第一章 転移 第6話
前回運命を左右する人が出てくる、と言ったな、あれは嘘だ。
まさか自分がこのネタを使うとは・・・
よく動画とかでみているこのネタを・・・・
ごめんなさい、触りまでしか書けませんでした。
とりあえず、投稿します。そして、ちょっとばかし長いです。
バビロン市についてからの半年間、俺はスポンジに水が吸収されるかのごとく言葉を教わった。
イシュナやシャムシ、イシュナの腹違いの兄らしい、や重臣のサイードさんに手取り足取り教えてもらいながら。
サイードさんはイシュナのお母さんのお兄さんらしい。
関係性がわからなかったのでイシュナに家系図を書いて聞いてみた。
イラカブカブ王は妻が4人子供が11人もいるらしい、そのうち第1夫人が男子2人女子3人、第2夫人が男子1人女子2人、第3夫人、イシュナのお母さんだ、がイシュナと妹のイシュニ 3才、第4夫人が男子1人と言った具合らしい。
ただイシュナのお母さんにすら、会ったことはないけど。
結婚した女性は人前に基本的に出ないらしい。
ただ、著しい例外もあるけど。
そしてその例外中の例外、とでも言うべき女性がサイードさんの奥さんのジュナさん、つまりイシュナの叔母さん、だ。
彼女は商家を実質的に切り盛りする女主で穀物や資材、鉱物相場にも手広く商売をしているらしい。
イシュナはこの叔母さんによくにている。
聞いたところによると、王がイシュナが生まれてしばらくした時、ジュナさんに似ているのに気がついて、サイードさんとこうやり取りしたらしい。
「この子はジュナによくにている。ジュナのように賢く逞しく育てることはできるか?」
「ジュナのように賢くですか?お止めになったほうがよろしいと思いますが。」
「いや、女とてジュナのように賢くなれるのだ。どうして娘がジュナのようになれぬことがあろうか、加えてジュナにも似ておる。」
たまたま、その時はお金に困っていた時期で、王はイシュナを王の財布みたいなものにしたかったのだそうだ。
イシュナはジュナさんの所で勉強し、たまにジュナさん目当てで通っていたシャムシと一緒に、色々話を聞いたりしていたそうだ。
そしてそんなイシュナの才能、と本人が言うには美貌、に目が眩んだ都市国家マリの王、ヤギト・リムに求婚されてしまった。
ただ当時まだイシュナは8才、王は当然要求を拒絶、ただ代替案は出していたようだ、交渉が続いていたようだが、突然騙し討ちにあったらしい。
一様イラカブカブ王は戦に強いらしい、昔バビロン市の求めでユーフラテス川下流のウル市との戦いに援軍で参加したときは縦横無尽の活躍をしたとかなんとか。
その時の好でバビロン市に亡命、王宮の一部を借りているようだ。
もっとも、すでにイラカブカブ王の支配地域の7割はヤギト奪い取られ、残り3割が強固に頑張っている状態なんだとか。
その支配地域に残り、統治兼抵抗を続けているのがシャムシの兄アミヌらしい。
そしてバビロン市の王、シン・ムバリド、彼はかつてウルに領土を奪われ、その奪還にイラカブカブ王の援軍に助けられた、のはさっき言ったばかりだけど、このまま孤軍奮闘出来るだけの国力も無いどころか周りを敵に囲まれまくっており、まさしく四面楚歌だ。
まずユーフラテス川下流には再進行を目論む都市国家ウル。
この都市は現代で言うところのペルシャ湾の近くに有る都市でユーフラテス川を利用した水運と海を利用した海運の中継都市としてバビロニア地方南部を支配している。
そして次にウルの北側に位置するラルサ、ここも強大だ。南部メソポタミヤを支配しペルシャ湾岸にも支配地域を持つ。
ラムサの王リム・シン、元々は彼の父親クドゥル・マクブの傀儡であったが父の死後、頭角を表し敵対するウルおよびイシン両市を次第に圧倒していったらしい、当然シン・ムバリド王は負けて領土を奪われたままになっている。
