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傷ついた羽はさらに強く

小説家になろう!2


 いざ小説というものを書き始めてみると、思っていたよりもはるかに進みは早かった。キーボードを流れるように叩く。


 タン! タン! タッターン!


 文章の一区切りまでを、小気味いい音を立てながら打ち込んでいく。


 セリフと簡単な文の集まりでしかなかった台本と、シーン毎の漠然とした様子を描いた絵コンテが、僕自身の手で文字だけの物語へと肉付けされていく。


 この楽しさが、心の中で激しく踊る。


 僕は一心不乱に、思いを言葉へと変え続けた。


 ★


「ふう」


 軽い深呼吸をしながら手を組んで思いっ切り伸びをすると、体中の骨がぽきぽきと音を立てた。そしてどっと疲れが襲ってくる。


 外は既に日が落ちて暗くなっていた。背中側の壁に取り付けてある時計は、六時五十分を指していた。


 つまり時間にして三時間弱、僕は

キーボードを叩き続けていた計算になる。


「創! ご飯にしましょう!」


 一つの物語を完成させた満足感に浸っていると、ちょうど一階から母親の声がした。

 

 今行くとと返事をして、僕はもう一度インターネットエクスプローラーを開いた。


 もちろん目指すのは小説家になろう。僕はなんの迷いもなくアカウントを取得すると、小説を投稿し、パソコンをシャットダウンした。


 今からご飯を食べ終えるまでには、読者から何かしらの感想がついているはずだ。


 うきうきとした気分を抑え切れず、軽くスキップをしていたら階段で転げ落ちそうになったのはまた別の話だ。


 夕食を食べ終え、ダッシュで部屋へと向かう。映画関係などで忙しい時はいつもこんな感じで部屋にこもるので、母親も察して頑張りなさいよーと下の階から声をかけてくれた。うんと大きく返事をして、再びパソコンを動かす。


 そして寄り道をせずに小説家になろうに向かう。


 ログインをすると、マイページの上には赤い文字で感想がつきました、と表示されていた。しかしそれを無視して、作品のタイトル部分をクリックする。


 すると画面が作品のページヘと飛んだ。


 小説情報の部分を押すと、小説についたレビューの数や、読んだ人がいれてくれたポイントがわかる。


 その欄の中にある感想数が1になっていた。マイページに表示されていたのでわかってはいたことだか、やはり改めて確認してみても心は踊る。


 左手で小さくガッツポーズをしながら、右手でマウスをまた動かす。


 感想がつきました、をクリック。画面が切り替わるまでの短い時間に軽い深呼吸をする。


「よし」


 しかし僕の高揚は、感想に書かれた辛辣な言葉たちによって、見事に打ち砕かれることになる。


 ほりすてぃくさん

 良い点、ストーリーや発想はすごいいいと思いました。最後までなぜか読んでしまいました。

 悪い点、そもそも文章の基礎がなっていません。セリフの鍵カッコの前に名前を入れていては、それはただの台本に過ぎません。助詞の使い方にも違和感がありました。誤字脱字なども多かったです。

 一言、読むに耐えない部分もあったのですが、なぜか最後まで読み切ってしまいました。小説の基礎を学んでいけば、きっと輝くダイヤになれると思います。


 ちゃんとフォローはしてくれているんだけれど、なかなかね。小説ですらもないという事を暗に伝えてくるところはなかなか心に来るものがある。おまけの番外編をまた載せようと思っていたが、それも悩む。悪い意味で、胸の動悸が収まらない。


「どうするべきか」


 そして僕はまたこの感想と向き合った。


 ★


 結論から言うと、僕はこの小説を削除した。はっきりした理由とか意図とか言ったものはそこにはないが、やはりずたずたにこき下ろされたのがショックだったというのが大きい。木綿のハートなもので。


 しかしまだ小説を書くことを諦めたわけではない。文章の作法というものをこれから一から勉強してみようとは考えているし、既に書きたい物語は頭の中で描けている。


 また映画作りとは違った楽しさが今は僕を満たしてくれている。


 同じ創るということなのに、ここまで違うものなのか。ここまで難しいものなのか。


 しかしそんな高い壁を登りきってやろうという気持ちが膨れ上がってきている。


 やっぱり創作って、すごいいいものだ。


 最悪壁を乗り切れなかったとしても、飛び越えてやる。

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