二十三話『親友』
食事を終えた俺たちは、仲良く四人並んで部屋へと戻る。「幸せだなぁ、」ヒロムが言うと、サユリは「みんなが楽しくなるきっかけ作ってくれてありがとう!!!」と微笑む。ヒロムは「ぉ、おう……」とサユリに顔を覗き込まれたせいで恥ずかしがる。途端、俺はヒロムの服を引っ張り耳打ちする。「俺のサユリだぞ」俺が小声でヒロムに言うと、その様子を見ていたミサが「なになに????カガミ嫉妬??」と俺のほうへ顔を近づける。「ダメよ~ヒロム。サユリの事好きになったりしちゃ」ミサがヒロムに言うと、ヒロムは「サユリになんて手出せないって!!! カガミに何されるかわからないし!」と慌てる。俺は「何もしないって、」とツッコミを入れるが、ミサは「カガミはサユリの事大好きだもんね??」とニヤニヤする。「ぁぁぁ、もうっ!!! わかった、わかったから!! もっとなんか違う話……」俺が話を変えようとするとサユリが「私はカガミの事、ずっと好きだよ??」と何の躊躇いも無く笑いながら言う。途端、俺の心拍数の数値は急上昇。「ヒロム助けて……」と情けない声を上げながらヒロムの背後に隠れる。
「あははは!」三人の笑い声が重なる。部屋に入ると、「あー面白いものみたわ」とミサがヒロムにくっついたままの俺を見ながら言う。「カガミ、恥ずかしいのはわかったからそろそろサユリちゃんのとこに行ってあげなよ」ヒロムの言葉の後、俺はサユリのそばに行く。だが恥じらいからサユリを直視は出来ずやや俯き加減。「可愛いね? カガミ」小動物を相手にするかのように俺の頭を撫でるサユリ。「ぅぅ……」俺は言葉に詰まる。「お風呂、サユリとカガミは部屋のお風呂で一緒に入ったら?」ミサが冗談で言うが、「無理だ!!!! 俺にそんな事出来ない!!!」と俺は食い気味で拒否する。サユリも「ミサのバカァ!!」と頬を赤らめる。同じような反応をする俺とサユリを見て、ヒロムは「お若いですな~~」と満面の笑みを浮かべた。
「さっさと風呂行こう、ヒロム」俺が入浴セット一式を持ってヒロムの腕を引っ張ると、ヒロムも入浴セットを手に取りつつ、「ちょ、カガミ?? もう行くのか!?」と俺に連れてかれながら言った。ヒロムを連れて大浴場の脱衣場まで行くと、ヒロムは、「いいのかよカガミ。サユリと風呂に入るチャンスだったろ」と俺をちらっと見ながら服を脱ぐ。「辞めてくれ、純粋無垢なサユリの裸を見るなんて出来ない」俺の言葉に、ヒロムは「俺なら大喜びで入るけど」と年相応の笑顔を見せる。「お前性欲とか無いのかよ」先に脱ぎ終わったヒロムは大浴場の扉を開ける。まだ人がいないのか、風呂場も脱衣場も、俺とヒロムの二人だ。シャワーの前の椅子に座ると、ヒロムがボディソープをタオルに数滴垂らしながら、「お前って普段どんなこと考えてるのか全くわからないよな」と思いついたように呟く。
「そうか??」俺もヒロムと同じ行動をしながら言葉を返すと、ヒロムは「なんて言うか。十四歳の少年って感じがしない」と身体を洗いながら言った。「そんな風に見えてるのか」俺は自分では一切実感がない為、ヒロムの見解に感心しては、「特にどういうところが??」と、さらなる客観的視点をヒロムに求める。「だって、お前ってミサとかサユリがワイワイ興奮しててもはしゃいだりしないじゃん」ヒロムの解釈に、俺は「ああ……」と納得する。「だからお前って子供っぽくないよねって思ってさ。本当は薬で身体が縮んで年齢詐称してるんじゃないか??」ヒロムの揶揄うような言葉に、「その推理は俺とお前が幼稚園の頃から知り合いな時点で破綻だろ」と冷静に返した。ボディソープで身体を洗い終わり、シャンプーとリンスも済ませた後、ヒロムと大浴場の風呂場に浸かる。
