第1章 第11話
バビロンから西に馬で約1時間、西に行った農地
「何でお前までいるんだ? 暇なのか?」
「ごめんなさい、出掛けるときに尋ねられてしまいました」
ニムロデが謝りながら答える
「それで、付いて来たのか」
「そうよ、だいたい付いて来るとなにか不都合でもあるわけ?」
「無い。けど、忙しいんじゃないのか」
「どんな時でも、息抜きは必要よ。本当は、楽しそうなことしてるからついてきたのよ」
あれ? 調査はどうしたんだ。
「調査初日から息抜きもないんじゃないのか」
「う。あ、貴方、女性にモテたためしないでしょ」
ないな。い、いや違う。宇宙人の高度な誘導だ。そういうことを言いたかったんじゃない。
「まあいいわ、何をしに、この農村に来たのかしら?」
「塩害の調査と、その他諸事情の解決、かな」
「塩害ね、この科学レベルでは厄介な問題よね」
「俺の時代の開発途上国や先進国の一部地域でも厄介な問題だがね」
実際、開発途上国においては灌漑や排水に対しての投資は行われているものの、メンテナンスや管理は十分とは言えず、人口の急速な増加、それに伴う食料需要の増加で毎年相当な額の被害を被っている。勿論、先進国の一部地域においても被害がないわけではない。
「結構、白いですね」
ニムロデが農地を見て言う。
「それどころか、ひび割れもしてるね」
シャムシが続ける。
「この状態から元の肥沃な大地に戻るものなの? 結構酷い状態だと思うけど。逆に考えるとこれを解決できたら、結構お金になるわね」
お金にぶれないイシュナさんでした。
「さて、まずは灌漑設備の確認と排水設備の確認だな」
農地に近付き、観察を始めた。
「何するつもりなの?」
エルザが聞いてくる。
「ああ、まずは排水システムを改善して、石灰系土壌改良材叩き込んで、耕起、砕土して、塩分を洗い流す」
えーい、一気に言ってやった。
「めんどくさいことするのね」
俺の知ってる唯一の塩害対策ですがね。
「そう言うエルザさんは、どういう対策法をお知りで」
「私なら土壌改良型ナノマシンを投入するわ」
反則レベルだが、土壌改良にナノマシンなんか投入してたら、全部改良するのにどれくらいの両を投入しなけりゃならないんだ?
「ナノマシンってなんだい?」
シャムシが質問する。
「エルザ先生に教えてもらいなさい」
困ったときのエルザ先生頼み。
「また、丸投げして。分かったわ、ニムロデ君もそんな目でこっち見ないで、教えるから、また今度ニムロデに教える時にでも一緒に教えるわ」
「好奇心旺盛だからな」
新しい単語を聞くと大概質問してくる
さて、やっぱり排水システムは整備されていないな。これは排水システムの整備と、長い期間放置されてから灌漑用水の整備から始めないといけないな。うむ土木工事、加えて耕起、砕土用にプラウも欲しいところだが。プラウ作るか、はー、また出費が痛いな。
「シャムシ、人を手配して排水溝の整備と灌漑の為の用水路の整備をしないと、どうしようもないな」
「それが最低限必要なことになるんだよね。石灰だっけ、それはどうやって入手するつもりだい」
石灰石をどうやって入手しようか?石灰自体は、既にこの時代有るんだけどね。
「石灰は、壁とか床の煉瓦の繋ぎ目に使うモルタルの原料だよ。だから入手はそれほど難しくないんだけどね。結局、お金がね」
そう、これ程の大きさの農地に撒くとなると、その量を買うと安くないのだよ。加えて適量を調べる必要もあるからね。
「人手は、ウルクから逃げてきた人を優先的に使いたいね」
人材の確保は簡単そうか? まあなんにしても有用な労働力ではあるな。
「拠るべき場所があると人はそこを守るために戦う、かい?」
「面白い言い回しだね。取りあえず、帰ってラルサの人に接触しよう」
「バビロンの王宮にどう報告するかも考えないといけないかもな」
「ニムロデにお願いしようかな、そこは」
おお、ニムロデに丸投げだ。
「え?」
「じゃあ、私は石灰を調べておきますわ」
イシュナは、石灰調達に名乗りをあげたな。
「ふーん、面白そうね」
エルザさん、拠点作りに関わってないで調査しないとダメなんじゃないの?
「なにか手伝ってくれるのか」
「ここに観測所とか作ってもいい? もしよければ色々と手伝ってあげるわ」
わー、やったー。とか言うと思ったか。どうしよかな。
「シャムシ、どうする?」
「いいんじゃないかな。手伝ってもらえるなら願ったりだよ。危ない物作るんじゃなければ、許可するよ。でも、ちゃんと手伝ってね。よろしくお願いします」
「わかったわ」
こうして私達は拠点作りに取り掛かった。
一旦、章を区切ります。次の話から第2章 始動になります。投稿ペースとしては週2から3になると思ってます。
ウルクとラルサの間違いを修正しました。