次はイシン市、元々ラルサを支配していた都市国家であったが近年国力を落としつつある、ここにも当然シン・ムバリド王は負けている、というのもイシンがラルサとの戦いで国力が落ちてきたすきにイシンとラルサの間の都市ウルクがイシンから独立、ラルサの属国という立場だったのだが、シン・ムバリド王はこの都市と同盟して国力の落ちたイシン市と戦った。
最初は確かに勝っていた。
しかしなにかあんたらなにか忘れてることあるやろ? 的な感じで、ラルサ市がウルク市を攻撃、結果ウルク市は滅亡。
ついでに今までなにやってくれとったんじゃボケー、的な感じでイシン市にも負けた。ただイシン市は近年東部メソポタミアの覇者であるエシュヌンナと同盟関係にあり、ラルサ市との戦いにおいて勢力の均衡がとれている、とも言われている。
次はエシュヌンナ、この都市はチグリス川沿いにありチグリス川をつかった水運の中継都市として、またメソポタミヤの更に東部に対する交易の中継拠点として栄えている、当然負けている。
最後にユーフラテス川上流側にあるのマリ。この都市もさっきでてきたエシュナンヌと同様に、北部メソポタミヤ、南部メソポタミヤさらにアナトリア、現在のトルコ、等を水運で結ぶ交易中継都市でユーフラテス川のちょうど真ん中辺りに有るという立地を最大限に利用し国力、影響力は現代のシリア北部のアレッポに至るまで有るらしい、アレッポってこの時代もアレッポっていうのだ、と聞いたときちょっと笑ってしまった。
ここの王宮はメソポタミヤでも1、2を争うほど豪華なんだとか。図書館はもっともすごいらしい、なにせユーフラテス川を使って運ばれる品々の細小や情報、さらには外交文書まで保管されているらしい。ただヤギド王はそんなに周辺国に軍事的圧力はかけていないらしい。
手にいれたい女性がいる時を除くが。そして手にいれたい女性は今バビロン市にいる、とだけいっておこう。
そんなこんなで周囲の状況を説明し終わったところで この半年間何をしていたかを説明したいと思う。
当然、言葉を教えてもらっていた、だけではない。当たり前だがイシュナも忙しいらしい。
王宮に続く大きな中央の道は商家や露天商、飯屋が並ぶ通りでそこで人の動きや、物事の動かし方、揉め事の解決のしかた等を見て回っていた。鍛冶屋にも行ったし、木工所、パン屋、神殿、ジュナさんとこの商家にも行った。
その商家は支店らしく本店はマリに有るらしい。ジュナさんがこの支店にきたときイシュナとシャムシと一緒に会いにも行った。ただ、まだあんまり言葉がわからない時だったから、何言ってるのかあんまり解らなかったけど。
あとで聞いたところによるとマリでの立ち位置と相場の話だったようだ。
ある時王宮にてシャムシが男の子と話しているのを見た。
可愛い男の子なんだけど、歳はイシュナより1才下でシン・ムバリド王の子供の一人なんだとか。名前はニムロデ、シャムシに憧れているのだ、と本人は言っていた。二人はよく護衛をひきつれ郊外や町中をよく見て回っていた、たまにそこに俺も参加してたりする。
ただ馬に鐙が無いと乗れ無いので鍛冶屋に作ってもらった。
というのもさすがに自転車じゃ、馬の疾走に追い付けないことがあるし、坂毎回上るのきついからという理由と鐙なしで乗ろうとしたら怖かったというのが、あとニムロデが落ちそうになってる所をよく見かけたためというのが、理由である。
その一団にイシュナも同行することが多々有る。
最初ニムロデは嫌そうな顔をしていたが、口喧嘩でコテンパンに負かされてから従順な犬のように振る舞ってた。
