六十二話『恋人の手料理!?』
レイからの"美味しい話"。それは活動場所を抑えられる事だった。人目につかず、隠れて集まれる場所を使えるよ、と言う話だった。メンバーが全員決まったらありがたく使わせてもらう事にして、いまはそれよりも。料理をするサユリを眺めていたい。いやぁ、美人だな。可愛らしいな。尻は小さい。胸は無いに等しいがむしろそれでいい。何より俺のために…ってところが一番いい。俺のためっていくらでも言ってくれる都合のいい口が最高に堪らない。「きつねうどん出来たよ」俺を呼びに来るサユリ。ぼーっとしていた俺は、「ありがとう…」と礼を言って寝室からリビングへ出向く。全ての食事の準備を済ませると、席に座る。「美味しそ…」俺が呟くと、お玉を持ったままサユリが「愛情たっぷりですからッ!」と無い胸を張りながら言った。「あれ、サユリは食べなくていいの?」俺が問うとサユリは、「私カガミが帰ってくる前に食べちゃったから。」と微笑む。「そうか、」サユリからサユリが作ったきつねうどんに視線をずらしては、「いただきます…」と手を合わせる。美味しそうだ。麺は細麺。だしの香りがよく効いたうどん。失神するほど疲れていたはずの身体でさえ食欲を駆られる。これは確かにきつねうどんだ。それ以上でもそれ以下でもない。真っ直ぐ長い麺を口へ運ぶ。嗚呼…。美味い。警察から逃亡している身でこんな美味いものが食べられることに感謝しなければならない。いや、きつねうどんが美味しい訳じゃないんだ。サユリの気持ちが嬉しいんだ。サユリが作ってくれた。サユリが匿ってくれている。この事実がたまらなく好きなんだ。嗚呼、なんと言う素晴らしさ。サユリが作るご飯ならなんでもいい。そんな事を考えていたら、量も次第に減っていき。あれを言う時が来た。「ごちそうさま」俺が器を流しへ持っていくと、サユリは「ちゃちゃって作ったきつねうどんなのにすごく美味しそうに食べてたね」と喜んだ。「嗚呼、サユリが作ったものはなんでも美味いさ」俺が言うとサユリは、「ふふッ、今度はカガミのリクエスト聞いてあげる」と調子に乗る。「そうだな…」俺は考えた後、「サユリからの膨大な愛が欲しい、宇宙を包み込むぐらいの」と答える。俺のリクエストを聞いたサユリは、「可愛い…!!!」と感激する。「いくらでもあげちゃう!!!」と抱き着くサユリ。「カガミ、カガミ、好き好き、大好き、カガミ、カガミ」何回も俺の名前を呼ぶサユリの頭を撫でながら、「俺も好き、ずっと好き、世界が朽ち果てても、サユリしか見れない、」と何度も好き、と連呼する。俺は誰に何を言われようと気にしない。ただサユリが好きなんだ、サユリが永遠に好きなんだ。俺の存在意義はサユリのため、サユリがいない世界では生きていけない、サユリ。「カガミ、好き、好き、好き、好き、」何度も好きを連呼するサユリに、「俺も好き、」と言いながら優しくキスをする。角度を変えながら、何度も。何度も。何度も。「ふぇぇ…♡」口を離し蕩けた目を向けるサユリ。俺はサユリの頭を背伸びしながら撫でる。「もっと好きになっちゃう」と言うサユリに、「なってくれ。その分俺も好きになる。」と答える。サユリは、「もうやだ、はやく結婚してカガミを私だけのものにしたい」と俺に抱きついたまま離れない。全く…。「うぐぐ……」そんなサユリをお姫様抱っこしては、サユリの母の部屋のベッドまで運ぶ。サユリは「無理しないで!??」とあたふたするが、俺がしたいからしていることだ。サユリの身体をベッドの上に置いては、「風呂に入ってくる。そこで休んでてくれ」とサユリの顔を見ながら言った。サユリは、「うん、」と頷き素直に目を閉じる。俺は風呂場へ直行。サユリの甘い言葉の数々に恥ずかしくなる。服を脱ぎ、身体を洗えば浴槽の中にゆっくり浸かる。はぁ、本当にサユリに恋してるんだな。サユリが好きなんだな。サユリのことで頭がいっぱいなんだな、風呂を上がっては、服を着てサユリが待つベッドへ向かう。このままサユリを守りきって世界を捨ててでもサユリと幸せになるんだ、サユリの母の部屋のベッドまで戻ればぬいぐるみを抱き抱えるサユリの姿が。この子のために俺は手を汚しているんだ。…余計な事を考える前に今夜はぐっすり寝よう。俺はサユリを抱きしめて眠りについた。
朝。『ゴイゴイスー!!!ゴイゴイスー!!!ゴイゴイスー!!!スーを差し上げます!!!スーを差し上げます!!!ゴイゴイスー!!ゴイゴイ…』サユリが好きな芸人のスマホのアラームが爆音で響く。癖が強すぎるアラームに呆れつつ、サユリのスマホを勝手に触り爆音を止める。「んぅ……」あまりの眠たさに目を擦る俺。二度寝をしようとしたところで、バッとサユリが起き上がる。「カガミ!!おはよう!!!」機嫌の良いサユリの声に、「お、おはよう…」と眠たげな表情を崩さないまま返事する。また一日がはじまった。半死神状態になってから何度目の朝だろう。「今日は私お出かけの日なんだ。ずっとずっと大好きな芸人さんが出てくるトークショー!だからカガミは夜まで自由に過ごしててね??」サユリはそう言うと、自分の部屋まで服を取りに行く。「ちょ…」返事する前にサユリが準備をしに行ってしまったため、「はぁ、」とため息をつきながら自分も洋服に着替える。「ふふふーん♪津田島さんに会える~~♪」幸せそうに鼻歌を歌いながら階段を駆け下りてくるサユリ。「カガミ、ヘアアイロン取って~~!」と階段からサユリに声をかけられては、「はいはい…」と答えながらヘアアイロンを取りに行く。「パン屋のトングみたいだな」と呟きながらパカパカ遊んでは、「だーめ、壊れちゃうでしょッ!」とサユリに注意される。「この長い髪にはヘアアイロン命なんだから」と言うサユリに、「じゃあミサぐらい切っちゃえば」と提案すると、サユリは「ショートは似合わないからいや~!」と答えた。俺はサユリがショートでも似合うと思うんだけどな。とりあえずサユリが髪を整えている間に、俺は洗面所で顔を洗う。今日はサユリ不在か。寂しくなるな。サユリがいない中どうやって過ごそうか。ははっ、不思議だな。家にいた頃はサユリがいなくても暮らしていたのに、サユリがいないだけで子犬のように寂しくなるよ。




