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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第2章 回り始める運命の歯車(旧第名 始動)
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第7話

 投稿が遅れ、申し訳ございません。言い訳はしないつもりなのですが、ようやく休みがとれたので投稿します。

 学校兼工場が軌道に乗り、しばらくたったある日の午後、木炭作りの様子を見に行ってみると工場から子供達が話している声が聞こえる。

 「だから俺は勉強せず、ずっと働いてお金を稼いでるだけで別に構わねえよ。わざわざ勉強なんてしなくてもさ、勉強なんかめんどくさいだけだしよ」

 一人の子供が声高に叫んでいる。主に最後が言いたいだけだな。他の子供が反論する。

 「でもよ、親は勉強してたほうがいいって言ってたぞ」

 「お前は親が言ったことはなんでもその通りにするのかよ」

 最初に勉強が嫌だと言っていた子供がバカにしたように言い返し、険悪な雰囲気になる。

 ははは、子供達が言いそうなことだな。それはともかく何故勉強するかが解らないのか、あるいは面倒なのか。どちらにしても少し話してみるか。

 「そうだな、勉強は面倒だと思うのもわからなくもない。が、その今お前達が作っているそれも勉強の末に出来た物ではあるぞ」

 子供達は、突然俺に話しかけられて戸惑っている。

 「でもさ、コウジ先生。どうせなら木炭のような新しい物を作れるようになる方法を教えてほしいんだよ。読み書きとか計算じゃなくてさ」

 「おいおい、もし読み書きが出来ず、そういった方法を俺が一から教えたとして、どうやって他人に伝えるんだ。もしくは俺以外の人間の知識がいるとき、どうやってそれを手にいれるんだ。計算も同じだ、何が何個いるか、それが合計どれくらいするのか、できたものの売値は、利益は、計算できなきゃ何も出来ないだろ」

 「人を雇ってしてもらえばいい」

 「そして利益を掠め取られても気付かない間抜けになるのも別に構わないが、お前達はそうじゃないだろ。まあ、なんにしても読み書き計算は必要なもんなんだよ、お前達の親や大人達も全員ではないが、夜通って勉強を教えてもらってるぞ」

 最後の所を聞いた子供達の大半は、驚いた顔をしている。親が通っている子供達は驚きもしないみたいだが。子供達が帰った後、大人達は仕事が終わった後に学校で読み書き計算を教わっているのだ。

 「何故だかわかるか。大人達もお前と同じように勉強なんて大したことがない、するに値しないと思っていたんだ。でも働きはじめて、歳をとって初めて勉強が重要だと思ったんだよ。だからこそ仕事が終わって疲れていても学びにくるんだ」

 皆、神妙に聞き、考え始めた。もう一息でこちらの言うことに納得してもらえそうだ。

 「当然読み書き計算は、始まりにすぎない。簡単に言うと基礎でしかない。ここから更に発展してありとあらいる学問に発展するんだ。それをぜひ学んでほしい」

 「それを学べばコウジ先生と同じように新しい物を発明できるのか」

 食いついたな。

 「できる。学ばなければならないことは多いが、学び、考えることさえできれば、新しい事を発明することができる」

 「わかった、頑張って勉強してみるよ」

 「ああ、頑張ってみろ」

 納得してもらえたようなので少し安心して作業場を後にした。



  「そう言うわけで、そろそろ前話していた専門的分野の学校を立てたいんだ。そこで農学の研究者兼教師になってほしい」

 夜農作業から帰ってきたコールに昼の子供達との出来事を教え、一緒に飯を食べながら前話していた通り、専門学校の事を相談する。

 「そうですね。研究が出来るのならぜひこちらからもお願いしたい所ですね。場所はどうしますか」

 「東側の農地の一部を試験農場として使おう、校舎は木炭の作り方の売買で得た資金を使えばどうにかなるだろう」

 そう、結局本格的な木炭の作り方を薪を扱っている商家に教えて、その利益の一部を数年間貰うこと、それと形成木炭の販売を認めてもらうことで合意した。まだ木炭自体はメソポタミヤ北部の木がまだ残ってる地域にしか製造法は伝わっていないが、アナトリアやエラム、今のイラン、の方面にもそのうち伝来することだろう。

 「場所の件はわかりました。他にどのような分野を学べるようになるのでしょうか」

 「エルザに頼んでるけど、一様天文学。俺が数学、物理学、化学をおしえるつもりだ」

 物理が専門だが数学も教えれるし、昔日本にいたときに家庭教してたから化学も教えれるだろう。

 「数学は理解できますが、化学と物理学とはなんですか」

 「化学は簡単に言うと物の構造や性質、反応を研究する学問だよ。物理学はこの世界の現象の把握と、これを支配する根本原理の推察と証明を数学を使って行う学問だ」

 「化学は物質の変換と言うところで錬金術に似てますね。物理学はこの世界を原理を理解するための学問ですか。神学のこの世の根本である神を理解しようと言う所で、ある意味似てるような気もしますね」

 まあ例えは中らずと言えども遠からずだな。

 「そんな理解で構わないと思う。とりあえず生徒を集める準備を始めよう」

 一番の難点はエルザの説得であった。美味しい食品と、主に酒類を、俺の記憶の中から、捧げることで、交換条件を引き出したこの3ヶ月ほどの交渉は壮絶を極めた。エルザからは天文学を教えるだけでなく自動翻訳機も貰うことができた。これで次エラムやインダス地方からやって来る商人達と通訳抜きで会話することができるだろう。まあ、エルザにさらにこれら地方の美味しい食べ物や酒類を貢がないといけないが……。

