スキル?呪いでしょ?(スキルハント番外編)
2020年
この物語は、薊野 惜と言う高校生の、卑屈で残念な物語
・・・・・何故人は争う?
「誰かが悪いからだ」
・・・・・何故犯罪者は増えるの?
「彼らもまた、誰かに心を壊されたからだよ」
・・・・・君はなんで生きてるの?
「・・・・・・・さぁ?意味なんてないんじゃないかな?」
心の中でそんな問答をしている内に惜は彼の通う枯木高校に着いた
何故、枯木なんて名前なのかって?
この高校に植物を植樹してもすぐに枯れてしまうからだよ
余りにも殺風景な校門を通り、同級生や後輩達に話しかける事もかけられる事も無く後ろ指をさされ、ヒソヒソと自分の悪口を言う全校生徒の雑音を引きずりながら彼は自分の教室に向かう
自分の席はいつも通り何の変哲もなくそこにある
便利だからそこで妥協している
授業中に寝てても怒られないからそこにある
教室前のトイレ横に彼の席はあった
「あぁ、やはり皆親切だね、1ミリのずれもないよ・・・・・」
彼は無表情から楽しそうな笑顔を浮かべ
「世界はいつになったら滅びるんだろうね?」
机の横にある窓をあけながらそう言い放つ
『薊野 惜
枯木高校3年生
得意科目(自称全て)
不得意科目(他称全て)
転校回数 小学校から現在含め 46回
(原因 自主退学)』
さてと、この枯木高校に来てもう3ヶ月になるけど、今まで行った高校となんら変わりはない
いや、でも一つだけ違ってた
生まれて初めて友達が出来たよ‼︎
??「・・・君も相変わらずそこの席が気に入っているね」
どうやら今日は後ろから来てくれたようだ
??「そんな所に机はいらないんじゃないか?」
その時、机から白い虫が湧き出し、ただの粉になってしまった
惜「あ〜あ、また壊して、これで何回目だよ蟻塚君」
蟻塚「俺は不愉快な物は粉砕するんだよ」
青縁眼鏡に学ラン、至って優等生の様ななりの蟻塚は至って真面目な顔でそう言った
『蟻塚 軍廃 (アリヅカ グンハイ)
高校3年生
得意科目(全教科)
不得意科目 (テスト)
呪い【白紙戻し】
シロアリを使い、有機・無機物問わず破壊してしまう呪い
本番に弱いと言う訳では無く、試されているのが気に入らない為、テスト時は欠席している』
惜「相変わらず恐ろしい呪いだね〜、それは人も粉砕出来るんだっけ?」
惜は動揺することもなく淡々と言葉を続ける
惜「まぁいいや、僕の夢は学校の机を全て撤廃することだしね」
それは即ち・・・・
蟻塚「全校生徒を追い払うと言う事か?」
惜「蟻塚君、追い払うって言うのは無理矢理になっちゃうじゃないか、僕は無理強いは嫌いなんだよ」
蟻塚「じゃあどうするんだ?」
惜「彼らには自主退学をしてもらおう、何も惜しむ事は無く、堂々と胸を張って・・・ね?」
(相変わらずこの人は的を得ているのかいないのか分からない発言をする・・・)
蟻塚は困り気味に適当に相槌を打ちながら話を聞いた
ゴーン ゴーン ゴーン
惜「おや?ホームルームの時間だね、君の教室に戻らなくてもいいの?」
蟻塚「俺は椅子も机もないからな、何故なら俺のクラスには椅子も机もないからだ」
それは即ち全て破壊したと言うことなのだろう
惜「蟻塚君、物は大事にしなきゃいけないんだぞ‼︎」
蟻塚「野球部の備品紛失、サッカー部員全員負傷、テニス部員全員退部、科学同好会実験機器全破損修復不可、エトセトラエトセトラ、お前に一番言われたくないな」
惜「僕は部活が嫌いなんだ、あ、帰宅部は大好きだよ、もはや愛しているね」
蟻塚「結局、現段階で部員全員が帰宅部状態だけどな」
