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七十七話『マリア組の思い出 すべてのきっかけ』

 ここは淡い記憶の世界だ。うっすらと霧がかかったようなエフェクトの中で、黄色い帽子を被り、花の名札を胸につけた俺とヒロムが二人で並びながら河川敷を歩いていると、「ようようかいかいかいけつかいかいともだちうぉちっち♪よーでるかいかい~♪」と、ヒロムが歌を歌い出した。「なんの歌だそれ」まだ幼い当時の俺がヒロムに問いかけると、ヒロムは、「ともだちウォッチの歌だよ!!妖怪と心を通わせて仲良くなって、仲良くなった妖怪と世界中の悪い事を辞めさせるアニメなんだ!」と笑いながら答えた。「ふぅん」俺が興味をもてずにいると、ヒロムは「はいこれ。友達の証!」と、妖怪のイラストが書かれたバッジを渡してきた。「あ、ありがとう」俺はヒロムからメダルを受け取り、ポケットに入れる。そのまま送迎バスに乗っては、「俺の父さん、最近すごい悪いやつ捕まえたんだ!」「俺のパパはすっごい会社とお友達になったんだよ!」と、お互いに父親自慢をしながら、適当な時間を過ごす。バスを降りれば、「カガミ」「ヒロム」と、互いの母親が待っていた。俺とヒロムは同じタイミングで「母さん~!(ママ~!)」と自分の親に抱き着く。「母さん今日のご飯はカレー!?」と俺は目を輝かせながら問いかける。俺の母さんは、「じゃあスーパーに寄ってカレーにしよっか。」と俺の頭を撫でた。「じゃあなヒロム!」ヒロムに手を振った後、母さんと俺は近所のスーパーまで歩いていく。


 「カガミの将来の夢は警察?」俺は、「ううん。警察にも憧れるけど…。父さんみたいな誰かを護れるかっこいい大人になりたい!誰かの役に立ちたい!」と母さんに夢を語った。すると母さんは、「誰かのために生きる事。それは立派な夢よ。でもカガミ。大人になるとね、あの人みたいに上手くも行かないの。それに、あの人だって誰かに嫌われちゃったりしてるのよ。カガミはそれでもいいの?」と問いかけた。俺は、少し下を向く。「でも俺は、誰かを守って、父さんみたいに感謝されたいんだ、!みんなにすごいすごいって言って欲しいんだ。」俺が言うと母さんは、「じゃあ、強くなりなさい」と俺に教える。「あの人のように、正義を抱いて!!」俺は母さんの言葉に、目を開いた後、「うん!!」と答えた。買い物から帰っては、誰かが隣の家で引越し準備をはじめていた。「あれ、誰か住むの?」俺が母さんに問いかけては、母さんは「さっきそこのお母さんと話したけどね、お父さんの仕事の都合で今日仙台から来たんだって。だから引越し作業邪魔しちゃだめよ。」と俺に優しく声かけした。俺は、「はーい」と答え、自分の家の扉を開ける。自分の部屋まで階段を登っては、「ただいま」とクマのぬいぐるみを抱きしめる。帰るや否や、さっそくお気に入りの絵本を手に取り、読書。タイトルは、"スーパーレッドVSダークマスター 宇宙最後の決戦!"俺は必死にヒーローに思いを馳せながら、夢中になって読み漁る。


 「ダークマスターめ!!!なんて悪いやつなんだ!!!!」俺は宇宙の秩序を乱すダークマスターに怒り、「絶対に俺はいつかヒーローに変身するんだ!!」と、鏡の前で変身ポーズを繰り返す。「バーニングフェニックス!!!!!」変身アイテムをカシャ、とベルトにはめては、爆音でキャンキャンキャンキャン、と高すぎる効果音が流れる。そして俳優の「スーパーレッド!」と声が高らかに響く。当然、「カガミ!ちょっとうるさい!」と母さんに階段下から怒られる。「はははッ、わかっているのか!私はダークマスターだ、全ての正義はいずれ塵となる!貴様はそれをわかっていない!!!」「それはちがいますよ!ダークマスター!あなたは逃げているんです!!今も!!自分の本心と向き合う事から!逃げ続けているんです!」俺は一人二役でセリフを読み、本格的なヒーローごっこをする。「うわァァァァ!!!」俺がやられるスーパーレッドを熱演し、床に転がり鏡に手を伸ばしながら叫ぶと、母さんが階段を駆け上がり、「うるさい!!!カガミ、勉強は終わったの!?」と怒ってくる。「俺まだ幼稚園児だもん遊びたい」と反抗しては、「はい。」と小学三年生用のドリルで頭を叩かれる。「いま勉強すれば小学校で大人気の優等生になれるわよ」母さんはそういうと、「あの人みたいな警察官になりたいならいまから準備しなくちゃね~~」と微笑み、階段を降りていく。


 途中で演劇を止められた事が悲しくなり、クマのぬいぐるみに、「酷いよね、俺の母さん、勉強しろって言うんだぞ」と話しかける。俺は、とりあえず椅子に座り、机の上の問題集と向き合う。「習っても無いのに出来るはずない…でも、一年生も二年生も出来たからやってみるか」と文句をたれつつも、かきかた鉛筆を握る。「難しい問題だな…。」俺は頭を悩ませながら勉強に向き合う。勉強しろ。って言われ、真摯に勉強に向き合ってしまうのが幼少期からの俺。俺は勉強を終わらせると、「母さん!出来た~~!」と階段を駆け下りてドリルを見せに行く。「はい、じゃあ丸つけするわね」母さんはそういうと、赤ペンを取り出し、解答に丸をつけていく。点数を書く欄には、六十五点と微妙な数字が書かれていた。「うーん。もうちょっと頑張れるようにしよう。百点が当たり前なぐらい優秀にならないと、警察官は目指せないわよ」と母さんに注意される。「ごめんなさい…」俺は素直に謝る。


 まだ二歳のカレンが、「お兄ちゃん怒られてる~」と笑い出す。「違う、怒られてなんかない!!!」カッとなり、カレンに手を出そうとするが、「ダメ!!」と母さんに止められる。「まったく、仲良くしてよ二人共!」母さんはそういうと、「今からおやつのクッキー作るから!」とキッチンの方へ行った。カレンは、「はぁい」と積み木遊びを辞め、「お兄ちゃんごめんね?だーいすき」と俺の方へ抱き着く。俺も悪い気はせず、「はいはい」と黙って抱き着かれていた。思えばこの頃から、全ての原動力は父さんみたいな警察官になるため、誰かを守るため。そんな馬鹿で、浅はかで、何も現実をわかっちゃいない、ホノカに夢見がちだと言われたのも頷けるような純粋な目を持つ子供だった。その上、純粋な守りたい。では無く、どこか見返りを求めていた。感謝されたい、誰かを守ってすごいと言われたい。どこまでも他者頼りで、自分の軸が無い人生。全てのはじまりは、俺の物心がついた時からだったんだろう。まるで俺が絶望するために用意された人生みたいじゃないか。はあ…。

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― 新着の感想 ―
うぅ……こんな記憶が……辛いね、カガミくん( *´艸`)
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