シャムシが言うに 「僕もたまに勝てないんだからニムロデが勝てる見込みはない」だそうだ、もっともイシュナは「兄様にも負けるつもりはないけどやってみる?」と言っていたが。なおそれに対する回答は「ごめんなさい、兄としての威厳をたもたせてください。」だとかなんとか。
鐙もイシュナに見せると商品になると言ってくれたけど売っちゃダメよ、とも言われてしまった、まあ当然か。
シャムシが言うにはこれはチャリオットに騎馬が対抗する時に切り札になりうると言っていた、主に費用面で。お前らはいつもお金が先か。
あとなんと交易品にテンサイが野菜として売られていたことだ。最初はただの太った大根かと思っていたのだが、食べたら甘かったついで泥臭かった。この根は生では食えん。よって砂糖にすることに決定。
最初は苦労した。
どうやって砂糖を取り出すか知らなかったからだ。
まず始めに、煮てみた。ただの甘いかぶの煮物ができただけだった。
次は細かくたんざく状に切って煮て途中で引き上げ残り汁を沸騰させてみた。というのも一回目の煮物の時、煮汁のほうが甘かったということに由来する。で結果は成功、ただしアク取りをサボっていた成果ちょっと苦い。
最後は改善点を、ただちゃんとアクを取り、皮を剥くだけだが、ふまえた上で砂糖を精製した。
ちょっと黄色い。
こっちではこれの葉っぱを食べ、栽培はアナトリア地方でしか行ってないようだ。ついでに葉っぱだけっていう商品もある。
実を言うとこの半年の間、イシュナ達は人を商人と勘違いしていたようで、言葉を覚えたら、商人として便宜を図ってもらおうと考えてたようだ。
その恩返しと言うかなんと言うかで色々なものを作ってしまった。馬具の鐙、麦藁を使った蹄鉄藁なのに鉄と言うのはおかしいかも、轡や鞍(サドルです)などは既にあり、結構丈夫である、を作ったりもしたし、鉛筆、ただ単に黒鉛を木で挟んだだけ、などを作った。
現在は紙を作ろうとしている。
とても難航している。
木それ自体が稀少であるということがおもな要因であり、現在代替原料をさがしているところだ。パピルスに使う草というのも代替案の候補ではあるけど、パピルス自体がエジプト方面の主要交易品担っており、ジュナさんによるとこの草を交易するのは禁じられている、のだそうだ。
ただパピルスを見たところ紙と言うのはちょっと違うような気がするが。
現在の代替案の最有力候補は麻なのだが、これ自体、薬としても使われており、大分お高い値段となっている。
できた紙も、まあ和紙よりちょっと脆いぐらいのところまで来ている。
主に費用は砂糖を売り出して得た収益とジュナさんの投資で賄われている。
軍事面ではスタッフスリングを教えてあげたり投げ槍用に投槍器を教えてあげたりした。シャムシは遠距離武器が好きらしい、主に損害が少なくなるから、戦死した遺族に渡す見舞金が減る、という費用面でのお話であったが、それならばと近距離戦闘も長い槍でやればいいのではないの、と言ったらよく使われる槍を持ってきてくれた。
既に十分長かった。
ついでにニムロデと一緒に一般的な戦闘と言うのも教えてもらった。隊列を組み槍と大盾で武装した兵が敵とぶつかっている間にチャリオットや騎兵が相手のチャリオットや騎兵を倒し、迂回して後方を攻撃、これを撃破するらしい、ゲームと違って槍兵は騎兵より弱いらしい。円陣や方陣を組むこともあるらしいが、歩兵は動けないしかし騎兵は動ける、しかもチャリオットは弓や投げ槍で攻撃してくる、この状況下では死んでいるのと同義らしい。
こんなことを考え、色々と試行錯誤してさらに2ヶ月たった頃とある事件が起こった。
それがこの星の運命すら、いや現代と言う物の運命さえも、左右するとはこの時は全く一切、思いもよらなかったのだ。
