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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』【俺ラブ】  作者: ミタラリアット


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八話『覚悟』


『お前が悪いんだ』『ヒロムが死んだのもお前のせいだ』『全てお前が招いた事だ』脳内で俺を責める声が延々と続く。ピィー…ピィー…なんて音も耳にしつこく響く。おかげで何日か眠れなかった。三日ほど学校にも行けず、毎日のように寝込む。


「お前がそんなに落ち込むとはな」ホノカは俺を見下ろしながら言った。


「…こんなの…誰も救われない…」俺は行動を拒否する。


ホノカは「いつになったら懲りるんだ」と溜息をつく。


 


 母さんが部屋に入ってくる。


「ヒロムくんの葬式の話なんだけどさ…」静かな声で言う母さん。


「行かない…」俺がそう言うと、母さんは「ヒロムくんも多分会いたいと思ってるわよ、」と続ける。


「行かない!!!」俺は母さんに怒鳴った。


 母さんは、「あと、サユリちゃん来てるわよ」と言って扉を閉めた。母さんが階段を降りる音と、サユリが階段を上る音が交差する。


 


「カガミ。」サユリは寝込む俺に優しい声をかける。


 辞めろ…誰も…誰も俺に近づくな。今は来るな。気が狂いそうだ。


「殺しなんてしたくない……」俺は泣きながらサユリに言った。


「殺し????」サユリは首を傾げる。


「俺が近くにいるせいでみんな死んじゃうんだ」


 俺が泣きながら言うと、サユリは「カガミのせいじゃないよ、」と姿勢を低くして寝込む俺に合わせる。


 そんなサユリを俺は、「気分が悪い」と突き放した。


 サユリは、「…」と少しの沈黙を生んだ後、「わかった」と言って出て行った。


 


 サユリが部屋を出て行った後、ホノカが浮遊しながら現れた。


「彼女にする態度じゃないだろ。」静かに俺に言うホノカ。


「八割お前のせいだろ…」とホノカを責める。


「二割は行動できない自分のせいか」フッと鼻で笑うホノカ。


「俺を巻き込むな」


 久しぶりに起き上がる。まだパジャマ姿のままだ。洗面所まで降りて顔を洗い、歯を磨く。鏡を見たら疲れが目に見える酷い顔をしていた。それも当然だ。妹に続き親友まで亡くしたんだ。もう誰も…誰も失いたくない。


 


「あら、カガミ。起きたの?」母さんは皿を拭きながら俺を見た。


「もう本当にヒロムはこの世にいないの??」幼子のように俺は母さんに問いかける。


「…カガミ…」母さんは俺にかける言葉もないようだ。


「カレンも…ヒロムも…こんな…」俺は掠れた声で呟く。


 母さんは、「立て続けだったからね、精神的に疲れてるんじゃない?しばらく学校お休みしたら?」と優しく提案する。


 俺は静かに頷いた。そしてまた階段を上って部屋へ戻る。


 


 確実に弱っている。つい最近まで平和にデートしていたはずなのに。おかしい。カレンがいて、ヒロムがいて…。当たり前の日常がそこにあって…。毎日が煌びやかで輝いていて…。はぁ…なんだかな…。日常ってこんな風に変わるんだな…。当たり前に生きていたはずなのに。


 


「カガミ。サユリを守りたいか?」ホノカは俺を試すように笑う。


「…」俺は小さく頷いた。


「これが"必ず一撃で人を殺せるナイフ"だ」赤いナイフを俺に差し出すホノカ。


「どこを刺しても必ず一撃で人が死ぬ。」説明するホノカに、


「じゃあサユリを襲った時これを使えば…」と言うが、


「地獄が渋滞するだろう。地獄の受け付けも面倒なんだぞ??だからこのナイフはタブーなんだ」ホノカの説明にますます疑問が湧く。


「じゃあ俺が使ってもダメじゃん」俺が言うとホノカは鼻で笑った。


 


「わからないのか?」俺は眉をひそめる。


「どういうことだよ」


「サユリを襲った時に使わなかったのは、襲撃対象では無い、運命を書き換える前の人間に地獄の道具を見せることが地獄では犯罪になっているからだ」と説明する。


「だがお前の運命は変わった。お前は人を殺さないと周りの人間が死ぬ運命になった。地獄に気に入られただの高校生では無くなった。つまり、地獄にとっては、半死神みたいなものだ。だからこのナイフを使っても構わない。便利だろ?」ホノカは楽しげに言った。


「俺が…半死神…」と自分の両手に視線をやる。


「周りの人間の未来を救いたい。サユリを守りたい。その二つを叶えてやるにはお前は人を殺すしかないんだ。」再度俺に言うホノカ。


 俺は震えながらそのナイフを手に取る。


「────」ホノカは何かを俺に言った。


「なんだ?」聞き取れなかった俺は首を傾げる。


「いいや?なにも。」ホノカは「殺す気になってくれたか?」と問いかける。


「…全てはみんなを…サユリを守るためだ」俺はナイフを片手に低い声で呟いた。


 そう。これは守るためだ。みんなを。サユリを。もうこれ以上の不幸を産まないためだ。


 


「…カガミ。」ホノカは俺の名前を呼んだ。


 一撃で誰でも死ぬなら…。俺は自分の胸に包丁を突き付ける。


 ホノカは、「待て!!!!!!!」と俺に手を伸ばした。


 これが一番正しいやり方だ。手を汚さず、これ以上誰も殺さずに、全てを終わらせる唯一の──────。


 一撃で仕留めるナイフは俺の心臓を貫いた。はずなのに死なない。なぜだ。


「なぜだ…なぜ死なない!??」俺はパニックになりながらホノカの首を絞める。


「ぅぐッ……馬鹿め。死神は死なないと言っただろ?お前は半死神だ。死神と同じで死なない。なぜなら魂の形が他の人間とは違うからだ。お前はどうやっても死ねないんだ……」呻き声を上げながら、ホノカは俺に説明した。


 俺は腕からホノカを離す。


「くそ………。」絶望を覚えた。これで救いは失われた。なんで俺だけがこんな目に遭わなきゃいけないんだ。俺が全ての罪を背負えばいいのか…。全ての罪を、俺が。


「……」俺は震える。だが、キュッと拳を握った。


「俺は…みんなを、サユリを守る。」覚悟を決めホノカに告げると、ホノカは「正しい選択だ」と優しく微笑んだ。

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