第一章 転移 第7話
今回も会話中心で大変読みにくくなっております、ごめんなさい。猛省して次に活かします。
その日は王宮に帰り、あった出来事を報告したのだけれども、はてさて何人が理解できるだろうか?
「つまり、どういうことだ?」
シン・ムバリド王がこの質問をするのは3回目である。
「つまり、遭難したから助けてほしいと言うことですよ」
もう、これ以上端折ることができないほどに簡略化した。
「なるほど……解らん!」
そうそう、って解らんのんかい!
「と、取り合えず、コウジ殿にお任せするのはどうでしょう?」重臣の一人が提案する。
「そうしよう。まあ兵を動かさなくてすんだのは、これ幸いであった。よし、コウジ殿にこの件をお任せする。と言うことでよろしいかな? イラ・カブカブ王よ」
「分かりました。コウジよ、シャムシを附ける、存分に使ってこの件を解決してやってくれ」
「はい」
会議が終わるとシャムシと柱の影からでてきたイシュナに左右を挟まれ、ニムロデが後ろに位置する。
「さあて、こんどは僕たちが君を詰問する番だよ」
「シ、シャムシさんコワーイ」
「そんなこと言っても逃がさないわよ」
「イ、イシュナもコワーイ」
「そうですよ、コウジ殿」
「あれ? ニムロデきゅんは可愛い。」
「え?」
「いや、冗談だ」
ついにはシャムシの部屋に連行されてしまった。
「さてまずは貴方の来た場所からキリキリ話してもらいましょうか?」
イシュナが目の前で凄む。
怖くはない。可愛いだけだ。
「ふむ、どこまで話したっけ?」
「なにも話してもらってないわ」
「ああ、そうそう」
「ごまかさないでくれますか、コウジ様」
ああ、出た、コウジ様、これが出たときは結構怒っているときだ。
「はいはい、実は俺は今からずっと未来から来た人間なんだ」
「はい?」
「いや、ほんとうだよ」
「実験中に巻き込まれたんだよ」
「実験と言うと、あの野菜を煮詰めた時していた実験ですか?」
「いや、実験と言うのは確かめることだよ。あの野菜の時は砂糖ができるかどうか、を実験していたんだよ」
「なるほど、つまりなにか危ない実験をあなたは未来でして、それが失敗したということかしら?」
溜息をつきながら
「で、タイムパトロール、時間を見張っている警吏でしたかしら、に助けてもらおうとしてるといったとこかしら?」
「うん、まあ、だいたいそんな感じになるかな」
「なんで、なんで言ってくださらなかったのかしら?」
「いやー、商人だって思われてたし、未来人なんて言っても信じてもらえないだろうし、それに……」
「それになんですの?」
「それにそんなこと言ってイシュナ達に嫌われたらちょっとショックだなーって」
「!!、 し、仕方ないですわね」
顔を赤らめながら顔をそらす。
「あ!イシュナさんデレてますよ、コウジ殿」
途中でニムロデが鬼の首をとったようにはしゃぐ。
「ニムロデ王子~、また前みたいに泣きたいのかしら?」
「ごめんなさい、もういいません」
ニムロデが両手を口にあていやいやと首を揺る。
シャムシが頭を撫でて慰める。
「とにかく、コウジの立場は解りました」
お、コウジに戻った
「で、あの宇宙船やブラムについて知ってることはなんですの?」
「いや、ほとんど知らない。ただ……」
「ただ?」
「たぶんブラムってのは人間ではないかもしれない」
「え?」
「いやさ、宇宙船そのものかもしれないなって思っただけなんだけどね。ま、明日には解るんじゃないの」
「僕からも質問してもいいかい?」
シャムシが遠慮がちに聞く、もちろんイシュナに対して。
「ええどうぞ、シャムシ兄様」
「ありがとう、イシュナ」
実はこの子も怒ったイシュナが苦手である。
「あの宇宙船に危険は無いのかい?コウジ」
「難しい質問だな、危険は無くはない。けど行動規範と言うものがあるのであれば基本的に、例えばこちらから攻撃しない限り、または彼らにとって忌むべきことをしない限りにおいては、安全であると考えられるけど」
「確証がない?」
「ない」
「こんどは政治的な話になるけど」
「うん?」
「目的はなんだと思う?」
「目的か……」
あんな高度な宇宙船にのってこの地球にくる理由か、なんだろう?
