八十二話『処刑台へのカウントダウン』
計画を立てる。殺す。そしてまた計画を立てる。そんな事を繰り返しているうちに、気がつけば大晦日になっていた。「ほら集まって集まって大晦日やるよー!!!」とヒビキがみんなを談話室へ集める。レイ、イズミ、トウマ、サユリ。みんな一緒だ。ただホノカは、"今日くらい京都で過ごしたっていいだろう"と言って姿を見せなかった。「スマ〇ラやろうや!!!」と声高らかに言うイズミ。「スマ〇ラ最強の私に勝てるかしら?」とイズミを煽るヒビキ。「なんや負けへんで小娘!!!!」とイズミが言い返せば、「誰が小娘よッ!!!」なんて言いながらゲームのセットをするヒビキ。ヒビキの母は部屋で療養中。きっと楽しそうな娘の声に穏やかな表情を浮かべているだろう。サユリも、「ヒビキさん次は私もやらせて!!」とヒビキの後ろから話しかける。みんながゲームで夢中になっている間、俺はルルとメッセージアプリで話していた。"一人で、行くんですか?"ルルから返ってきたメッセージに、"嗚呼、一人で来い"と返す。すると三秒も立たず、"嫌です"と返事が返ってくる。だが俺は、"大丈夫だ。何もしない。一人で来い。"と送り続ける。一月某日に一人でここまで来い、とメッセージアプリでルルに言ったあとの会話だ。さらに一分も立たないうちに、"嫌です"と再度メッセージが返ってくる。俺はこのキリの無い会話に、苛立ちを覚える。"嫌です""嫌です""嫌です"嫌です""嫌です"ルルから大量のスタンプを送られる俺。俺は鳴り止まない通知音に、「クソッ」と机を殴る。「どないしたん」とイズミが振り返る。「何ともない」と俺が言うと、イズミは「気分転換に夜叉鏡もゲーム…」と俺を誘うが、俺は、「物騒なゲームは嫌いだ」と答える。トウマが、「弱いのか?」と俺を煽る。俺はまんまと煽りに乗っかり、「貸せ」と次はサユリに渡るはずだったゲームのコントローラーをヒビキから奪う。サユリは、「え?」と俺を見上げる。「ほないっちょ勝負や夜叉鏡!!!」とイズミはそう言うと、「夜叉鏡と戦えるなんて…!」と腕捲りをしながら続けた。楽しいとは一切思わないが、弱いと思われるのは癪だ。はじめてのス〇ブラにも関わらず、俺はテキトーなキャラクターで今覚えた操作方法で戦う。再度言うがこれっぽっちも楽しくない。歴戦のはずのイズミを即座に倒しては、コントローラーを置いて去っていく。イズミは「なんや!?夜叉鏡強すぎひんか!?」と頭を抱えながらオーバーリアクションで悔しがる。警察も動き出そうとしてる今、どうにかしてこの廃ホテルにルルを呼び出したい。そのための用意なら出来ている。いなかったロイが、「はいはい、宅配ピザ届きました~♡」と両手にピザの箱を重ねて戻ってくる。『いい匂い~♡』と幸せそうな表情を浮かべるサユリとヒビキ。俺はそんなロイとすれ違いながら、自室に戻る。
今年一年を振り返る。今まで生きてきた人生の中でとんでもない一年だった。いきなり殺人者にされるし、きっと"今年"を忘れる事は無いんだろう。年が明けたっておめでとうなんて俺は言えない。一見"平和"に見えるこの情景も誰かの犠牲の元成り立っているからだ。今も個人情報を公開された父さんや母さんは世間から誹謗中傷を受け続けている。いつ女性刑事みたいになるかわからないんだ。警察も追い詰められている。だから、俺の能力で─────────。外道だ。本当に俺は救えない。なんて事を考えているんだ。本当に俺はどうしようも無い。サユリたった一人、それもいじめっ子のためにわざわざここまでやるのか?…いや、サユリはサユリだ。どうなってもサユリの全てが俺には愛おしい。サユリのためなら、なんだって出来る。どこまでだって堕ちていける。"結婚式には呼んでくれよ~~!"俺はヒロムからの最後のメールをゴミ箱に捨てた。普通の幸せなんてもう望んでいない。俺に出来るのは、もうただ一つだ。悪いなヒロム。どうやら俺の血もかなり黒く汚れているみたいだ。ルルからのメッセージがまた届く。"仕方ないですね 一人で行きますよ あなたを捕まえるために"俺はそのメッセージを見て、ふッと笑った。いくらでも捕まえに来ればいい。今の俺は昔と違う。丸腰じゃない。警察さえも道連れに、どこまでも堕ちてやる。俺は…。
しばらく考え事をしていると、サユリが俺の部屋を開けた。「カガミ、歌合戦はじまっちゃうよ」とサユリに言われては、「嗚呼…」と立ち上がり再びリビングへ向かう。「私の好きなバンドが出るんだから待機しなきゃ」と言うヒビキ。「お前バンドなんかハマってたか?」とヒビキに問いかけては、「レイさんが見せてくれたのよ!そしたらハマっちゃって!」と答える。俺は、「何かに熱中出来るのはいい事だな」とヒビキに返しテーブルに座る。相変わらずこいつらはメンタルが強すぎる。俺が洗脳しているせいか?それとも…。サユリがテーブルのほうへやってくる。「今年はユリカに酷いこと言われていじめっ子になっちゃうし、かと思えばクラスで孤立しちゃうしで散々だったなぁ。でもカガミと距離がもっと縮まったって考えればチャラか…」とサユリはそう言うと、後ろから俺の頬を撫でる。「お前…罪悪感とか無いのか」と俺が問いかけると、サユリは、「罪悪感?ユリカに?」と首を傾げる。「ユリカのほうこそ罪悪感を持って欲しいよ、私とカガミの仲を馬鹿にしたんだから」と平然とした顔で言った。俺は、「そうか」と微笑む。これでやる事は決まった。サユリが望むかどうかはわからないが、俺たちが"報い"を受けなければならないのは確かだ。タダで幸せになんかなれない。俺たちは全員、罪を償わなければならない。「サユリ、好きだよ。来年も一緒に隣にいよう」まだサユリに言えるうちに。俺は愛を囁いた。
『さぁ今年もはじまりました!男女混合赤白歌合戦!!!赤組司会は私小林幸世と!!!白組司会は私、舘つよしでお送りして行きたいと思います!!そして総合司会は~!?私、すみれTVアナウンサー、水無れいなが担当します!皆様今年も、五時間、どうぞお付き合いください!!』雰囲気を壊すように、軽快なBGMと共に、色々あった今年を締めくくる歌の祭典がはじまる。今年もあと数時間。