とある冬の夜、大きな火の玉が空を横切った。バビロン市内からでも見えたらしい。そしてそれはバビロン市の支配下にある村の外れに落ちた。
最初、俺は隕石でも落ちてきたのかなと思っていたし、すぐに回収できるだろうと思っていたのだ。
バビロン市の兵士が落ちた物の確認とあわよくば回収、俺が頼んだ、元々見に行くだけだったらしい、に向かった。
だが次の日、慌てて帰ってきた兵士は皆、顔面蒼白であった。
村に到着するまでは順調だったらしい、村に入ったら状況は一変した。村の其が落ちたところまで引きずった跡がとても長く残っており、結構凄い音と揺れがあったみたいだ。村でも若い衆が落ちた物を見に行こうとしたりしていたのだけど落ちた物の回りは霧が発生しており近付けないらしい。何でも、近づくと恐ろしい怪物に襲われ、最悪気を失うのだとか。
ただ襲われても誰も死なないが気味悪がって近づきたくないらしい。
最初村に行った兵士達の隊長は村人達が嘘を言って落ちた物を独り占めしようとしているのだろうと思ったみたいだ。
考えてみると当然だ、怪物が出る、が襲われても死人はでない、怪我もしない、気を失うだけ、さすがに嘘をつくのがへただな、なんて思ったと。
それでこう言った。
「そんな化け物我々が退治してくれるわ!」と。
で結果はご覧の通り全員気を失い村人に介抱されて気がついたらしい。即座に隊長は村人に謝り、兵の半分を防衛と警戒に残し、報告に帰還、今私達の目の前にいる。
「うーん」シン・ムバリド王は唸って考えている。
「王様、これは由々しき事態ですぞ、すぐに追加の兵を派遣してその怪物を打ち破りませんと」
重臣の一人が喋るのを遮って王は
「わかっておる、問題は、今、動かせる兵があまりにも少ない、と言うことだ!」と答える。
「しかし放置するのはあまりにも危険です!」
「しかし、怪物は霧のなかから出てこないかも知れん、縦しんば襲われたとしても死ぬわけでもない。」
横にいたシャムシは笑いながら小声でこう言った
「あはは、あの王は希望的観測が本当に得意だな、ニムロデとはえらい違いだ。」結構ニムロデがお気に入りのようだ。
「ですが、そうでないかもしれません!」重臣は切り返す。
隊長も続く
「あの怪物は私の首を確かに切断いたしました。私は既に死んでおりあの怪物の気まぐれで生かされているだけかもしれません、もしくは更なる勇士をつれてくるための餌、にすぎないのかもしれません」
「うーん」さらに王は悩む。
「コウジ殿、あなたはあれについてなにか知っているのではないのですか?」
隊長に詰問されてしまう。たしかに、もし石が有ったら回収をとお願いしたから、なにか知ってると思われてもおかしくない状況ではある。
シン・ムバリド王がイラ・カブカブ王に目配せした後に発言を促してきた。
「空から落ちてきた石、かと思っていたのですが・・・別物のようです。もし許されるなら調査したいのですが、お許しいただけますでしょうか?」
「許す、とりあえず博識なコウジ殿に調べてもらってから兵を動かそう。それでよいな?」重臣に聞く。
「すぐに兵を動かせるように準備はいたしておきます。」
「よし、そうしよう」
俺はすぐに準備を始めた。
そしてシャムシも準備していることに気づく。たぶん付いてくるつもりだ。
「あれ?何処かにお出掛けですか?」ちょっと意地悪してみる。
「え?ついていくつもりだよ君一人じゃ危ないからね。」
ほんとこの王子様は。
「いや王子、自分の立場ってのを考えられたらどうです?」
「大丈夫父上には許可をとった」
「え?」
え?マジでなに考えてるの?あのオッサン!
「いや、ほらイシュナもついていくつもりだよ」
「は?」
イシュナおまえもか!