「コウジがいた未来なら、宇宙人も来たことも1回や2回あるんじゃ無いのかい?」
「残念ながらない」
「え?」
ニムロデが首を傾ける。
「うん?どうした」
「おかしいですよ、コウジ殿。そんな謎なぞぼくでもだしませんよ」
「ああ、そういうことか」
シャムシもイシュナもそれに気づく。
「ああ、来てる可能性はある。が、俺は知らない。というのも俺はこのバビロンと言う市を知っているがイラカブカブと言う名の王もシャムシと言う男も知らないんだ」
「勉強しなかったのですか、コウジ殿?」
最近よく勉強しろと怒られているニムロデが言う。
「ああ、それもあるけど、実際俺が学校で習った内容は、チグリス・ユーフラテス川の間に文明が栄えた、と言うことぐらいなんだよ」
「ここの地方の歴史を専門に習わない限り知らなくても学校を卒業できるんだ」
「話のでてきたところで、もうひとつ聞きたい」
「未来のことかシャムシ?」
「そうだ、ほんとうにしらないのかい、僕たちの未来を?」
「知らん、ただお前らの未来が例え滅びへの一本道でも、それを無理矢理繁栄への道に繋ぎ変える、ぐらいのことはできるつもりだよ」
「信じていいのかい?」
「ああ、もちろんこんな可愛いお前達をほって何処かにいくわけないじゃないか、ああエンキドゥ!」
ギルガメッシュの英雄物語の一節をおどけながら言う。
「まあ信じてあげるよ」
照れながらシャムシがはにかむ
「ほんとうにコウジは面白いわね」
ふむ、我が秘められたポテンシャルの力に気付きおったか、若人達よ。
「まあ、何があっても基本的に一緒にいるよ」
「当然ですね、コウジ殿」
こいつは本当に可愛いんだから。
「まあ、責任とってもらわないとだしね」
イシュナ、責任って何だ、そんな嫌らしいことはしていないぞ、だいたいおまえその体で入るのか?
あ、イシュナににらまれた。
たまに鋭い。そしてなぜかシャムシにも睨まれた。
「まさかもう手を出したんじゃないだろうね、コウジいや弟よ、といった方がいいのかな?」
「神名にちかってそんなやましいことはしておりません」
あわてながらイシュナも
「そんなに簡単に許すつもりはありません」
1人わかっていないお子ちゃまのニムロデきゅん
「なんのことですか? 責任を取るのは当たり前ではないのですか?」
わからないことには口を挟まない方がいいよー。ほら、睨まれた、しかも二人に。
おー、よしよしお兄さんが手取り足取り、身も心も慰めてあげるよ、そんな趣味はないけど。
慰めてあげようとニムロデに手を伸ばす。
あれ、避けられた、惜しい。
「コウジ様、ニムロデに伸ばしているその腕はなにかしら?」
こうしてたわいもないことを話しながら夜も更けていった。
次の日の朝
「さて、そろそろ宇宙船に出発したいと思います」
「いきましょう、コウジ殿」
元気だね、さすがに一番先に寝たお子ちゃまだわ。
「なんですか、コウジ殿?」
「いやいや、なにもないよ」
道中言葉を覚えるために教えた尻取りをしながら暇を潰す。
昼過ぎに村に到着。
村に警戒のために駐留している兵士に聞く
「なにか変わったことはありましたか?」
「いえなにもありません」
「そうですか、ありがとう、ご苦労様です」
「いえ、任務ですから」
決まりきったような会話をして、宇宙船に近付く。
「霧が薄くなっているようなきがするんだけど」
目を凝らしながらシャムシが言う
「ああ、加えて霧が後退しているな。昨日はこの印のつけたとこにあったけど今はさらに宇宙船に近い」
「皆様、今日は。今日もご足労いただき、ありがとうございます。」
ブラムの声が頭に響く
「ご主人は御在宅かな」
「はい、既にお待ちで御座います」
「わかった。お邪魔させてもらうよ」
「はい、赤い光のところまでお進みください今日は階段を精製させていただきます」
ふーん大分機能が回復してきたのかな?