惜「いい事じゃないか、学校に縛られずにみんな平和に穏便に静かに下校するのが一番だよ」
蟻塚「その考えが通れば大半の部活は廃部だろうな」
惜「楽しそうじゃないか‼︎蟻塚君、君もいい笑顔しているじゃないか」
蟻塚「薊野、お前もなかなか薄気味悪い笑顔をしているぞ」
廊下の隅で捻くれた男2人がニヤニヤ笑いながら野望を語る
??「はぁ、先輩達は相変わらず気持ちが悪いですね」
誰も通らない廊下に小柄な少女が一人、黒の縦縞が三本入った白衣を学校指定のブレザーの上に着ていると言う身なりだった
髪はサイドテールにしており、耳にはハエトリソウのイヤーカフ、あと業務用の目を保護するゴーグルをかけている
惜+蟻塚「「君(お前)もなかなか人(俺たち)の事を言えないような身なりだね(だな)」」
??「相変わらず恐ろしい程息がぴったりですね、で、何してるんですか?」
惜「まぁまぁ、霧無ちゃん、僕と蟻塚君の仲が良過ぎるから嫉妬するのは分かるけどあまりにも急に詮索するのは頂けないなぁ、君の飾り過ぎて飾り気が感じられないファッションは置いといて・(ブチッ)・・・ん?」
蟻塚「おい・・・窓を開けろ‼︎今すぐ‼︎」
霧無「いっその事学校なんて言わずにこの街ごと滅ぼしてやりましょうかぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
霧無の周りだけモヤがかかったかのようにどんどん白くなっていく
蟻塚と惜は窓を開け放っていく
バンッ バンッ バンッ バンッ
蟻塚「なんでお前は人の神経を逆撫でするんだよ⁉︎」
蟻塚は廊下を駆けながら隣を走る惜しむに叫ぶ
惜「霧無ちゃんのファッションにちょっと口を挟んだだけじゃないか‼︎」
惜は全然反省していない様だ
蟻塚「結果的に逆撫でしてるんだよ‼︎どうするんだよ‼︎俺たちまで死んだら何も無くなるじゃねーか‼︎」
本当に街ごと滅ぼしかねないからだ
惜「仕方ない‼︎こうなれば最後の手段‼︎」
惜はキリッと笑顔を見せた
蟻塚「な、何をする気だ⁉︎」
すると惜はクルッと引き返し、霧無の方へ走る
霧無「なぁんですかぁ?薊野先輩?死にに来たんですかぁ?」
霧無は高笑いしながら惜に聞く
惜「違う、これを見てくれ」
それは・・・・
蟻塚「ば、馬鹿な、あんなもので」
霧無「先輩、自分が何をしているのか分かってるんですか?」
とても、常人では真似出来ない程美しい
土下座だった
惜「君のファッションにアドバイスしようと思ったんだけどこんな事態になるとは思わなかったんだ、お願いだから仲良くしよう」
霧無は無表情になる、そして一息置くと
霧無「あー、もう、分かりました‼︎分かりましたから‼︎もう土下座はやめて下さい‼︎仲良くしますから‼︎」
惜「本当に⁉︎ありがとう‼︎」
和やかな空気になっていく
霧無「蟻塚先輩もすいません‼︎もう怒ってないですから‼︎」
蟻塚「・・・・・・」
惜「ありゃ?・・・・・あ、毒を吸い込んでるね、気絶しちゃってる」
霧無「蟻塚せんぱぁぁぁぁぁい‼︎‼︎」
2人がかりで急いで保健室へ運ぶ事になった
『 霧無 毒理
高校2年生
得意料理(毒リンゴ)
不得意料理(食べて安全なもの)
呪い【毒霧夢】
ババヤスデの呪い、毒ガスを周りに発生させる事ができる(一応強弱はつけられる)
』
ーーーー保健室ーーーー
夕風がベッドに寝転ぶ少年の頬を撫でる
蟻塚「ん、ここは?」
惜「大丈夫かい?蟻塚君」
霧無「私のせいで、すいません」
蟻塚は起き上がると霧無は水の入ったコップを差し出した
蟻塚「いや、構わんよ、そもそもの原因がこいつだしな」