「それにニムロデも付いてつもりだよ」
「呆れ果てて物が言えん」
あ、口に出しちゃった。
まあいいや、この放蕩王子達め。
そんなこんなで隊長以下、俺、シャムシとその護衛、イシュナ
ニムロデとその護衛が村に向かった。
ニムロデ君、君チャリオットに乗ってきたのね、しかも護衛達は皆、重武装じゃない。
とか言う俺は軽武装、青銅の剣と長弓のみ、その内複合材にしようと思っていたが間に合わなかった、鎧なし。
ただ王子達とイシュナはただの遠出気分みたいだ。
護衛はいまから死刑執行台にいくかのごとく顔色ではあるが。
しばらくして村に到着村に残った兵士と村人が出迎えてくれた。
先ずは村の周囲を調査、お目当ては、引きずった跡だ。
幅は平均的な人間が寝そべった長さの24人分ちょっと足りないぐらい170×24≒40メートル。
跡は長さ・・・・結構あるな、見えないところまで続いてるよ。
うん?
これはもしかしてタイムパトロールが迎えに来てくれた?
のはあり得ないので、宇宙船かそこらだろうな。
ある意味厄介な。
まあいい霧に近付くか。
霧箱つくってもってこればよかったか?
まあ今さらいってもしょうがない、それに村人に死んだ人間もいないし、大丈夫だろう。
先ずは、私だけでいくか。
皆にそう言って霧に近付く。
おお?なんかでてきた赤くて顔が怖くてシマシマのパンツ着て、ほーメソポタミヤにも東洋の鬼は出張してくるのか、出張手当がいいんだろうな。
な訳あるか、と一人ボケ突っ込みをしながら回れ右。
霧の外に出る。
うーん、よし追いかけてこないな、次はみんなでいってみよう。
「ねえコウジ殿、怪物、出ました?」
ニムロデが恐る恐る聞いてきた。
怖がってるなら聞くなよ、てかついてくるなよ。
「そんな顔をしている、と言うことは何か考えがある、と言うことだね?」
シャムシが聞いてくる。
「ある、といえばある。とりあえず霧の中に入った兵士または村人に一人づつ話を聞きたい。」
「わかったよ、話してくる」ニムロデが怖いのか飛び出していき、護衛が追いかける。
「怖いなら来なきゃいいのに」
イシュナがちょっと笑う。
「男の子だからね」
シャムシも笑いながらこたえる
「シャムシ兄様はやさしいわね」
いや、お前らも口許が怯えてるぞ。
まあ、優しい俺は指摘しないでおこう。
「連れてきたましたよー、コウジ殿」
ニムロデが兵士の一人をつれてくる。
「はじめまして コウジといいます。」
「はい、お噂はよくお聞きしています。」
「よく王子達やイシュナをつれ回してる商人と言う噂ですね。」
緊張をほぐすために当たり障りの無いところから質問を始める。笑いながら兵士が答え王子達にジト目をされて表情を戻す。
「お聞きしたいのは霧の中の怪物の姿形です。」
「なるほど」
あまり思い出したくないのですがと前置きしながらこうこたえる
「神話に出てくる怪物みたいです」
「正確におねがいしてもいいですか?」
「はい、頭は牛、背中には梟の翼、手には甲に長い爪、脚はジャッカルです。」
あら何種類も怪物がいるの? それともみた人によって違うの?
