七十一話『支配者願望』
所謂地雷系。そんなファッションに身を包んだツインテールの女を誘って、路地裏まで誘導する。「なに、まさかこんな場所でするんですか?」と困惑する女に、「いーや、しないよ」と微笑み、俺は女の頭を抑える。「な…」と上目遣いをする女に、「斬」と呟けば、女はスゥ、スゥ、と眠りにつき行動をしなくなる。そうなった女の胸に向かって無限銃を撃ち込む。銃声が鳴ると同時に、俺は路地裏から離れた。路地裏から車に向かって走る。…少し距離がある。「はーッ、はーッ、はーッ、」ただでさえ体力が無いのに、反動で弱っている身体で走り出したせいで息が上がり、コンビニの前にもたれかかって心臓を抑えながら呼吸をする。
壁にもたれていると、ケーキを買ってすぐの怪しげな男が、「よく頑張りました。路地裏からここまで五分三十秒。体力が無いあなたにしては上出来です」と話しかけてくる。「…誰だお前…」俺が問いかけると、「名乗るほどの人間じゃないです。私はあなたを知っている。この時間にやっていて壁にもたれていても不自然じゃない店なんてこのコンビニくらい。だから銃声が鳴ってから待機してました。最初は一人だった連続殺人犯の模倣犯が現れ二人に。そして最近各線路沿いで殺人が発生するほどまでに殺人犯が増えた。だから全部の駅の近くで待ち伏せしていました。今のところ私が指示した刑事たちの前にあなたの仲間は現れていないので安心してください」男はそう言うと、俺に鋭い視線を向ける。「まずは署までご同行願います。話はそれからだ」また捕まるのはごめんだ。俺の計画が全て無駄になる。俺は男の頭を抑えた。「なんですか?」男はきょとん、と首を横に傾ける。俺は、「斬」と言うが、男は目をぱちぱちと瞬きした。「!?」俺は目を見開く。「私に能力は効きません。これで確信しました。あなたも能力持ちだと言うことが。どうやら互いに能力は作用しないみたいです」男はそう言うと、「私は天使代行。善行を繰り返し天使と契約した存在です。人々を"救済"する能力を持っています。だから私は弐式さんに頼みました。私を捜査本部に関わらせてくれと」俺は「…」と黙って男を見つめる。「だが痛覚はあるはずだ」俺が黙って銃を向けると、男は盾を向けた。「無駄です。あなたは捕まるべき人間。貴方が死神代行であることはこれで解りました。それに、最近急に廃ホテルに大勢の人が出入りするようになったと噂を小耳に挟みました。どういうカラクリで?ただの高校生が廃ホテルを抑えるなんて出来るはずがない。誰がバックにいるんですか」男は俺に問うと、静かにこちらを睨んだ。「お前らには関係ない」俺が言うと男は、「それで関係ないんですね。わかりました。と立ち去るはずが無い。教えてください。火神くん。あなたが夜叉鏡の亡者になれたわけを。でも、自ら夜叉鏡の亡者を名乗るなんてとんだヘマですね。自分から全部仕切ってるのは火神です。って名乗ってるようなもんじゃないですか。堂上刑事は笑ってました。」と俺を煽るように語り出す。「じっくり話を聞かせてください。裏でパトカーが待ってます」足止めされた俺は「くッ…」と同じ過ちを繰り返さないような行動を考える。「行きましょう、火神くん。まだあなたなら…」片手を差し伸べられた途端、閃光弾が激しく光る。
その間に、後ろからロイに首根っこを引っ張られ回収される。「おめでとう♡なんとか助かったね♡」パトカーがいない方向に回収されては、わざわざ車で迎えに来た阿笠が、「お疲れ様でした。では、こちらへ」と車の扉を開く。「なんだあの男は。天使代行とか言ったぞ」俺が腕を組みながらロイに問いかけると、「死神がいればそりゃ天使もいるはずだよ。代行してる子は初めてみたけど」と微笑んだ。「それと能力の作用の整理ができない。頭が混乱する」俺が言うとロイは、「能力持ち同士で能力は成立しないんだ」と答える。「死神は痛覚が無い。半死神は痛覚がある。これは半天使も同じって考えていい。」ロイが言うと、「なるほど」と俺は答える。「天国は何をする場所なんだ」俺が問いかけると、ロイは「うーん」と悩みながら、「死んでから生まれ変わるまでを過ごす大規模なネットカフェって言えばいいかな。地獄が街や行政なら天国はWiFi完備のネットカフェ。遊び放題、漫画読み放題。ドリンクバー飲み放題。まあ面白みはないよ。人間の時間で言う百年ぐらいを遊び呆けて過ごすんだから」と説明する。「なんか天国って思ってたのと違うな」俺が呟くとロイは、「地獄も想像と違ったでしょ?鬼なんていないから」と笑った。
「捜査本部がアジトまで把握している」俺が真剣な顔で言うとロイは、「なるほど、それは最終決戦の匂いがするね」と面白がる。「カガミくんは最後どうなりたいの?」とロイは問いかける。「サユリと結ばれたい、どんな汚い手を使ってでもサユリを俺の前から失いたくない…!!」俺が答えるとロイは、「なのに肝心のサユリちゃんに求めるのは雌豚か。そう言うとこだよカガミくん、可愛らしいね??」と俺を揶揄う。「だって…サユリが好きだから…サユリがいないと…俺は…。守りたいんだ、俺はサユリを守りたい…」俺が震えた声で言うとロイは、「精神干渉は同じ人間に何回でもかけられる。同じ人間にかけると前の効果は消える。君好みに彼女を何回でもデザインすればいい」と提案した。俺は、「…」と黙り込む。そしてあの時ヒロムたちと見たアニメを思い出した。主人公が建国をしようとする話。猫型ロボットがお助け道具を出すアニメ。その主人公の建国は見事失敗に終わったが俺ならもっと上手くできる。誰にも認められないなら俺の世界を創ればいいんだ。そのための精神干渉の能力だ。俺は俺の世界を創る。サユリを妃として迎え入れ俺のやってる事が正しいと大衆に崇拝される世界を。俺ばかりが救われない。こんな腐った世界なんて壊してやる、善行なんて積み上げたとしても何の見返りも返ってこない。それなら無理矢理でも全員に俺を崇拝させてやる。俺だけが良ければいいんだ。「ロイ、協力してくれ。後で話がある」俺が言うとロイは、「あいあいさー♡」と嬉しそうに反応する。
車が止まると、阿笠が車の扉を開ける。車を降りては、「ごゆっくりとお休みくださいませ、カガミ様」と阿笠は頭を下げた。俺が廃ホテルに帰ろうとした時、パシャッ。と茂みから誰かに写真を撮られる。「…」俺はそちらに目をやるが、今気にしても仕方がないので部屋に戻る事を最優先にした。




