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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第2章 回り始める運命の歯車(旧第名 始動)
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第2話

 灌漑用水路の整備をして1月。ウルクからの一団の内、数人がこの村に夜、農地に残している農機具の管理のた為に、残っている小屋で過ごしている。

 農地の真ん中に藁葺きの小屋が有って、塩害の被害が一番ましな東の農地区画を現在整備中だ。

 「排水路なんですが、角度を主に3つ決めて作りました。この内1つは、角度が緩やかすぎて排水が不十分で更に塩害が悪化しました。一方、一番急な排水路の方も排水が速く洗い流しが不十分らしく、塩害の解消には至りませんでした。中間の角度の区画が、見た目的には一番塩害の解消に効力を発揮していると思います。」

 コールが早口に捲し立てる。成る程この中間の角度の排水路を複数整備して更に効果を見よう。

 「じゃあ、一番効果の有った角度で何ヵ所か、再度試してみて有用性を確認してみよう。東側の区画はこれで行けるんじゃないだろうかと思ってるんだけど、どう思う?」

 「そうですね。既に一番うまくいった農地の区画なら、作付をしてもいいかと思いますよ」

 「土壌の中まで解消してるかの確認もしたいんだが、な。それはさておき問題は、一番ひどい南だな」

 南側が一番塩害がひどく、西、北、東と続く。作付ができる所まで回復したのは朗報だな。土壌の撹拌の効果も確認したいところではあるが。

 「土壌の中を見るには、やはり作付けが一番かと思います。南側ですか、聞くところによると石灰を使うと言うことでしたが?」

 「石灰はまだ都合がついてないんだよ」

 「そうですか、都合がつかないなら仕方ありませんね。なら、手始めに東側よりひどい北側でこの方法で試してみたいのですが、どう思いますか」

 北側か。東側の除塩作業が滞らない限り別に構わないが。

 「優先順位はやはり東側だと思うが、遅れない範囲でやるのは別に構わないよ」

 「わかりました。長達にこの結果を見せて更なる人員を送ってもらいましょう。ま、そうなると夜を越す場所についても考えないといけませんが」

 あれ、此処に住んでいいと聞いてないのかな?

 「此処に住んでも構わない、とシン・ムバリド王には言質を取ってあるけど、聞いてない?」

 「塩害で捨てられた農地に住め、と言われてもな」

 ネヘレスが口を尖らす。成る程、それもそうだ。

 「とうだな、言われるまで、気付かなかった。すまん」

 「けっ、これだから」

 「ネレヘス!」

 コールがたしなめる。

 「へいへい、わかってるよ」

 「ああ、話をもとに戻すけど、何を作付けすればいいと思う?」

 「そうですね。塩害に強い、あるいは塩害になりかけの時に作付するのは綿花、メロン、スイカ、一部根類ぐらいですね。逆にダメなのが穀物類、大麻ですね。この時期ならメロンはどうでしょうか」

 「メロンか。それでいこう。ただ、それ以外にも探しておくよ」

 「では、メロンの作付をしておきます」

 「よろしくお願いするよ」

 

 

 町に帰ってきてシャムシに農地のことを報告した。

 「早いね、もう作付けするのかい?」

 「東側はそれほどでもなかったからな、そっちはどうだった」

 シャムシはニムロデの勉強の合間に、一緒に色々な所に顔を出して情報を収集してるようだ。

 「ああ、今日は鍛冶屋のところにいってきたよ。そう、プラウの件もあったからね」

 プラウ、犂のことで牛や馬に牽引させる耕土をかき混ぜる道具だ。現代ならトラクターに引かせるがそんな便利なもんは、今無い、当たり前だが。この時代ではフレームに保持された垂直の木製の剣のような尖った棒に、車輪もなしで畜力で地面を引っ掻くように牽引させるが、この木の刃先を青銅で覆って補強する。本当は青銅製の刃先を作りたかったが。それに車輪を装着して使用する。聖書にある剣を犂に、ってやつだ。もとの世界でやっていた、とあるカードゲームにもあるが。この刃先を溶かして戦争時は兵器に、平和な時は農機具にする。もちろん金属は高価なので早々数を揃えるのは難しいが、農業にも除塩にも有用なのは疑問の余地もない。