「有難うございます」
お礼を言って次の人をつれてきてもらう。
いまこの村にいるこの霧に入った全員に話を聞き終えると、
王子達もイシュナも首をかしげていた。
さて、皆さんのご意見は、と
「みんな、どう思う?」
「コウジ殿、皆みたものがこんなに違うなんて、怪物が何種類いるのですか?」
「なるほど、ではシャムシはどう思う?」
「何種類もいるわりには、この霧狭いような気がするよ、だいたい同じ時に襲われた兵士達が、お互い見た物が違うと言うのはおかしすぎないかい・」
「つまり?」
「わかりましたよ、コウジ殿、この怪物は見た相手によって姿を変えれるんです。」
どうだと言わんばかりにニムロデが答える。前にちょっと謎なぞで苛めすぎたようだ。
「いやそれならば同時に見た怪物が違う形だ、と言う説明にはならないんじゃないかしら?」
「そうだね、イシュナの言う通りだ。そもそもこの怪物は実態があるのかい?」シャムシがイシュナの発言に続ける。
「影なのですか?」ニムロデが答える、ああ、謎々に引きずられている。影は見る角度によって姿をかえると謎々の答えにしたからだ。
「それを踏まえてもう一度いってみようと思う。で、いってみるかい?」
「うん今度は僕もいってみるよ。」
「私も行くわ」
二人が即答する。
そんな二人をみて。
「あ、う、ぼ、僕もいきます。コウジ殿」
可愛いな~ニムロデきゅんは~
おちょくろうと思い、声を出そうとするや
「怖いならこなくてもいいんだよ、ニムロデ」
シャムシがニムロデの頭を撫でながらそう言う。
シャムシ! 俺がニムロデをおちょくるタイミングを潰したな。
まあいい俺は大人だからここは我慢だ。
く、ニムロデが嬉しそうに撫でられている。
「さて、いくか」
護衛も含めて霧のなかにはいる。
何歩か進むと怪物が現れ、こちらを威嚇する。
うむ、皆は何に見えるのだろうか?
まずは素数でもいってみるか。
「皆、ここで止まっていてくれ」
そういい 手を叩く。
まず2回、次に3回、5回、7回、11回と手を叩いていく。
「なにをしてるの?」
イシュナが聞く。
「君の得意な数学だよ」
「えーっと、素数?」
「そう」
既にこの時代、素数の概念があることには驚いたが、よくよく考えればユークリッドだって紀元前の人間だし、高度に灌漑整理された文明において数学が発展してない、などということはありえない。
まあ女の子が得意だと言うのはちょっと驚きではあるが。
そしてそろそろ叩き難くなってきたところで、怪物がこつぜんと姿を消し、頭のなかに声が響いてきた。
「はじめまして、皆さま方」
みなあたりをキョロキョロと見渡す。
「ああ、はじめまして。俺はコウジだ」
皆、自己紹介をする。
「なるほど、これはご丁寧にどうも有難うございます、私はこの船の主に使える者で、名を、この星の言葉で発音すると一番近いのは、ブラムといったところでしょうか。」
「ほう、なーんだ。タイムパトロールじゃないのか」
「ほほう、その単語が出てくるとは」
ブラムは少し驚く。
「ん?そんなに驚くことかい?俺達の頭のなかを覗いたんじゃないのかい?」
「いえいえ、流石にそんな事をするのは礼を失する行いです、第一私の行動規範にも違反します。」
「そうか、じゃあ、名前を教えるのも不味いのではないか?」
「いえ、名乗られたのに名乗り返さないのもまた失礼でありましょう?」
「まあ、そうだな。それよりなにか手伝えることはあるか?」
「はい。是非、お願いしたいことが御座います。」
「うん、可能な範囲内でよろしく頼む」
「では船内にお越しください、といっても現在船体、船内共には傾いております、十分ご注意ください。入り口を赤く光らせます。そちらの下までお越しください、梯子を精製いたします。」
「了解した」
声が聞こえなくなって赤く光っている所の下部に向けて歩き始めるとイシュナが質問してきた。
王子達も聞きたがっている顔だ。
「どういうこと? あれは誰? 船ってなに? タイムパトロールって?」
「ああー、答えてもいいのかな?」
俺はブラムに聞く。
「お任せいたします。なにせ助けてもらう立場でありますので。」
また頭に声が響き、皆驚く。
「すべてきこえてるのかい?」
シャムシがきいてくる。
「まずこの物の正体だが、宇宙船だ。」
「宇宙船?」