「いや~~俺はカガミが途中で宇宙人と入れ替わったー!!! とか、実はカガミはもう一人存在してー!とか、色んな説を提唱したいけどな!」楽しそうに持論を言うヒロムを流し目で見つつ、「ヒロムの言う事が事実だったらどうする?」と目の前の親友を揶揄ってみる。「!???」ヒロムは驚いたように目を見開く。「やっぱりカガミは普通の人間じゃなかったんだ!!!!」嬉しそうにするヒロムに、「俺が普通の人間じゃない方がいいのかよ」とツッコミを入れる。「だってカガミって俺と同じ人間なはずなのにイケメンだしハイスペックなんだもん!!羨ましい!!!!」と嘆くヒロム。「俺って言われるほどイケメンか??」俺が問いかけるとヒロムは、「なに!? 無自覚!? どれほどの女子がお前の事好きだと思ってるの!?」と驚いたような表情を浮かべる。
「お前の人生大成功だよ」ヒロムの言葉に、俺は「ならいいんだけど。」と少し俯き加減になる。「なに? 何か悩みでもあるの?? イケメン様の悩み、俺が特別に聞いてあげようか?」ヒロムは俺に近づくと、耳元にフッと息を吹きかける。ゾクッとする感覚に耳を抑えながら「やめろ、気色悪い!!!」と声を荒らげると、ヒロムは「えーーー……」とわかりやすくしょんぼりする。「どこでそんなこと覚えた」俺の言葉にヒロムは、「べっつにー。」と誤魔化す。「でも本当にさ、何か悩みがあるならいつでも俺が聞くからね」ヒロムは優しい表情をこちらに向ける。「ありがとう、」素直な言葉を返した後、「じゃあ言うんだけど」と口を開く。ヒロムは、「ん?」と期待したような表情を向ける。
「サユリの事が好きすぎるんだよ……」恥じらしさに下を向きながら呟いては、ヒロムは、「知ってた」と俺の悩みを受け入れる。「いつから?」ヒロムの問いに、「はじめてみた時から、ずっと」と答えては、「へぇ、どんなとこが好きなの?」と興味津々のヒロム。「全部だよ」親友にはなにも隠さずストレートに伝える。「常にサユリの事で頭がいっぱいで、他の事考える余裕があんまり無いんだ、俺が何かやらかしてサユリに嫌われたりするのが怖くて……」俺の言葉にヒロムは、「サユリはカガミの事嫌わないって断言出来るな」と笑う。「なんで!?」俺が問うと、「だってカガミといる時のサユリちゃん、すごく嬉しそうなんだもん」と純粋な答えが返ってくる。
「本当かよ」俺が疑うと、ヒロムは「本当だよ! じゃあこの旅行中、試しに告っちゃえば? 時計台の前とかで♡」と俺の事を揶揄う。俺は、大浴場の風呂場から立ち上がりながら「考えとく」と素っ気なく答える。ヒロムも風呂場から出ては、「風呂上がりの牛乳買おうぜ」と脱衣場で俺に言った。「嗚呼、」俺は適当に返事をして、ヒロムと二人で並びながら服を着る。「カガミってさ、小さいよな」ヒロムが俺を見ながら笑う。「なに。身長いじりかよ」俺が冷たく言うと、ヒロムは「サユリちゃんの方が身長高いもん」と俺の背と自分の背を手で比べるような仕草を取った。「だから牛乳飲まなきゃダメだぞ」「迷信だろ?」服を着た状態で入浴セットを手に取りながらヒロムの冗談に冷めた言葉を返した。ヒロムも後に続く。「お前に勝てるとこないって思ってたけど身長だけは勝てるわ」ヒロムの言葉に、「いつか超えてやる」と宣言した。




