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Solanum lyratum  作者: モモンガもどき
番外編(という名の本番)
13/30

1-2 Drama(嶺緒)

これ現実でやったら「えっ…」ってなるんだろなぁとか思いつつも投稿 笑


17時19分…

この1時間で何度見たかわからないケータイの画面。たった、1秒、1分がとてもながく退屈に思える。

なんで俺がこんなことに…

ふと周りを見れば俺と約1名を残してカラオケで盛り上がるメンバー。


そう、全ての発端は今日の昼。鈴花の発した一言から始まった。






「鈴花〜、そんなずっと落ち込んでても意味ないよ?ねぇ、元気だしてよ〜。」


珍しく俺が隣のクラスに遊びに行くと、鈴花が机に突っ伏しているのが見えた。

あれ?元気ない?


「鈴花どうかしたの?」


不思議に思って声をかけると、彼女の友人、希美ちゃんは困ったように俺のほうを見た。


「それがね?朝からずっとこんな調子で…なんか、彼氏と喧嘩したとかで。」


「えっ!?祥平さんと?」


その言葉に少なからず俺は驚いた。

祥平さんは色々誤解されることが多いが、とても優しく、滅多なことでは怒らない。

そんな彼がとても大事にしている鈴花と喧嘩?


「鈴花…なにか怒らせることしたの?」


思わず思ったことがそのまま口に出る。


「なっ!?何いってんの?鈴花だよ?こんな可愛い彼女なのになんの文句があるのよ!?絶対問題は彼氏よ!!」


俺の言葉に鈴花信者でもある希美は強く反発した。

いや…祥平さん相手だったら十中八九鈴花だろ…

そう心でつぶやき苦笑いを浮かべる。

そのとき…


「…もうダメかも……」


普段の鈴花からは考えられないほど、弱々しいネガティブな言葉が聞こえてくる。


「いや、安心しろ。そんなこと…「そうよ!鈴花!!そんな男別れちゃいなさい!もっといい男山ほどいるわよ!」


俺の呆れたような独り言は、何かを勘違いした彼女の友人によってかき消される。


「そんな変な男なんてね、どっかの変な女に捕まっちゃえばいいのよ!」


そんな希美の一言に、鈴花はピクリと反応する。


「…おい、鈴花?」


表情こそわからないものの、心なしか彼女の周りの空気が一段と暗くなる。


「よし!そんな鈴花のために、かっこいい先輩紹介してあげるわ!!」


そんな鈴花に気付かぬまま、勘違い信者さんは勝手に話を進めていくのであった…






で、現在に至る。

なぜ俺もいるのかは不明だが、希美が前々から鈴花とくっつけたがっていた「とっておきの先輩」とその友達と共に、カラオケと言う名のプチ合コンに来ている。

鈴花は先輩たちの手前、一応取り繕うように笑っているが…やはり元気はない。というか、どんどん沈みこんでいく。


まぁ、原因は祥平さんとの喧嘩…とあの先輩だよね。

そう思いながら、さっきから鈴花にしきりに張り付いている1人の男の先輩へと目を向ける。

彼がいわゆる「とっておきの先輩」ならしいが…まぁ、確かに顔はいい。男の俺から見てもイケてるメンズってやつだろう。人気者で、面白くて…

でも、違うのだ。

確かに普通の女子高生ならこんな男の人を好むだろう。でも、鈴花は違う。

彼女が求めてるのはただ1人。…祥平さんだけなのだから。


鈴花の取り繕うのがうまいのか、単に男が気がつかないのか…

男は鈴花が戸惑うのもお構いなく、スキンシップを図ろうとしている。

…あーあ。鈴花、まだ男の人苦手なのに…大丈夫か?

そんなことを思いつつも、今回は助けない。

なぜなら、今回こんな自体になったのは、彼女が自分の口からきちんと断らなかったのが原因だからだ。


前々から、鈴花は周りを見過ぎるあまり、自分意見を押し退けて周りに流されてしまう癖があった。

そこに俺は苛立つことが多かったし、これを機会に直してもらおうとも思ったのだ。

それに…


祥平さん、俺はあんたにも少なからず責任はあると思いますよ。

どんな理由であれ、鈴花に隙を作らせたのは祥平さんが原因であるのは変わりはない。

まぁ、これで少し考えて貰わないと。


と、そのとき。俺の耳にメールの着信音が聞こえてくる。

…ようやくか。

黙ってそれを確認すれば、祥平さんからの「今着いた。どこの部屋だ?」という簡素な文がうつし出される。


「すいません、俺トイレいってきまーす。」


俺はそう言うと、さっと騒がしい室内から抜け出した。






「祥平さん!」


声をかけと、祥平さんはいつもより大股でこちらへと歩いてくる。走って来たのか、額には汗が滲んでいる。


「悪いな。連絡ありがとう。」


「別にかまいませんけど…これっきりにしてくださいね?いつまでも鈴花のおもりなんてしてられませんよ?」


そうふざけて言えば、祥平さんは、


「わかってる。今回のことは鈴花を不安にさせた俺の責任だ…」


と珍しく弱々しく呟いた。

俺はそんな様子に、なにも言わずただ前を進む。


「ここです。…鈴花もかなり落ち込んで堪えてますから、怒らないであげてくださいね?」


「怒るつもりなんてねぇーよ。」


祥平さんはそう言うと、弱々しく微笑んだ。

俺は黙ってカラオケボックスのドアを開ける。


室内からは相変わらず賑やかな声が聞こえてくる。


「嶺緒!おそーーい!って…後ろにいるの誰?」


マイクを持ったまま喋りかけてきた希美が、祥平さんに気がついた。

その途端、室内が一斉に静まり返る。


「鈴花。迎えだよ。」


俺はそれだけ言うと、祥平さんへと道を開ける。

その声に反応するように、うつむいたまま鈴花もピクリと反応した。


「鈴花。」


静かに、でもはっきりと、祥平さんが彼女の名前を呼ぶ。

彼女はゆっくりと顔を上げると、祥平さんの顔を見る。その目にはすでに涙が溜まっている。そして…


祥平さんが両手を前に差し出すとほぼ同時に、鈴花が祥平さんに向かって走り出す。あとちょっとと言う距離で、祥平さんが少しかがむと、その首に飛びつくように鈴花が抱きついた。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


とても小さな声で、鈴花は泣きじゃくる。

祥平さんはなにも言わず、優しげに鈴花の頭を撫でると、そのまま彼女を横抱きにした。

鈴花は離れないように、しっかりと祥平さんの首にしがみついている。


「嶺緒、後のことは頼んでいいか?」


祥平さんがそのままの状態で俺に尋ねてくる。


「…えっ?あっはい。」


思わず2人に見とれていた俺は、慌てて返事をする。


「ありがとう…じゃあ、鈴花もらってくね。」


俺を見てから、最後に他のメンバーにそう告げると、祥平さんはそのまま来た道を戻っていった。


「なんか…すげぇー、ドラマとか見てた気分。」




その後、木下鈴花の彼氏はめっちゃ男前という噂が学校中に流れたのは言うまでもない。




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