 ていうか主に翻訳機はそれで釣ったのだが。やっぱり合成機では味気ないのだそうだ、収穫して、料理して、味わって食べる食事に勝るものはないのだとか宣っていた。現在エルザが、俺もだが、特に入手してほしいのは米だそうだ。確かに米を中心とした料理の記憶を大量に提供したせいで、本物の米が食べたいという気持ちは理解できるのだが、インダス地方の米はインディカ米の可能性が高いような気がしなくもない。まあ、ジャポニカ米もインディカ米も料理によって美味しさは変わるから別にエルザが不満に思うことはないだろう…… だ、大丈夫だろう、たぶん。 

  


 「それで、私にもなにか教えてほしいというわけでございますな」

 バビロンからラリアの町の近くの天文台に異空間の中にある宇宙船ごと引っ越してきたブラムと久しぶりに、といってもちょくちょくエルザと一緒に食事をしているが、天文台で会ってお願いしてみる。なお、エルザはそろそろ起きて天体観測を始めそうな時間である、起きてきたら念押しもしておきたい。べ、別にエルザに会いに来た訳じゃあないんだからね、と口に出してデレてみてもいいのだが、野郎のデレは誰得やねん、ということなので省略。案外こういう文化、といっていいのか解らないが、は宇宙人にも理解されるようである。

 「エルザがそろそろ宇宙船の再利用が出来、通信筒の用意も完成したと言っていたから、そろそろ時間が余るんじゃないかなと思ってさ」

 「私の教えれる分野は工学と軍学に限られますが、軍学を教えるのは少々……」

 ブラムにしては珍しく歯切れが悪く、唸りながら考えている。

 「問題かい?」

 「そうでございますな。問題と言えば問題なのですが、外交規定の技術授与、あるいは供与の規定に接触しかねませんので少々問題が有るかもしれませんが、当然抜け道もございますので、そこまで問題ではないといってもいいのでございますが」

 さらに唸りながら首をかしげながら考えだしたその時、会話している俺たちの後ろから鶴の一声がとんできた。

 「別に構わないんじゃない、保護、協力の条項のごり押しでいけば小うるさいおばさんも外交部の役人連中も文句言わないわよ。てかいわせないわ」

 寝起きのエルザが下着姿にタオルケットの様なものを羽織って寝室から俺達が会話しているリビングに出てくる。下着が羽織ったタオルケットから覗いて見えるのだが、少々残念なことに俎板なのであまり色っぽくない。 てか、このかっこをみるのは俺は初めてではない。ぶっちゃけ気にならない、もう。

 が、ブラムはそんなかっこで出てくるのを許す訳もない。

 「お嬢様、とりあえずそのかっこで起きて出てくるのは」

 と、いいながら俺とエルザの間に身をねじ込み俺の視界をシャットアウトしながら寝室に押し戻そうとしている。

 「わかったから、自分でもどるから、もうやめてよ、子供じゃないんだから」

 しばしあと、服を着て出てきたエルザがブラムに話し始める。

 「とりあえず諸事気にせず大丈夫だから教えてきなさいよ。まあ問題になったら問題になったで誤魔化しようはあるから」

 「わかりました工学と軍学を教えたいと思います。よろしくお願いします」

 到底納得できないというふうに渋々同意するブラムであった。

 「ああ、こちらこそよろしくお願いする。ところで工学は何が専門なんだ」 

 「機械、金属、航空宇宙でしょうか、一様、宇宙船の乗組員としての一般的教養である宇宙論なども教えれますが」

 なるほど宇宙船関係なんじゃないか? そうだこの機会に他のことも聞いてしまおう。

 「戦闘関係はブラム担当だったのか?」

 「はい。ただ調査船の乗組員たるもの最低限の戦闘能力はお嬢様も持って…… るかもしれませんが」

 断言できないのかよ。エルザの方を見ると誤魔化しぎみに視線を反らしやがった。

 「まあ、開校の予定が決まったら二人に知らせるよ。さてそろそろ御暇しますかね」

 「あら、観測手伝わせてあげるわよ」

 御遠慮したいな。俺にめんどくさい作業全部手伝わせるだけだろう。と、言葉にするは勇気ないが……。

 「いや遠慮しよう、明日はシャムシやイシュナと市場に出掛ける日だから早めに寝たい」

 「なんなら睡眠タンク貸してあげるから、付き合いなさいって。いや、私も市場に一緒に行ってみようかしら。そうよ、そうしなさい、決定ね」

 アウチ、地雷を踏み抜いた気分だ。余計なことまで言ってしまったか。こうなったらもう何を言っても聞いてもらえないのは経験済みである。おとなしく手伝うしか道は残っていない。睡眠タンクは快適なんだけど、昼夜逆転しやすいから慣れないんだよな。慣れると昼夜逆転すらしないらしいけど。

 「わかった。さっさと始めよう」

 こうして俺はエルザの手伝いをするのだった。そして案の定昼夜逆転した。何回かしか使ってないが、慣れないわー、これ。

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