたら意味が無い、当たり前だが……。しかしそうなるとやっぱり前装式を作った後、後装式を作るほうがいいのではないだろうか。
「そうそれだ。まあいきなり後装式をつくろうとは思っちゃいないがね。先ずは前装式で火器本体の強度や有用性、さらには各部品の耐久性を見てみないことには火薬と言うそれ単体でも武器になる物を使用しているんだから慎重に試すべきだろうからな。そして行く行くは重火器に挑戦してみたい。大型の砲なんかにも挑戦したいがそれをするにはやっぱり更なる技術力の向上が必要だ。まあ着実に前進していこうかね」
サエルさんはなにか満足げににやけながら答えた。
「そういえば、水車じゃなくて電気を利用したモーターで削ろうかって話もあったんだが仕事を増やすなって事で却下した。まあモーターと発電機はすぐに作れそうだがな。銅線と磁性材料さえあれば製作可能だろうし、いろいろと使い道はあるんだろうけどな。やることが多すぎる。反射炉の廃熱に水かけて蒸気発電あるいはその力で動力とするなんてことも考えたんだがな。まあ手隙になったら考えるとして、まあ、現状はこんなところだな。どうだ、大体判ったか?」
「ええ、大体解りました。ありがとうございました」
お礼を言いながらカウルさんにどう説明しようかを頭の中で組み立てていく。
「まあ、また何か聞きたいことがあったら聞きに来い、俺は作業に戻るわ。じゃあな」
手を振って作業の輪の中に入っていくサエルさんであった。
あ、ご意見、ご感想も随時受付中であります。お気軽にどうぞ(o^-^o)
8/4 訂正 運動エネルギーはK=1/2・m・v・v m質量 v速度