霧の中に入り宇宙船に近付くと、なんと既に宇宙船は昨日の傾いた状態から、水平に姿勢を整えている。
皆狐につままれた顔をしている。
「どうぞ階段にお進みください」
ブラムが丁寧に促す。
皆おずおずと階段を上って船内にはいる。
船内に入り通路を左の扉の前で待っているとブラムが
「申し訳ありません。そのお部屋は主のプライベートルームになっておりまして、本日は右側のお部屋にご案内いたします」
と恐縮しながらいってきた。
後ろの扉が独りでに開き、皆、驚き。
はいはい、さっさとは入った入った。
え、俺が先に入れって。
まあいいけど。
真っ先に部屋に入り回りを見渡す。
どう考えてもただの倉庫である。
メタル製の箱が壁に固定されており通路の真ん中にテーブルが置いてある。
パシュン。通路奥の扉が開き、見た目人間風の女の人と、同じく人間風の男の人が出てきた。
服装は白い上下の一体型の服装で所々に黒い刺繍がある。
女性は白衣を着ており、男性のほうは前掛けをしている。
「皆様、改めましてブラムで御座います」
男性が直接声に出して話す。
「ああ、改めてコウジだ。こっちはこの国の王子、ニムロデ
そして現在この国に世話になっているシャムシ王子とイシュナ王女そして御3方の護衛だ」
「これはこれは、お初にお目にかかります。ブラムともうします。この度は我々が大変な迷惑をお掛け致しまして慚愧にたえません」
あらためてブラムは片膝をつき礼を取る。
「お嬢様!」
ブラムが女性の服の袖を引っ張る。
しかし女性のほうはまだ眠たいのか。ボケーっとしている。
「申し訳ありません」
ブラムは恐縮しっぱなしだ。
「いやいいですよ」
ニムロデが困りながら答える。
「かしこまられても困ります」
シャムシも逆に恐縮している
「まあ、本題に入ろう。このままでは埒が明かんだろう」
「そうですな、コウジ様。さてどこからお話いたしましょうか」
「話せるところからでいい、がこれだけは聞いときたい」
「はい」
「俺は未来人だ。この星の、あー……えっと、それなりの未来から来た。それを踏まえた上であなた達の目的を尋ねたいのだ」
「行きなり核心部に入りますな」
「ああ」
ブラムの目をまっすぐ見つめる
「ふむ、お嬢様よろしいですか?」
女性は欠伸しながら頷く
「どうにもしまりませんな」
「このお話をするにはまずお嬢様の所属から御説明いたしたい」
「ああ、何度も言うができるところからでいいし、無理なところは暈してもても構わない」
「ありがとうございます。では。お嬢様はこの銀河系や他の銀河系の有志が形成している連邦、銀河惑星連邦とでも発音いたしましょうか、に所属いております」
「そしてこの星に来た理由で御座いますが近く、といっても直線距離ならば約光の早さで300年離れておりますが、の植民地惑星に敵対している惑星同盟の1部族が植民地戦争を仕掛けようとしているので御座います」
鼻で笑ってしまった。
「すまん、それがこの星にも影響すると?だいたい恒星間航行もできる時代に戦争もなにもないだろう、と思っていたのでな」
「我々も同意見ですよコウジ様。かれこれ小競り合いは4000年も続いております」
「は?不毛な話だな」
「しかし全く平和な期間がない訳ではございませんよ」
「まあ、そうだろうな」
あたりまえだ、そんなアホな話があるか。
「説明を続けます。その同盟の動きがどうも不自然すぎるのです。それでその植民地惑星の近傍にある恒星全てを諜報局は調べる、ということになりました」
「不自然?」
お前らの話しそれ自体が不自然なんだが。
「はい、まず我々は恒星間航行に大型の固定式ワープリングを使用しております。しかしこの大型ワープリング、効率は非常によいのですが制約が御座います。第一に行き先の融通が聞ききません。次にそれを建設する場所、恒星の座標にも制限が御座います」
「制限尽くしだな」
「はい、ただ効率は今まで開発したどの恒星間航行装置ならびワープ方式を引き離すほど良いものなのです」
「つづけてくれ」
「この植民地惑星にはそれほど重要な資源も、またその他の有用性も同盟にとって些細なものであり、これを武力で奪取するのは費用対効果があまりにも悪く、そこまで同盟も馬鹿な訳ではないだろうというのが諜報局の分析です」
ここで大きな疑問をぶつける。
「だいたい同盟とはなんだ?」
苦々しくブラムが答える。
「彼らは戦闘こそが種族の生きる目的である、と宣言している種族の同盟であり、その生存目的がゆえに戦闘力は非常に高く連邦ですら手を焼く者達で御座います」
