プロローグ
机の上に置いた携帯がブブブと震えた。私は、携帯のディスプレイにうつる友人の名を確認して薄い桜色をした携帯を手にとった。
手慣れた操作でメールを開く前に、大体内容は想像できていた。ふと窓を見れば、白い雪がちらちらと暗い空から舞い降りていた。
もうこの季節となった。
「…ホワイトクリスマス」
恋人たちの季節がやってきた。友人と過ごす高校1年16歳のクリスマス。友人と過ごすクリスマスは楽しい。しかし、街でカップルが溢れかえっているのを見ると、“彼氏”というものが欲しい、と感じてしまう。
今までそういう努力をしてこなかった自分の思うことではないと心の内ではわかっている。それでも、やはり異性というものには興味があった。
友人が最寄りの駅に着いたという連絡をうけ、メールを返した後、間もなくして再び桜色の携帯が震えた。
差出人は不明。
見たことのないアドレスからだった。誰かからのアドレス変更の知らせかと思ったが、どうやら勝手が違ったようだ。
『Merry Christmas』
内容はそれだけだった。
まず、驚いた。
そして次の瞬間には、首を捻りながらも、きっと送り間違えたに違いないと決めつけて、携帯を閉じた。
時計を見てはっとして急いで携帯をポケットにねじこんで、私は部屋を出た。
そんな普通の生活をおくる普通な女子高生である自分の身に起こることなんて、私は全く想像もしていなかったのだ。