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六十六話『恋は盲目ってやつだな』

 その日の夕方、再び集まり作戦会議を繰り広げる。「紅月さんは小田急沿いで。比奈さんは南武線沿いで。大河原さんは都営三田線沿いで。人を殺してください。カガミくんは京王線沿いで。バラけることにより警察の目を誤魔化すことが出来ます」レイが地図を見せながら説明する。「移動は車で。大河原さん、比奈さんには死神から道具の提供をされると思うのでそのつもりでいてください」レイの説明に、「ほんまに半死神状態なってもうたんやな…」と現実味が無いのか静かな声で言うイズミ。「…わかった」一言だけで返事をするトウマ。ヒビキは、「実家の方か」と呟く。俺はただ下を向いて話を聞いているだけ。「おい夜叉鏡」トウマに呼ばれ、「なんだ」と視線をそちらの方へ向ける。「お前は今まで何人手にかけてきたんだ??」トウマから発せられた問いに、「…多く見積もっても六十人以上は手にかけてきた…」と答える。イズミは、「なんでそんなヘラヘラ人を殺す事が出来んねん、ぶっ壊れてるんとちゃうか!?」と激昂する。「離れろ」俺が静かに言うと、「…わかった」とイズミは素直に離れる。「お前たちもそうなるんだよ、それともお前たちにも俺の気持ちが理解できないのか?」俺が笑いながら言うと、イズミは「なんやアンタ…えらい負のオーラが…」と怖気付く。「そうだそうだそうだ、誰にも俺の苦労なんて理解して貰えないんだ、今まで俺がどれだけ苦しんできたかなんて知りもしないだろ、俺はただ守りたいものがあるだけなのに、ヒーローになりたいだけなのに、おかしいよ…、おかしいよ、俺は……」両手で頭を抱え、瞳孔を開きながら俺が言うと、トウマは「本当に疲れてるのはお前なんじゃ…」と少し俺を心配する。イズミも、「どないしてもうたん…、アンタ一体何があったんや…」と俺の姿に困惑する。「…ははッ…あははッ…ははッ…誰か助けて、俺を助けて、俺を認めて、もっと俺を見て、俺を……!!」笑いながら叫んでいると、ホノカが、「来いカガミ」と俺を呼ぶ。俺は首を横に振る。「ぁー、こんな世界、何もかもめちゃくちゃになればいいんだ、いっそ俺が醜い姿になって全て呪えば…」取り乱す俺を見て、ホノカは「ロイ、こいつを殺しの時間まで眠らせろ」とロイを呼び付ける。ロイは「はいはい朝飯前です~♡」と言った後、俺の頭を抑えつけながら、「斬♡」と唱えた。途端ぐったり眠くなる。プカプカと浮くような、心地よい感覚。白い世界で目覚めれば、そこはもう夢の中。サユリがふッと微笑んで、「だぁいすき♡」なんて言ってくるものだから、つい温かさを感じる。「カガミ…」サユリが俺にキスしようとしてくるところで、「うわァァァァァァァァァ!?」と目が覚め、ベッドから転げ落ちた。


 「休めたか?バカ男」ホノカはそう言うと、「出かける準備をしろ」と命令してくる。「は、?」寝ぼけていると、ホノカが「今日もサユリを守るんだろ?」と口角を上げる。俺は、「嗚呼」と頷いた。頭がぼーっとするまま、返り血がうっすら染みているいつもの黒パーカーに着替える。着替え終わると同時に、赤いナイフを手に取った。何人もの命を奪ってきた汚いそのナイフを。ホノカは、「どうする?早速殺しに行くか?」と首を傾げる。俺は黙って部屋を出た。ホノカは周囲には見えないように、後ろを浮遊しながらついていく。ロイは居間から、「行ってらっしゃ~い♡」と俺に手を振った。ホテルを出ると、車に乗り込むヒビキやイズミたちとすれ違う。車を暫く待っていると、白髪の老人が一人現れた。「お待たせいたしました。弐式火神様。私がお連れいたします。私の名前は"阿笠"。カガミ様の使用人です」後部座席の後ろに乗り込むと同時に、阿笠に話しかけられる。「誰が使用人なんて付けろと言った」俺が言っては、阿笠は、「レイ様のご命令により、一人一人に適正なサポートを行うよう、との指示を賜りました。従いまして、私どもはカガミ様、ヒビキ様、トウマ様、イズミ様、それぞれに対し、万全のサポートを尽くす所存でございます。」と語った。俺は、「レイのやつ…俺に資金を投資するだけじゃなく、執事まで用意しやがった…」と呟く。「どのような時であろうと、直ちに駆け参ります。何なりとお申し付けくださいませ。私はあくまで使用人に過ぎません。それ以上でも、それ以下でもございません。過干渉などいたすことも決してございませんゆえ…」阿笠が運動する車は、優雅に夜道を駆け抜ける。トラブルで一棟が空き家になった悲しきホテルに暮らしているとは思えない特別待遇っぷりに少し笑いさえ零れてしまう。


 「ホノカ、少し気になることがある」俺が言うと、ホノカは車の窓から浮遊状態で入ってきて隣に座った。「なんだ」そう言うとホノカは、炭酸水のペットボトルの蓋を開けながら俺の話に耳を傾けた。「最近…警察の姿が無くないか??本気で騙せてるのか?まさか、日本警察がそんなはず」俺が言うとホノカは、「あの後の警察のことが知りたいか。お前が逃走した後、警察は七人の捜査本部から三十名ほどの捜査隊を作った。指揮はお前の父親だ。堂上は直近の殺人事件の傾向から、お前に手下が出来たことを確信した。ヒビキの時から察してはいたみたいだが。警察も散らばって捜査範囲を拡大しているようだ。そりゃ、なかなか個人で遭遇しないのも納得。キョースケはお前が誰かに匿われている可能性があると考えていたぞ。それに、サユリの家についてもキョースケが言及していた。」と直近の警察の行動を説明する。「どうする?警察と全面戦争にでもなったら。お前は自分の父親とかつて憧れた日本警察を敵に回したんだぞ。警察も本気でお前たちを捕らえにくるだろう」ホノカはそう言うと、口角を上げた。俺は、「……」と目を逸らす。「さあ、選択肢だ。逃げ続けたまま生きるか、答えを見出して死んでいくか。どっちをえらぶ?」ホノカは俺を心底愉快そうに揶揄う。「…答えを見出して生きてやる」俺が答えると、ホノカは、「お見事」と俺に拍手を送った。「お前はやたら生にしがみついているな。なぜだ」ホノカはそういうと、俺の顔を覗き込む。「…サユリと一緒にいたいからだ」俺が膝の上で拳をキュッ、と丸めながら言うと、ホノカは「ふッ」と鼻で笑った。「恋は盲目ってやつだな」

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この気持ちは恋…なのか…。胸がキュンキュンする(*´▽`*)
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