「なら、戦いたいだけじゃないのか?」
「それならもうすでに連邦に大々的に攻めいっておりますよ。ましてや戦い方を制限するための植民地戦争等という手段は決してとりません」
「植民地戦争ってなんだ?」
「植民地惑星から説明していきたいと思います。まず植民地惑星というのは、我々のこの連邦内の準1等加盟国の宇宙開発の最前線であり、また連邦が所有するワープリングの現在の末端でございます。ただ、このワープリングがない場合もございます。それが2等以下の準加盟国の本星であり、これも同様に植民地惑星と定義してございます」
「準1等加盟国?」
「はい、基本的に戦闘能力は宇宙空間で戦闘が可能で2等、それ以下が3等、そして恒星間戦争が出来るで1等となるのでございます。その以外にもランクを分ける要因はございます。さて、植民地戦争とはこの場合、同盟内にも同じような仕組みがございまして、彼方は戦奴と名乗っておるようでございますが、その1級戦奴、此方の準1等加盟国が戦域を主にこの植民地惑星に限定し、戦力も限定して戦う戦争でございます。当然、同盟内の他の戦奴が援軍としてくることもありますし、此方の準加盟国が援軍として参戦することもございます。それどころか同盟内の正式な部族、連邦内の正式な加盟国も参加する抜け道もございます」
「じゃあ、1等以外の準加盟国にメリットはないんじゃないのか?」
「基本的に連邦は来る者を拒みません。例えば準2等加盟国の1国は近くの恒星の超新星爆発の煽りを受け連邦に救援を求めて参りましたし、準3等加盟国は同盟の1級戦奴がこの星の住人の潜在能力に目を着け侵攻されたところ、連邦に助けを求め、その縁で加入している、なんてこともございます」
「ふーん、ようやく理解ができてきた。が、複雑だな。その1級戦奴が勝手にそこを占拠したいだけで同盟は関係ないんじゃないのか、だいたいさっき同盟内の1部族が、と言っていたのではなかったのかな」
「はいこの1級戦奴が問題でありまして、基本この戦奴は部族の、名をセセミンターと言いますが、支配下にあります。この部族は少々変わり種でありまして、闘争期以外は目的あっての闘争である、と明言しておるのでございますよ。また、この支配下にある戦奴も闘争期のある、なしと言う違いはあるものの、基本的に同じ考えであるといわれております」
「闘争期?例えが悪いが発情期みたいなものか?」
「まあ、概念的には近い物でございます」
「発情期?」
おこちゃまニムロデが聞く
「子孫を残したくなる期間のことだ、たぶん闘争期は戦いたくなる期間のことだろう」
ニムロデに暈しながら伝える。
「はい、基本的に。話を戻します、これらの理由から諜報局は彼らの目的を探るために有りとあらゆる可能性を探ってこの星に来た、ところでございます」
「事故ったんだけどね」
突然腕を組ながら眠そうに立っていた女性が発言した。
「これはこれは、お嬢様、もう御加減の程よろしいのでございますか?」
「ええ、大丈夫よ。はじめまして、私がこの宇宙船の主そして銀河惑星連邦、連邦統合諜報部のエルザよ、それが一番発音が近いかしら。ここからは私が説明するわ、いいかしら?」
「はいはい、どっちでも」
投げやりに答える
「だめですよ、コウジ殿。だから女性に恐い顔されるんです。はじめまして、エルザ様」
ニムロデが挨拶する。
「ああー、リアルショタよ。ジュルリ」
え?
シャムシとイシュナも引く。
ニムロデは渡さないぞ。
「お嬢様! よだれ」
「ハッ、これ失礼」
手で涎を拭き取る。
「えーっと、ゴホン。気を取り直して。セセミンターの気合いの入れようと戦奴達の動員状況が少し、いや、大分おかしいのよ。ただ、これ以降は1級機密に当たるから、ごめんなさい、これ以上は話せないわ、ブラムは結構2級機密も話したようだけどね」
「いつもいつも規則を破るお嬢様の言葉とは思えない慎重なご意見。このブラム嬉しくございますぞ。その態度のまま是非、是非、お部屋のほうも御片付け願えますでしょうかな」
「それは嫌!あれは私の宝物よ!個人所有物の運搬の規則から言えば」
「はいはい、話が進まんよ」
そこら辺は後でして、めんどいから。
「そうね。あとでじっくり話し合いましょうブラム。だいたい」
「で、何で事故ったんだ」
無理矢理割り込む
「説明してもわかるかしら?」
「それはこっちで判断する。簡単に簡潔によろしく頼む」
「ああー、めんどくさいわー」
「あ?」
なめとんか、このアマ。切れそう。
「ご説明いただけないでしょうか?エルザ様」