 「早速、持っていってやろう。驚く顔が見てみたいな」

 「農耕馬の用意もしないといけないと思いますよ、コウジ殿。ついでに、ウルクからの避難民の中にも鍛冶屋はいると思うのですが、その人達に造ってもらえばいいんじゃないですか」

 ニムロデに指摘される。

 「彼ら、手に技術を持った者達はそれほど冷遇されてないんだよ。それでもやっぱり少しは足元見られて不当に扱われてはいるらしいけどね。彼らは避難民達の主な稼ぎ頭だからね、長達もそう簡単には彼らを貸してくれないよ」

 シャムシが説明する。

 「まずは、信用を勝ち取るところから、だろ」

 「急がば回れでしたっけ?」

 ニムロデが呟く。

 「そう言うことだね」

 シャムシも同意して頷いた。まあ、ぼちぼちやっていこう。



 数日後、農地に完成したプラウと牽引用の農耕馬2頭を連れて村にやってきた。

 「なんだ、そいつは?」

 ネヘレスが質問してくる。

 「ああ、プラウだ。」

 「車輪がついてるし、おい、刃先青銅製じゃないか、こんな高価なもん」

 「まあ、いいから、いいから」

 「よくねえよ。こんなもん使えるかって。普通の木製じゃダメなのかよ」

 「効率が全然違う、刃先を変えることで側溝も簡単に作れる、まあ、騙されたと思って使ってみてくれよ」

 「こんにちは、コウジ。何ですかそのプラウは青銅製の刃先、しかも車輪付きですね」

 コールもやって来て同じことを言う。

 「詳しくはネヘレスに聞いてくれ」

 「作付のメロンも苗を手に入れてきました、すぐに作付できますよ」

 「ここだけの話、テンサイの栽培ができれば砂糖を造れるが、どう思う?」

 「テンサイですか。確かに根は甘かったですね、普通葉っぱしか食べませんが。栽培の方法を確立しなければなりません」

 「ここで出来るか?」

 「そうですね、基本栽培方法の確立にはウルクの荘園程の広さの農地が欲しいところです」

 「実際、ここを学術、研究の為の拠点にもしたいところなんだよ。南側の農地を一部除いて都市化する、ついでに南に有る川を一部延長、運河として利用したら都市として、十分機能するんじゃないかと思ってるんだけどね」

 「なるほど面白い考えですね。ところで学術は理解できるのですが、研究とは何ですか」

 「真理の探求かな」

 「真理ですか」

 あ、しくじった。相手は、神官だった。真理なんて言ってしまった。

 「いえ、そんな顔しなくても大丈夫ですよ。神に祈っても塩害は解決できませんからね」

 よかった、コールに理解があって。面倒になるところだった。

 「それならば更に頑張らなければなりませんね。とりあえずそのプラウの効果を検証してみましょう」

 「ああ、そうだな使ってみてくれ」

 ネヘレスが恐る恐る農地にプラウを入れる。

 「これは、だいぶ楽に耕せるな。引っ掛かりが少ない。牛に牽引させてもいいって話だけど、そうするかどうかは地面の質と柔らかさによるんじゃないか」

 最初は恐る恐るだったが、途中から嬉々としてプラウを使い始める。

 「ほう、変わってください、ネヘレス」

 我慢できない様子でコールがネヘレスからプラウを奪う。

 「これは、物凄い楽に耕せますね。除塩の時の土壌のかき混ぜにも使えそうですね。その場合は牛に変えたほうが良さそうですが」

 「しかし、そうなると刃先が錆びるから、手入れが重要になるがね」

 この場にいた皆、楽しみながらこの区画一面を耕し終えた。

 「角度を直した区画も、もう水を入れ始めたんだな」

 「ええ、既に手直しをして、水を入れておきました。更にもう3区画、排水路を整備し始めました。この作付けの結果が上手くいくと、更に人員を追加してもらえると思いますよ」

 「そうだな。この区画の除塩が終わるとまたメロンを作付するのか? 収穫までどれくらいかかる?」

 「収穫まで5、6ヶ月といったところです。メロンの作付期間中はそれでいこうかと思っていますが、連作は出来無いので、次も考えないといけませんね」

 「連作障害か、現状ではどうしようもないな」

 「どうにかするつもりですか」

 「それこそ研究だよ」

 ごめんね、答えは、輪作だけどね。知ってるからといって教えれるとは限らないのよ。自分達で考えて。

 こうして、農地の除塩を進め、作付をしていく一行であった。

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