蟻塚はコップを受け取り、水を飲み干しながら言う
惜「まぁ、過ぎた事だし気にしないで、ね?」
(こいつにだけは言われたくない‼︎‼︎‼︎)
蟻塚と霧無の心の声が揃った瞬間であった
霧無「あ、今日も授業に出ないまま終わっちゃいましたね」
気がつくともうそろそろ下校時刻だ
蟻塚「まぁ、いいんじゃないか?呪われた三人が一同に集まるなんて滅多にないことだしな」
ニヤッ、蟻塚は不敵に笑う
霧無「ええ、私も今日終わらせた所ですよ」
フフッ、霧無は冷徹に笑む
惜「参ったなぁ、これじゃ僕も今日中に終わらせないとな」
惜は2人を残し、保健室を出た
次の日
教師「松狩高校、桜散女子高、そしてこの枯木高校を閉鎖する事になりました」
惜「え〜、なんでですか?僕はこの学校が好きになり始めた所なのにな〜」
教師「・・・・在校生1名、薊野 惜君、君は友達との別れで辛いだろうけど、仕方ないんだ、今朝になって君以外全員が自主退学してしまったのだから」
惜「いやいや、僕はこの学校に友達なんていませんよ?誰もいないから好きになり始めたんですよ」
教師は咎める様な目で惜を見る
教師「・・・・・・退学した生徒全員、顔含め全身が酷く爛れて実生活に支障しかきたさない様な状態らしいんだ、君は何か知っているかい?」
惜「僕は何も知りません、彼らは僕だけをのけ者にして花火大会でもしていたんじゃないですか?ドカーンとね、それならのけ者にする彼らが悪い、僕は昨日、松狩高校と桜散女子高の友達と寂しく遊んでただけですよ」
惜は飄々と語る、教師は目眩がしたのか席を立つ
教師「呪われた少年、君のこれからを考える為に都会の方へ行ったらどうですか、私はこれで失礼します。」
ピシャッとドアが閉まる
惜「都会かぁ、うん、いいかもしれない、こんな田舎からさっさと出て行くのもいいかもしれないね」
蟻塚「お前が行くなら俺達も行くしかないな」
霧無「あーあ、この制服、結構気に入ってたんですけどね、残念」
いつの間にか後ろに立たれていた様だ
しかし惜は動じない
惜「どこに行く?」
蟻塚「壊しがいのある奴がいる街」
霧無「解毒薬と戦うのも熱いですね」
惜「じゃあここにしよう」
いつの間にか惜は何かのパンフレットを開けていた
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《近未来都市へようこそ‼︎》
この街は科学と超常現象の入り混じる名もなき街‼︎
能力者の人口世界一‼︎
伝説的な能力者があなたを待っています‼︎
医療部門日本一‼︎
日本最高の治療を受けられます‼︎
(コンビニでは薬剤師の方が処方箋、解毒剤などを扱っております)
街の名前が決まる前に急げ‼︎
決まる頃には住む所が見つかりにくいかも‼︎
日本地域活性保安局
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惜「この街では僕らの言う【呪い】を能力として扱うみたいだね」
蟻塚「能力?そんな楽しそうなもんならこんなに捻くれねぇよ」
霧無「そうですよ、そんなヒーローみたいなかっこいいものなら苦労しませんね」
惜「じゃあ、潰す?」
蟻塚&霧無「異議なし」
三人は椅子から立ち上がり、歩みを進める、ある主人公の物語を狂わせる為に
如月 上下です。
今回はスキルハント番外編
世界へ向けての一方的な復讐者 薊野 惜の物語でした。
本編への番狂わせになるんでしょうかね
乞うご期待‼︎
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スキルハント