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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第2章 回り始める運命の歯車(旧第名 始動)
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第1話

 ウルク市からの避難者との話をシャムシがまとめ、ニムロデが王宮との、主に父親との、話をまとめてる間に、イシュナと商家で聞いた石灰窯の工場こうばにやって来た。断られてこれで3件目だ。

 「親方、少しでいいから出来たのを分けてほしいんだ、この通り」

 「難しいさね、出来たモルタルは既に売約済みなんだぜ。それを融通しろってのはな、無理な話さね」

 親方が顔に煤を着けて、ぶっきらぼうに答える。

 「そこをなんとか、人助けだと思って」

 使い方を言えないところが、説得しずらいんだけどね。教えてもいいんだけど、イシュナさんに睨まれてしまう。

 「大体何に使うのさね。このモルタルの原料も原材料も結構危険なもんなんだぜ」

 どうしようかな、本当のことを言おうか。しかし、容量もよくわかってないのに塩害に効くかもしれないという話だけで使われてしまってもな。

 「ああ、ここだけの話だが新しい建設資材の開発に使いたいんだ」

 適当にごまかすしかないか。イシュナが驚いた顔を見せる。

 「うーん、あんた、たしかコウジとか言ったか? たしか砂糖の生産法を考えたとかなんとか誰かが言ってたな。そう言うことなら融通したいんだけどよ、今からだと、窯入れの空きができるまで待たないといけないさね」

 お、脈ありだな。ようやく工場巡りに終止符をうてるかな?

 「何時ぐらいになりそうだい?」

 「何時と断言するのは難しいさね、だが都合がついたら連絡するぜ」

 よし、決まったな。

 「分かった。もしも都合がつきそうなら、ジュナっていう女主人が仕切る商家に連絡を入れてくれ」

 「ああ、分かったぜ。あそこなら俺っちも付き合いがある。都合がついたらすぐ知らせるぜ」

 「そうだ。無理聞いてくれたお礼といっちゃあなんだけど、もし困ってることがあったら相談してくれ。案外なんとかなるかもしれないから」

 「はは、困ったこと、な。それも思い付いたら、連絡に付けとくさね」

 こうして、イシュナと一緒に工場を後にした。


 

 王宮に戻りウルクの避難民の長達との面会から帰ってきたシャムシと合流した。

 「どうだった?」

 「話はついたんだけどね、いまいち信用されてないみたいだよ」

 シャムシが疲れ顔で答えた。

 「どっちの意味で信用されてないと思う」

 「両方だよ、塩害を解消できるってのも、そもそもこの都市の住人にもね」

 理解できない話ではないな、ここまで散々な目に合って来たのは聞いている。

 「これは、益々除塩に対して本格的に取り組まないといけないな。彼らの信頼を勝ち取るためにも」

 「そうだね。後はニムロデがどこまでやってくれるか、だね」

 「ああ、まあ、いざとなったらエルザに助けを求めるよ。失敗できなくなったからな」

 「それで石灰の方はどうだった?」

 「ああ、大変だったが都合はついたよ」

 経緯を詳しく説明すしていると、ニムロデが帰ってきた。

 「同意してもらって来ました。大分大変でしたが、なんとか納得してもらいました。ただ条件を付けられてしまいまして」

 申し訳なさそうに報告する。

 「条件ね。何だったの?」

 想像はできるけど、いちよう聞いてみる

 「塩害の解消の折にはその方法を教えることと、エルザさんがその村に行くことを望むならをその村に連れていくこと、だそうです」

 「塩害の件は理解できるけど、エルザのはどう言うことだ?」

 「よくわからないんですが、女性方が怖がってるんだそうです」

 イラ・カブカブ王に関係する女性達は怖がってないんだけどな。主にイシュナがエルザとよく話しているお陰で。

 「まあいいや、考えてもしょうがない。明日には農地に行ってくれるラルサの人と合流して、実際に一緒に現地に行ってみるか」

 考えすぎても、しかたがないしな。

 「それなんだけど、農業の経験がある人を優先してくれるって言ってたよ」

 「それはありがたいな。で、3人とも明日はどうする」

 実際、俺には農業の経験も、土木作業の経験もない。知識は少々有る、が。さて、どうなることやら。

 「そうだね、農地に付いて行きたいね」

 「僕は、勉強が有るので王宮にいてます」

 「私は後学のために付いて行きたいわ」

 ニムロデが居残り、2人は付いてくるか。よし、明日は肉体労働もあり得るな、早めに寝よう。

 


 次の日 農地

 「あんたがコウジか。俺はネヘレス。コイツらを仕切ってあんたに手を貸せって言われてここに来たんだ」

 農地の横のあぜたむろして喋っている男達から声をかけられた。

 「ネヘレス。ダメだよ、そんな口調じゃ。初めまして私はコール。元ウルクのイナンナ神殿の荘園付き神官でした。主に農業技術指導をしてたので、今回、塩害を解消できるかもしれないと聞いて無理を言ってこの一団に加えてもらいました」

 神官服を着た青年に丁寧に挨拶された。

 「初めまして。コウジと言います」

 挨拶を返す。シャムシも挨拶する。

 「シャムシです。初めまして。よろしくお願いします」

 「それで、何から始めますか? もう、ワクワクして昨日はなかなか眠れなかったぐらいですよ」

 お、おう気合い満々だなぁ。ネヘレスが嫌そうな顔をしている。

 「まずは、長年放置されて荒れ果てている灌漑用水路の整備。次に排水路を整備したい」

 作業手順を説明していく。 

 「排水路ですか?」

 「ああ、水が蒸発するときに地面に塩が残るのが塩害の原因ではないかと思っているんだ。だから農地の上で水を蒸発させなければ問題は解決するかと思うんだ」

 「しかし、それでは既に塩に覆われている農地の問題の解決には到らないのでは?」

 腑に落ちないという表情で聞いてくる。

 「大丈夫だ。塩を水で洗い流すから」

 「成る程。そう言うことなら、さっさと作業に取りかかりましょう」

 合点がいった顔で頷く。

 「ああ、よろしく頼むよ。それで元あった用水路を有効活用して灌漑用水路は整備しよう。問題は排水路の方だ。位置、角度、水の行き先問題は山積みだ。ぜひ一緒に考えてほしい」

 「わかりました。一緒に知恵を絞って頑張っていきましょう」

 こうして俺達とウルクからの一団は、水路を整備し始めた。

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