「そう。星の海を航海するための物とでもいおうか、ブラムはその乗組員、あるいは・・・」
機械と言う可能性もあるが理解できそうにないから黙っておこう。
「タイムパトロールって?」厳しく、イシュナが聞いてくる。
「時間を管理している警吏のことだよ」
「なぜ彼をそういったの?」
「うん?聞きたい?」
「言いたくないならいいわ」
むすっとしながらイシュナが答える
「俺がどこからきたか、と言うのと関係してくるんだよ」
「話せないの?」さらに聞いてくる。
「二人だけなら話せるよ」おどけながら返す。
「わかったわ絶対に話してね。」
騙されないぞと言う顔をしながら俺の手をギュっと握る。
はは、シャムシが見てるぞー、あれ? 俺と目が合うと睨んできた。
「わかったお前達にも特別に話を聞かせるよ」
「とうぜんだね」
「そうです、水くさいですよ、コウジ殿」
とかなんとか言っているうちに下部に到着した。
宇宙船は楕円形で長さ100メートルほどが見えているが霧のせいで、それ以上は見えない、高さはせいぜい15メートルもないだろう。
そして、その船は腹を見せながら頭を地面にめり込ませている。
これで乗組員が無事と言うのはやっぱり、とおもっていると宇宙船の表面が液体の金属のように梯子状に地面までおりてきた。
「おい誰か丈夫な紐、人間を支えれるぐらいの、を持ってきてくれ」
「わかりました」
護衛の一人が駆け出していく。
しばらくすると藁で編んだ長いロープを持ってきてくれた。
「よし、まずは俺が入る」
ロープを自分の体にくくり梯子を上る、
案の定、船内は左手奥に傾いている。
「おじゃまするよ、次はどうすればいい?」
ブラムに聞く。
「次は左の前方区画においでください」
「了解」
ロープの端を入り口横の手すりに固定して、反対側を自分の腰に巻くつける。
そしてゆっくりと目の前の廊下を下っていく
「そこで止まってください、はい、左の扉です、開けます」
「靴はそのままでいいのかい?」
「はい、そのままで結構です。」
体を傾けたまま扉を潜る。
「おーおー、めちゃくちゃに散らかってるじゃないの」
「はい、主の趣味で集めたがらくたで御座います。そこにある右側の扉が見えますでしょうか?」
「ああ、あれかな」
船内は元々薄暗く、しかもこの室内は椅子や机が散乱し、本や服で溢れかえっている。さしずめ独り暮らしの女の部屋って感じだ、まさしく日本にいる看護師の姉の部屋みたいだ。
扉を塞いでる物をどけていくのだが最後に難敵が現れた。本棚である。
「メタリック風のこの本棚がじゃまで扉にたどり着けないな。動かせないのか?梯子を精製したように」
「その、言いにくいのですが、それは主が規則に違反して船内に持ち込んだ品々でして、私の現在の余力ではどうすることもできません」
「そうか、これは重いな。だから何人か船内にいれてもいいか?」
「はい、もちろんでございます」
よし、そうと決まれば呼んでこよう。
さらにロープを取りに行かせシャムシとその護衛二人を船内に入れた。
「うわーなんかジュナおばさんの部屋みたいだ」
そうなのか、と言うか、お前入ったことあるのか?
「とりあえずその本棚を持ち上げてどけたいんだそうだ」
「わかったよ。皆一気に持ち上げよう」
シャムシと護衛一人、俺ともう一人がペアになって本棚を横にどけた。
「おーい、どけ終わったぞ」
「有難うございます、これでようやくご主人様にも、この事態の解決に役立っていただけます」
「そのご主人様はこの中にいるのか?」
「はいコールドスリープで眠っております」
「そうか、無事なら無事で話を聞きたいところではあるが」
「はい、ただ今から起こしてもこの星の自転時間で1周期は掛かります」
「じゃあ、話はその主から聞いた方がいいのかな?」
「そう、していただけると私は助かります」
「ほかに手助けはいるかい?」
「いえ、いまのところは十分で御座います。」
「わかった、また明日こさせてもらおう」
「はい主共々お待ち申し上げております。」
こうして俺達はこの宇宙船を一旦後にして王宮に戻った。
実際のところ女性の部屋が汚いかどうかは、 ガチャン あれ誰かきたようだ・・・・ギャアー、ごめんなさいモデルを勝手に使いました(嘘)。
世の中の一人暮らしの女性を誹謗中傷する意図はありません、ここにさきにお詫びしておきます。