ニムロデがお願いする。
「もちろんよ、えーっと僕? お名前はニムロデ君だったっけ?」
エルザが腰をちょっと屈め、ニムロデの手を取り答える。
ニムロデは頷く。
「私達は調査のために此処から一番近いワープリングにエネルギー供給を受けて、そのワープリングからこの恒星系に来たの。ワープしたところまでは順調だったんだけど、ワープホールに入ってしばらくしたらワープホールを形成する物が、ある一点に吸いとられると言う現象に出合ってしまったの。それの所為でワープホールから出てくる位置に狂いが生じ、この星に落ちてしまったのよ」
「元々どこに出るつもりだったんだ?」
俺が聞く。
「元々は第4惑星と第5惑星の間の第5惑星寄り、その間に小惑星帯があるから見つかることは少ないと思っていたし、それにハビタブルゾーン外だったから高度に発展した知的生命体に見つかる心配は少ない、と踏んだのよ」
「ハビタブルゾーンってなんですか?コウジ殿」
「恒星、この場合太陽だが、太陽のお陰で液体の水が存在できる場所のことだよ。基本的に生命は水がなければ生きれないと考えてる人たちが考えた概念だよ」
「あら、なんで知ってるの? もしかしてあなた同盟の人?」
「お嬢様、さっきの説明、お聞きでなかったので御座いますか?」
「なによー、コールドスリープから出てまだ微睡んでいたのよ。いいわよ、どうせあたしなんか」
また脱線しそうだ。
「未来人だ」
「は?」
頭おかしい人を見る目で見ないでくれるか。
「いや、だから俺は未来から来たんだ」
「あなた頭、大丈夫?」
はっきりと言いやがった。
「いいたいことはたぶん解る、が事実だよ」
「本当に?」
「嘘言ってどうする。何のメリットが俺にある」
「助けてあげましょうか?」
バカにするようにエルザが言う。
「光速で動く宇宙船の中でコールドスリープしてろってか?」
俺は鼻で笑いながら毒づく。
「それが解る文明レベルなのね」
同じく鼻で笑い返される。
「準2等レベルだ。やろうと思えば恒星間航行も出来る。実現にはお金がかかりすぎてやる気が誰もないが」
「まあ、私達も今は助けようがないけどね」
「宇宙船の機能は完全に死んでるのか?」
「ええワープと通常航行系がね、このまま救援を待つわ」
「このままコールドスリープする気か?」
「いえ、その間もついでだからこの星とこの恒星系の調査を続けるわ。第一そんなことして油売ってたら上司にこってり絞られちゃう」
「救援まで何年ぐらいかかる?」
少し考えてから。
「交信、と言っても通信筒なんだけど、するのに5年。最寄りのステーションからこっちにくるのに2年、最短7年ぐらいは掛かるかしらね」
「そんなにかかるのか」
「といあえず、お世話になってもいいかしら?ニムロデ君」
「え?もちろんですよエルザ様」
「やったわー。あー、あと様はやめてくれないかしら、エルザでいいわ」
「えっとエルザさん、じゃダメですか?」
「まあそこら辺でいっか、いいわ。よろしくねニムロデ君」
おいおい、話を勝手に進めるんじゃないよ。
「はい、エルザさん」
「いいのかい?」
シャムシが聞いてくる
「わからん。取り合えず彼女達の行動を見て判断しよう」
「特産品になりそうなものってこの星にあるかしら?」
え、イシュナ交易するつもりか?
「この宇宙船はどうするつもりだ? ブラム」
「分解して異空間に隠しておきたいと思います。どのみち通信のために再利用可能な部位は再利用して使わねば、通信にはさらに時間がかかってしまいますから」
「そうか。ああ、それともうひとつニムロデに危険はないんだな?」
非常に重要な質問だぞ。
「う、そ、それは。えーっと、なんといいましょうか。その」
ブラムがどもる。
「どうなんだ?」
再度聞く。
「お嬢様にはきつく言いつけるようにいたします」
「よろしくたのむよ」
皆で宇宙船をおりる。
「それでは皆様。この霧の範囲より外でお待ちください。少し宇宙船を収納してまいります」
エルザはまだニムロデと話してる。
「お嬢様!手伝ってください」
ブラムに首根っこ捕まれ連れていかれる
「ああー、ニムロデきゅんとまだ話してるのにー。ブラムのいけずー、離せー、鬼、悪魔、」
ニムロデをシャムシが連れて霧の外にでる。
「文明が進むと人は皆あんな風になるのかい?」
俺にシャムシが俺とエルザを同類だ、と見るように聞いてくる。
俺に聞くな。
俺はエルザと違って別にニムロデとにゃんにゃんしたいわけではない。
エルザ達の作業が終わるのを待って俺達は王宮に帰った。




