7 Weihnachten (鈴花、祥平)
さぁ、クリスマス編です!
珍しく書くのに苦戦してます。汗
本当はそれぞれの視点で1話ずつって思ったんですが、前半後半で分けることに…
次は若干R指定入るかもです。まぁ、書くときのノリによりますが。笑
「よし、これでオッケー…かな。」
そう言って、今日何度も覗き込んだ姿見に再び自分を移す。
えんじ色の品の良いワンピースに、黒のタイツ。足元は気に入って買った少しヒールの高い、茶のロングブーツ。その上には白いファーコート。
癖のある髪はゆるく巻いて、ふんわりとおろし、化粧もいつもよりほんの少し濃いめに施している。
「大丈夫…だよね。」
そう言ってハンドバックの中身を確認してから、もう1度鏡の中の自分と向き合う。
そこには舞い上がっているか、落ち着きのない自分の姿が映し出される。
恥ずかしい…
でも、そう思うのと同時に、こんな風にドキドキしながら準備している自分がなんだかとても嬉しい。
自分の顔が嫌いだった。
母親そっくりの、否応なしに人を惹き付けてしまうこの顔が…
祥平さんに恋をして、とんでもない真実を突きつけられ、やっぱりあの人の子供として生まれて来なきゃよかったと思ったこともあった。
でも…
トラブルに巻き込まれたところを瀬菜さんに助けてもらって、そこから祥平さんに出会って…
あの夏の出来事を乗り越えて、今がある。
もし、お母さんの子供じゃなかったら…
彼女そっくりの顔に生まれてこなかったら…
祥平さんには出会ってなかっただろう。
そのおかげで彼と出会えたのなら、この容姿だって少しは好きになれるような気がした。
そして、自分にとってコンプレックスの塊だったお母さんのことも、少しずつ愛おしく感じられるようになってきている。
自室を出て廊下へ出ると、階段の近くでお手伝いの田中さんが立っていた。
「田中さん、お母様は仕事ですか?」
「ええ、今日もお忙しいとのことです。」
「そう…」
私はそう言うとちらりと彼女の書斎へと目を向ける。
「なにか急ぎの用事ですか?」
「いえ、そうじゃなくて…これを、お母様の机に置いておいて欲しいの。」
そう言って私が田中さんに手渡したのは1枚のクリスマスカード。
「…喜びになると思いますわ。」
「そうだといいけど…いってきます。」
嬉しそうに微笑む田中さんに、私はそう言うと颯爽と階段を降りて玄関へと向かった。
外に向けて歩くに連れ、どんどん足取りが軽くなるような気がした。
午後5時に駅の時計台の前。
それが今日の待ち合わせ。
時計台前の広場はクリスマスの飾りで綺麗に彩られている。
待ち合わせしている人たちも多いせいか、たくさんの人でごった返している。
5分前。まだ祥平さんは来てないかなぁ…
あたりをキョロキョロと見回すも、たくさんの人でその視界は阻まれてしまう。
とりあえず、携帯で連絡しよう。
そう思って下を向いた時、ドンっと後ろから誰かに押されてしまう。
「きゃっ」
「おっと!」
よろけたところを目の前の人に咄嗟に支えてもらったようだ。
「すみません、ありがとうございま…」
お礼を言おうとその人を見上げ、私は驚いて固まった。
「まったく。よそ見してると転ぶぞ。せっかく綺麗な格好してきてるのに。」
そんな私の様子がわかっていたかのように、くすくすと笑いながら私を見下ろす祥平さんの姿。
普段のラフな格好と違って、黒いシャツ、グレーセーターにジャケット…とモノトーンで統一されていて、なんだかとっても大人っぽくてかっこいい。
「…どうした?顔赤いぞ?」
「…反則すぎです。」
真っ赤な顔して上目遣いに睨めば、少し照れたように祥平さんが私の頭を軽く叩く。
「お互いさまだろ…行くぞ。」
祥平さんはそうぶっきらぼうに言いながら、私の手をそっと掴んで歩き出した。
「…祥平さん、今日どうするんですか?」
「んー、そーだなぁ…」
少し前を歩く祥平さんを追いかけるようにして、隣に並ぶ。
祥平さんは何か少し考えるように呟いたあと、私の方をちらりと見てニヤリと笑いかけた。
「イルミネーション見ながら街ぶらついて、チキンとケーキ買って、家でお祝いって感じでどうだ?」
「…へぇ?」
私は驚いたように声を上げる。
「忘れたのかよ?鈴花がまだ中学生のとき、言ってたことだぞ?」
「いや、そうなんですけど…」
覚えてくれてたんだ…
あまりの嬉しさに顔がカッと熱を持つ。
顔の赤いのを隠すように、祥平さんの腕にしがみつく。
「ん?どうした?」
「…幸せすぎて死にそうです。」
「…なんだよそれ。」
その体制からちらりと見上げるように祥平さんを盗み見れば、同じように赤くなった顔を隠すように顔を背けている。
あーほんと…幸せすぎる。
私は緩む頬を隠すように再び祥平さんの腕へと顔を埋めた。
『イルミネーション見ながら2人で街を歩いて、帰りにケン○のチキンとケーキを買ってお家デート!素敵じゃないですか?』
鈴花と出会ってから初めての12月。
彼女が楽しそうにそう語ったのを俺は今でも覚えている。
『なんでケン○なんだ?それだったら、ちょっといいレストランに行きたいとか思うだろ?』
『クリスマスだからこそ、大切な人と家で幸せな時間を過ごしたいじゃないですか!それに…クリスマスに家でお祝いって憧れるんです。』
そう言った彼女の横顔はとても大人びて見えて…どこか寂しげでもあった。
『そのうち叶うといいな…』
『はい。』
まさかそれ叶えるのが俺になるとは、このとき夢にも思ってなかったけど…
「お邪魔しまーす。」
「どうぞ。って言っても誰もいねぇーけど。」
「お母さん、お仕事でしたっけ?昼のデートはどうでした?」
「おかげさまで、いろいろ引っ張り回されたよ。」
そんなことを話しながら2人揃ってリビングへと向かう。
俺にとっては見慣れた空間。
鈴花はそれをとても不思議そうにキョロキョロと見回している。
「どうした?…そういえばちゃんと入るの初めてだっけ?」
「はい。」
そう言ってどこか気恥ずかしそうに、微笑む鈴花。
「…そうか。」
そんな様子に俺もつられるように微笑んだ。
買ってきたケーキをひとまず冷蔵庫に入れようと、キッチンに入ると思わぬ物を見つけた。
「…おっ?鈴花!ちょっとこっちこい!」
「なんですか?」
俺の声でやってきた鈴花に、俺はニヤリと笑って鍋の中身を見せる。
「ほら、母さんからのクリスマスプレゼントだとさ。」
そこには野菜をたっぷりと使ったシチューが。
手前の台にある置き手紙にはお母さんからのメッセージが書いてある。
「うわぁ!美味しそう!」
「腹減ったし、手洗ったら食べるか。」
俺がそう言うと鈴花が嬉しそうに笑い返した。




